<2015年の市場大胆予測>円安・株高基調だが「官製相場」に限界も、「内外リスク」山積でアベノミクス正念場

八牧浩行    2014年12月26日(金) 7時46分

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15年の市場動向は超金融緩和を背景に、基調的には円安・株高の流れは変わらないとみられるが、行き過ぎた円安や国際的波乱要因もあり不安定な時代になりそうだ。写真は東京証券取引所。

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2014年の東証株価は大幅な円安と異次元金融緩和により上昇したが、“官制相場”の様相が濃く市場の熱気はあまり感じられなかった。日銀による追加異次元緩和や上場投資信託(ETF)買い入れ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式購入比率拡大のポートフォリオ見直しなどが相場の下支え要因となったためだ。15年も超金融緩和を背景に、基調的には円安・株高の流れは変わらないとみられるが、行き過ぎた円安や国際的波乱要因もあり不安定な時代になりそうだ。

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◆過去2回の上昇局面では翌年反落

14年の東証日経平均株価は、4月中旬の1万4千円割れ水準を最安値に高下を繰り返した後、10月末から12月初めにかけての日銀異次元金融緩和や衆院解散・総選挙を契機に急上昇。12月下旬には1万7千台に乗せ、前年末(1万6291円)を上回った。これで3年連続して前年末を上回ることになる。89年のピーク時以来日経平均が3年以上続けて高くなった年は、これまでに93〜95年と03〜06年の2回あるが、いずれもその後、再び下落に転じている。

日経平均は90年から20年余りの長期にわたって低迷。14年末の株価は4半世紀前の1989年12月の大納会で付けた3万8915円の史上最高値の半分にも到達していない。日本株式市場に精通しているプロの投資家は、なお慎重な姿勢にとどまっている。過去に株価が低迷を脱して上昇する期待を抱かせるたびに逆に下落に転じてきたからである。

14年も含めて3年連続で株価が上昇した過去3回の共通点は、いずれも「官製相場」の色彩が濃かったことだ。1993〜95年は旧大蔵省の行政指導によって株式の新規公開(IPO)の数が厳しく制限されたほか、生命保険会社などに対して保有株の売却を抑えるようにという当局からの圧力もあった。その後、不動産価格の下落によって生じた銀行の不良債権問題が顕在化、株価は急反落した。97年4月の5%への消費税増税実施や不良債権問題先送りなど経済失政もあって、97年11月に北海道拓殖銀行や山一証券が破たん、その後日本債券信用銀行、日本長期信用銀行の破たんや相次ぐ大手銀行統合など平成金融恐慌につながった。

 

2003〜06年の株価上昇は小泉純一郎元首相の人気に支えられた相場で、2005年9月の「郵政選挙」はその象徴。この時代は銀行の不良債権処理が峠を越え、日本経済の構造改革もある程度進捗しつつあった。ところが、日本にとって不運だったのは、07年に米サブプライムローンの焦げ付きをきっかけとした欧米金融機関の信用問題が浮上し、08年9月に金融恐慌といわれたリーマン・ショックが起きたことだ。前2回の株価上昇局面に共通するのは、金融機関の破たんをはじめとする内外のリスクが反落の引き金になったことである。

◆超円安・米利上げ・中国中東情勢も波乱要因に

今回上昇局面の最大の特徴は、日米による未曽有の量的緩和が要因となったこと。ところが15年に米国は量的緩和政策をストップするが、日本は追加緩和の継続が見込まれ、金融政策の方向性に決定的な相違が見られることだ。しかも日本の貿易収支は赤字傾向に転じており、構造的に円安圧力がかかりやすくなる。このため円安傾向はさらに強まり、15年春には1ドル=130円を割り込むと予測する市場関係者もいる。超円安に加え、米国の利上げ、原油価格の急落、ロシア・中東・中国情勢などがリスク要因として浮上すると指摘する声もある。安倍政権の経済政策、アベノミクスは株高を至上命題とするだけに、正念場と言えよう。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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