拡大
長らく都市での飼育が禁じられてきた中華田園犬が深セン、広州、長沙で相次いで解禁されたことが話題となっている。
「土狗(どく)」と呼ばれ、長らく都市での飼育が禁じられてきた中華田園犬が深セン、広州、長沙で相次いで解禁されたことが話題となっている。これは単なる犬種の再評価ではない。都市の文化、制度、そして記憶との再接続を巡る物語でもある。
それは柴犬ではない。ましてや洋犬でもない。門前を守り、畑を走り、子どもたちの後をついて歩いた。「土狗」や「柴狗」と呼ばれ、農村部では番犬や狩猟犬として親しまれてきた土着の在来種を「中華田園犬」と呼ぶ。
庶民の生活と共にあった中華田園犬は日本の柴犬のように血統や形態が標準化されていない。個体によって性格も外見もばらつきがあり、ペットとしてのイメージは乏しい。そのため、現在のブランド化が進むペット市場では「注目されにくい犬種」というのが実状だ。
中華田園犬は肩高が50センチを超える個体が多く、「大型犬」に該当しやすい。忠実と言われる一方で「気性が不安定」「攻撃性がある」といった偏見もある。こうしたことから「危険犬種目録」にも登録され、都市での飼育が禁じられてきた。
そんな中華田園犬を再び合法的に飼えるようにする政策を打ち出す都市が増えてきた。口火を切ったのは深センで、2024年11月に解禁都市1号となり、その後、広州(25年1月)、長沙(同年6月)が続いた。
直近の長沙による解禁を伝える報道記事では、市の方針転換について湖南省動物保護協会の関係者のコメントを紹介している。「土着犬による咬傷事件が多く見えるのは、単に頭数が多く、管理されずに放し飼いされている個体が多いため」であり、「犬種の問題ではなく、飼い主の管理責任の問題」だという。
実際、飼育を禁じる規制が強化されたことによって、中華田園犬が遺棄され、郊外で野良犬化する事態が起こってきたとされる。交通事故や衛生面の問題が生じることもあり、飼育規制の目的に反した結果がもたらされてきた面もありそうだ。
また、解禁はこれまでの価値観そのものの転換を意味するいう指摘もある。犬と都市の中でどう共に生きるかという文明的な飼い方が問い直されているというのだ。興味深いのは解禁に向けた動きがSNSや市民の感情によっても後押しされているという点だ。
「柴狗進城(柴犬ではなく柴狗が都会にやって来た)」というハッシュタグが中国SNSの小紅書(RED)や微博(ウェイボー)で話題となった。若者の間で田園犬を再評価する動きが広がっている。
中華田園犬の復権の背景には、それが文化そのものなのだという視点がある。高価な血統書など持たずとも、忠誠と素朴さと、そして飾らぬ存在感で、中華田園犬は「心のブランド犬」となりつつあるといってよいだろう。
忘れてはならないのが、専門家による価値の再定義だ。「中華田園犬は中国の風土と生活に最も適応した、何千年もかけて自然淘汰されてきた知恵の結晶だ」と湖南農業大学の屠迪副教授は指摘している。
ある夕暮れ、山道をたどる老郵便配達人と息子が静かにたたずむ。横には、じっと主人の顔を見上げる犬。四半世紀前の中国映画「山の郵便配達」のワンシーンは、まるで静かに「あなたはどんな命と共に生きたいのか?」と私たちに問いかけているかのようだ。
中華田園犬の飼育解禁は「自由」だけではなく「責任」の自覚を飼い主に迫ることでもある。登録制度、ワクチン接種、放し飼いの禁止、公共マナーの啓発など、義務として課せられることは少なくない。それでも、かつて祖先と共に生きていた「犬との関係」を今一度自覚的に選び直すという点で意義深い。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
CRI online
2025/6/8
邦人Navi
2025/6/27
Record China
2025/4/27
Record China
2025/4/16
Record China
2025/1/28
Record China
2024/11/11