高級ホテルのスリッパのリサイクル使用を巡って物議、衛生と環境の両立にジレンマ―中国

邦人Navi    
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中国で高級ホテルの客室に据え付けられたスリッパの再利用が物議を醸した。

中国で高級ホテルの客室に据え付けられたスリッパの再利用が物議を醸した。環境保護と衛生管理、コスト抑制の狭間で揺れるサービス業界全般の現実を突きつけているのかもしれない。環境に関する規制が強化されていく中で、持続可能性と信頼をいかに両立させるかは、今後のホテルのみならず外食産業を含む幅広いサービス業界にとって避けて通れない課題となっている。

高級ホテルのスリッパを巡ってネットで物議

江蘇省常州市のマリオットホテル(万豪酒店)に宿泊した客が、部屋に備え付けられた白いスリッパに毛髪の付着や使用された痕跡があることを発見し、SNSで「使い回しでは?」と問題提起したことが物議を醸した。

ホテル側は環境配慮のためスリッパを消毒・洗浄して2~3回再利用していると認めたが、事前の説明はなかったとされる。また、劣化品が提供されていたのは客室部門のミスだとした。

中国におけるアメニティー規制の背景

背景には、使い捨てプラスチック製品削減を目的とする政策がある。上海市では2019年に条例が施行され、歯ブラシやくしなど6種類のアメニティーを積極的に提供しないことが義務付けられた。さらに、「公共場所衛生管理条例実施細則」では、再利用可能な物品は一客一換(宿泊客ごとに交換)を義務付け、リネン類などの再利用が禁止されているが、スリッパについては地域によって解釈が異なる。

つまり環境保護が求められる一方で、衛生を犠牲にすることは許されていない。今回の事案は単なるオペレーションの不備にとどまらず、衛生と環境とコスト抑制を三位一体で進めなければならないホテル側が直面するトリレンマを象徴する問題といえるかもしれない。

衛生コストと顧客信頼のはざま

ホテル業界では、アメニティーはコストと環境負荷、顧客満足度を同時に左右する。上遊新聞によると、コスト削減のため「使い捨てスリッパ」を回収洗浄し、数度にわたって繰り返して使用するケースが存在する。

しかし、常州の事例のように告知なしに再利用品を提供すれば、顧客の信頼を一気に失いかねない。したがって、ホテルは「一客一換」の原則を守るだけでなく、再利用可能な物品について衛生管理の手順を透明化することが不可欠になってくる。

新たなプラスチック規制と今後の課題

中国で9月にプラスチック容器の使用禁止令が施行され、営業停止措置については明記されていないが、違反企業には最大10万元(約200万円)の罰金や是正命令が科されることになった。この規制はホテルも対象で、歯ブラシやくしなど従来の使い捨てアメニティーは原則として客室に常備できなくなった。

こうした規制強化は、環境負荷の低減に資する一方で、事業者にとっては代替素材の調達コストや運営効率の面で影響を受けることになっている。最大の課題は、持続可能性と衛生安全をいかに両立させながら、コスト抑制を図っていくことになる。そしてこのトリレンマともいうべき問題は、ホテル業界にとどまらず、外食産業やその他のサービス業に至る産業全体が直面するものとなっている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。



   

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