上海で「プラスチック規制令」、都市競争力を試す環境規制の実験場に

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上海でプラスチック規制令が施行された。繰り返し違反には業務停止もあり得る厳格な措置だ。

上海で9月に「禁塑令(プラスチック規制令)」が施行された。罰金は最高10万元(約200万円)で、繰り返し違反には業務停止もあり得る厳格な措置だ。だがこれは単なる規制強化にとどまらない。世界都市間で環境施策が競争力の要素となる中、上海は「使い捨て社会」からの脱却を掲げ、「環境先進都市」としての未来像を描こうとしている。

市場背景と政策の枠組み

今回のプラスチック規制令は上海市が9月1日に導入した新たな環境規制だ。対象はポリエチレン(PE)コーティング紙カップや発泡スチロール製の食品容器、回収困難な使い捨てプラスチック包装など。これらを外食チェーンや宅配業者が使用した場合、最高で10万元の罰金が科され、繰り返し違反すれば営業停止や資格取消といった行政処分が下される。

背景にあるのは、中国全体で年間約6000万トンに達するとされるプラスチックごみ問題だ。国際的にも「脱プラスチック」は時代の大きな潮流であり、欧州ではすでに使い捨てプラ食器の販売が禁止され、アジア諸都市でも代替素材への切り替えが急速に進んでいる。上海もまた、このトレンドにいち早く対応することで、国内外に向けて「環境先進都市」であることを示そうとしている。

都市競争力と環境施策

森記念財団が毎年発表する「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」では経済、文化、居住、環境といった複数の分野で都市力が評価されている。その中でも「環境」は年々重視されているカテゴリーだ。

東京やパリ、シンガポールといった都市は、環境規制と都市ブランドを結びつけることで国際的評価を高めてきた。上海も金融・経済都市として存在感を確立しているが、環境対応の遅れが弱点とされたこともある。今回の禁塑令はそのイメージを刷新し、国際舞台での都市競争力を高める試金石となりそうだ。

企業・業界の対応

一方、プラスチック禁止令の施行によって外食産業やフードデリバリー業界が大きな影響を受けることになった。従来主流だったPEコーティング紙カップは「リサイクル可能」と宣伝されてきたが、実際にはリサイクルが難しく、「偽エコ製品」と批判されている。そこで、これに代わってバイオマス由来のPLA(ポリ乳酸)や繰り返し利用できるリユース容器の導入が進められている。

しかし課題はコストだ。新素材の調達コストは従来比で2~3割高いとされる。そのため、特に薄利多売型のチェーン店にとっては負担が大きい。さらに、容器回収や洗浄の物流コストも上乗せされる。業界関係者からは「業界が一夜で変わる」とまで言われるほどの激震であり、短期的には混乱が避けられない。

再利用社会へのヒント

世界的には「使い捨てから再利用へ」という流れが加速しており、上海以外の都市でも環境に優しいライフスタイルを啓蒙する動きが広がっている。6月21~22日には広州にある複合施設ポリー・サニー・ウォークで「リユース・デイ」が行われ、レンタルカップや量り売り洗剤といった仕組みを市民に広めようとする取り組みに注目が集まった。

ちなみに欧州ではデポジット制を導入し、容器を返却すれば保証金が戻る仕組みが定着している。日本でもリユース容器のシェアリングサービスが都市部で実験導入されている。上海が目指すべきなのは、こうした「再利用を前提とする都市生活」だろう。市民が自然にリユースを選べるインフラ整備こそが、プラスチック禁止令の成否を決めることになる。

都市と企業の未来像

前述した通り、短期的には企業コストの上昇や供給網の混乱が避けられない。だが長期的には、環境規制を先取りした都市こそが国際的な投資や観光需要を呼び込む。外資系企業が拠点を置く際にも「環境対応都市」であることが重要な判断材料となりそうだ。

禁塑令は単なる規制ではなく、都市の未来像を描く競争の一環だ。企業にとっても「規制に従う」だけでなく、「規制を機会に変える」発想が求められてくる。上海は環境と経済をどう両立させるかという世界共通の課題に対する実験場になろうとしている。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。



   

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