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中国の主要都市で二つの空港を役割分担で一体運用するマルチエアポート化が加速している。写真は金州湾国際空港の完成予想図。
中国の主要都市では、二つの空港を役割分担で一体運用するマルチエアポート化が加速している。北京、上海、成都が先行し、南京と広州がこれに続く。一方、経済実力を備えながら民用の運送空港を持たないのが蘇州だ。空港という点の確保よりも、ネットワーク設計にフォーカスが置かれている。
「規模」を誇る中国の空港は常に話題が尽きない。広州白雲国際空港では年内の第3ターミナル(T3)運用開始が迫っており、すでにカウントダウンに入っている。T3の意匠は稲穂や木棉花(カポック)をモチーフとした造形で、広州らしさを前面に出す。屋外型の展望デッキ設置も計画されている。
T3開業後は国際線を中心に航空会社が段階的に移転する見通しだ。アクセス面では、直通の地下鉄が未開業である一方、都市間鉄道など複数の軌道系アクセスの導入・接続強化が計画されている。地下鉄高増駅とT3を結ぶ連絡系統(通称「空港2路支線」)の新設が想定され、開業と同時期の運行開始を目標とする。T1–T2間の無料シャトルは24時間運行しており、T3開業時に3ターミナルを結ぶ連絡手段の詳細が改めて公表される見込みだ。
なお、海珠湾トンネルが通車予定で、中心部から広州南駅方面の移動時間の短縮が見込まれる。地下鉄22号線や新白広城際鉄道も順次開通が計画され、空港アクセスの多重化が進む。
大連では中国初の沖合人工島空港となる金州湾国際空港の建設が進む。空港島は約20平方キロメートルの埋立地で、関西国際空港の4倍規模。空港と陸地を結ぶ海上高速通路3本の整備により、都心部までのアクセス時間は約20分を見込む。
本件は国家の重点プロジェクトで、総投資は約509億元(約1兆689億円)。第1期ではターミナル約50万平方メートル、平行滑走路2本などを整備し、年間旅客4300万人、貨物55万トン、発着33万回規模に対応する計画だ。第1期の運用開始目標は2035年とされる。ターミナルは「渤海の波」「飛ぶ鳥の翼」を想起させる流線型デザインで、地下1階・地上5階、高さ約47メートル。6本のコンコースによりターミナルに近い駐機率を高め、平均歩行時間を8分以内に抑えることを目標にする。地下鉄、バス、タクシーを統合する交通センターも併設される。
北京市は首都国際空港と大興国際空港の2大空港で2030年に年間合計1億6000万人の旅客取り扱いを目指す。2024年の実績は約1億1700万人。現在、両空港は国内主要都市に加え、64カ国・地域と120以上の国際路線で結ばれている。北京市は首都空港の運用効率化工事や大興空港のサテライト拡張を進め、国際ハブ機能の増強を図る。
このところ目に触れる機会が増えたのが「双機場(マルチエアポート)」という言葉だ。同一都市圏で複数空港を用途別に分担・一体運用する仕組みだ。制度上、滑走路等級4E/4Fを必須とする規定はないが、すでにマルチエアポート体制を整えた上海、北京、成都ではいずれも高規格滑走路が採用されている。発着容量の拡大、貨物流通の効率化、ピーク分散など都市機能の高度化を狙う。
上海では、浦東(国際・貨物の主力)と虹橋(国内・ビジネス需要)で明確に機能分担。さらに南通新空港が「上海第3空港」として共同整備に進んでおり、8月に上海空港集団51%、南通城建49%の合弁会社が設立した。
北京では、首都+大興の2大空港体制で国際・国内の両面を強化している。
成都では、双流(既存)と天府(新空港)の併用で国際ハブ機能を拡大。
南京では、「一主一補五通用」の枠組みを提示。主=禄口、補=馬鞍(計画・整備段階)、通用空港=溧水など5カ所で、将来的な複線運用を視野に入れる。
広州圏では、白雲空港に加え、「珠三角枢纽(広州新)空港」(第1期は2027年完成目標、運用開始時期は別途公表)の整備が進み、マルチエアポートの広域連携を志向する。
地方都市にも2空港運用の事例が生まれている。江西省では9月28日に赣州瑞金空港が正式開港し、北京(大興)および上海(浦東)との直行便が開港当日に運航された。これにより既存の赣州黄金空港と合わせ、贛州市は二つの民用空港を持つ都市となった。贛州市瑞金市(県級市)は「共和国のゆりかご」と呼ばれる革命の聖地。自然景観では、羅漢岩が丹霞地形(たんかちけい)の名所として知られる。
重慶市では、第2空港(璧山空港)の建設計画が前期作業段階に入り、リザーブ事業として推進されている。目標として2030年の完成が掲げられ、年間旅客数7000万人、貨物350万トン規模を計画する。役割分担では、江北国際空港は旅客中心、璧山空港は貨物・産業支援が想定されている。
既存の江北国際空港では処理能力の増強が進む。第4滑走路は2024年末に運用開始、T3Bターミナルは2025年春に供用開始のスケジュールで拡張が進められ、発着処理能力の増強と国際ネットワークの拡充が見込まれる。都市構造は西部へと重心が移り、西永、璧山、永川、江津が新たな産業・交通の軸として位置づけられている。地域包括的経済連携(RCEP)や中国・ASEAN自由貿易の進展も追い風となり、重慶は内陸型の空中経済モデルを志向する。
こうした中で、全国屈指の経済規模を誇りながら、空港という点を市域に持たない蘇州の特殊性に注目が集まる。同市は現在、近隣の無錫・蘇南碩放国際空港(WUX)を共同で活用し、旅客・貨物の利便性を高めるため都市ターミナルや前置貨物駅の整備、高速鉄道・地下鉄接続の強化を進める。一方で、市内では小型航空機向けの通用空港の整備計画が段階的に進み、市域全体をカバーする低空交通網(最大11拠点想定)の構築といった将来像が描かれている。ただし、本格的な空港建設については、いまだ夢の途中にあるといえそうだ。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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