「街なか免税」が内陸へ、旅行証明いらずの新潮流―中国

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中国で市中免税店が増えている。写真は湖南省長沙市の市中免税店。

中国では広州深センで8月26日に市街地初の免税店が開業した。長沙成都も追随する。免税区と課税区を併設し、課税区では誰でも即時還付が可能となる複合モデルは中国の免税市場を世界最大規模へと押し上げつつある。

拡大する中国の免税市場

中国政府は2024年10月1日に「市中免税店政策の改善に関する通知」を施行した。これは財政部、商務部、文化観光部、海関総署、税務総局の5部門が共同で発出したもので、従来の空港型免税に加え、市街地でも免税消費を推進する狙いがある。

これにより、既存の市中免税店に加えて、外貨免税店を段階的に転換し、新規都市への出店が認可された。政策の後押しを受け、免税消費は観光産業の枠を越えて日常消費にも浸透し始めている。

中国は25年上半期の入境旅客数が延べ333万人に達し、世界最大級の市場規模が視野に入る中、免税消費の制度設計は中国経済における新たな成長ドライバーとなっている。

免税+課税の複合モデル

新しい市中免税店の特徴は「免税区」と「課税区」を併設している点にある。免税区は「60日以内に出境予定の旅客」に限定され、購入した商品は空港や港の隔離区域に設けられた受け取り所で受け取る方式だ。中国籍の旅客も対象となる。

一方で課税区は旅行証明が不要で、誰でも買い物ができる。ここでは「即買即退」と呼ばれる即時還付制度が導入されており、外国人旅行客の場合は購入時にその場で税金が返還される。観光客、市民、内旅行者が利用できる仕組みが整えられた。

販売品目も従来の酒類や化粧品に加え、バッグやジュエリー、電子製品まで拡大し、免税消費の日常化を後押ししている。

既存、転換、新設の3分類

今回の政策で拡大する市中免税店は大きく三つに分けられる。

1.既存の免税店

北京、上海青島、大連、アモイ、三亜の6都市。

2.外貨免税店から転換

南京、重慶杭州、昆明、南昌、鄭州合肥ハルビンなど計12都市。既存の北京や上海の一部店舗も転換対象に含まれる。

3.新規設置都市

広州、深セン、成都、長沙、天津武漢西安、福州の8都市。

このように速やかな転換と新設が進むことで、免税の利便性が短期間のうちに沿岸から内陸部へも広がる運びとなった。

消費と地域経済への波及効果

都市型免税店の拡大は消費者と市場の双方に影響を与える。

まず消費者にとっては、即時還付によって購買の心理的ハードルが下がり、外国人観光客にとっても利便性が向上する。課税区の導入により、市民が気軽に利用できる点は、免税店を「特別な場所」から「日常の消費空間」へと転換させる効果を持つ。

市場への影響としては、地方都市の購買力を掘り起こし、観光資源の活性化と都市消費の底上げにつながる。また、日本や韓国といった空港型免税を主力とする国との競争環境にも変化をもたらす。免税消費の地理的中心は今後さらに中国へシフトすると予測される。

観光消費から日常消費への転換

市中免税店の拡大は観光消費を日常消費に取り込む政策的な試みといえる。免税はもはや観光客専用ではなく、都市住民にとっても身近なショッピング選択肢となりつつある。

今後の焦点は、運営主体の競争力(中国中免グループと地方企業の役割分担)、価格競争の優位性、購買体験の設計にある。これらがうまく機能すれば、市中免税店は単なる消費拡大策にとどまらず、都市経済の成長エンジンとして機能していくことになりそうだ。

免税市場の重心がアジアへと移行する中で、中国の試みは世界の免税ビジネスに新しい基準を提示する可能性を秘めている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。



   

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