<日本人の忘れられない中国>成都で行われた長女の結婚式、「日本では考えられないこと」に驚き

日本僑報社    
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日中戦争で日本は中国側にひどい仕打ちをしたため、対日感情が悪い方もいるのではないかと心配していましたが、その心配は一瞬のうちに消えました。

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私の長女道子が中国四川省成都市出身の楊涛と約一年間のお付き合いの結果、2003年11月に成都市に於いて結婚式を挙げることになりました。彼は新潟県の国際大学を卒業しMBA(経営学修士)の学位を持つエリートであり、松下電器産業株式会社(現パナソニック)に勤務していました。

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11月2日に結婚式に出席する16人が東京国際空港(成田)近くのホテルに前泊し、翌朝北京経由で成都に向かいました。成都国際空港にはわざわざ楊涛とご両親が迎えに来ており、お互いにハグし再会を喜び合いました。

ホテルで休憩後近くの高級レストランにて豪華で盛大な夕食会に招待され、食べきれないほどのごちそうや高級酒のマオタイ酒やワインを飲みながら至福のひとときを過ごしました。楊涛のご両親並びにご親戚の方々が私たちを温かく歓迎してくださり何とお礼を申し上げればよいのか、ただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。

11月3日、いよいよ結婚式当日です。着物姿の新婦は何と輿に乗せられ若い男性四人に担がれて式場に入ります。一方スーツ姿の新郎は大きな赤いたすきを着用して歩いて入場します。式場の舞台には両家の両親と新郎新婦が椅子に座り、司会者が通訳者とともにマイクを握って進行役を務めます。日本と違って仲人はいなく、いきなり新郎のお父様の挨拶から始まります。

お父様は「この結婚が中国と日本の平和の懸け橋になってほしい」と心のこもった挨拶でした。続いて私の挨拶は「三国志と杜甫で有名なここ成都で結婚式を挙げることができ本当にうれしく思います。この結婚が中国と日本の懸け橋になってほしいと切に願っています。」と新郎のお父様と同じように手短な挨拶にしました。

引き続き新郎と新婦が祝い酒の入ったグラスを、新郎は新婦の、新婦は新郎の口に当てて祝い酒を互いに同時に飲み交わします。余興として中国では有名な変面ショウが行われ私たちを楽しませてくれました。頭からすっぽりゴム製のお面をかぶり下を向き顔をあげると一瞬のうちにお面が連続して変わるという驚きのショウでした。10卓ほどの円卓には食べきれないほど沢山の料理が並べられていましたが、その中には亀が! 生まれて初めて食べましたがそのおいしさは格別でした。

結婚式にもかかわらず、ほとんどの方が普段着のままで地域の人たちが集まっていました。スーツ姿の人は身内の方か、親しい友人ぐらいでしょう。結婚式だからおいしい料理にありつこうとやってきたのではないかという感じでしたが、日本では考えられないことですので驚きました。広大な国土を有する中国では結婚式というのは地域の親睦を兼ねた団結という意味合いもあり、おおらかな気持ちでみんな楽しく誰でも好きなだけ食べて飲んでもよいという地域の慣習イベントに近い感じがします。

新郎の両親が私と妻を連れて参列しているご親戚の方々に紹介していただき挨拶回りをしました。日中戦争で日本は中国側にひどい仕打ちをしたため、対日感情が悪い方もいるのではないかと心配していましたが、その心配は一瞬のうちに消え、皆笑顔でお祝いの喜びの表情で応対してくれました。中国側の寛大で温かいおもてなしに対し本当にうれしく目頭が熱くなり感謝の気持ちでいっぱいでした。

結婚式は何時に終わるか決まっていなく、一人、二人と自由に退場する人が続きまさに流れ解散です。結婚式は人類共通のおめでたい儀式であり、民族の文化性が表出しますが、今回中国という異国の結婚式に参列する機会に恵まれ大変貴重な経験をさせていただきました。

当時成都では中国の方が日本人と国際結婚することが大変珍しかったのか、結婚式翌日に成都新聞に写真とともに大きく掲載・報道され大変驚きました。その新聞を新郎のご両親から記念のためいただきましたが、お心遣いに感謝するとともに大変嬉しく思いました。

結婚式の翌日新郎のご両親のご厚意により、日本から来た私たちのために日本語を話せる旅行ガイドを付けてくださり、劉備、関羽、張飛、諸葛亮孔明といった三国志にゆかりのある英雄たちを祀ってある「武侯祇」、「杜甫草堂」、「パンダ繁殖センター」及び「楽山大仏」の観光旅行をさせていただきました。

長女の結婚式を通して、中国の皆さんから過去の戦争の暗い歴史を超えて、私たち日本人に対し心温まるおもてなしをいただき本当にうれしく心より感謝の気持ちでいっぱいです。

長女と楊涛は2人の子供に恵まれ、結婚以来現在もシンガポールで幸せに暮らしています。漢字文化を共有する中国とは今後も末永く交流を深めていくことができるよう願ってやみません。

■原題:成都市における長女の結婚式

■執筆者プロフィール:鈴木 明彦(すずき あきひこ) 元会社員

1941年生まれ、1945年10月旧満州牡丹江から引き揚げ、福島県会津の父の実家にて高校時代まで過ごす。東北大学工学部機械工学科卒業後大手重工業に就職し主にトラック、バス用ディーゼルエンジンの設計、開発、研究業務に従事。定年退職後神奈川大学工学部機械工学科で非常勤講師として11年間教鞭を執る。2015年10月にNPO法人「おもしろ科学たんけん工房」に入会し、科学の実験、工作、観察を通して、子供たちに科学の不思議、楽しさを体験してもらう活動をしている。

※本文は、第7回忘れられない中国滞在エピソード「中国で人生初のご近所付合い」(段躍中編、日本僑報社、2024年)より転載したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。

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