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日本語と中国語における漢字語には、親子あるいは兄弟のように似通った関係を持つものもあれば、まったく異なる系譜で独自に発展した語彙も少なくない。写真は上海。
日本語と中国語における漢字語には、親子あるいは兄弟のように似通った関係を持つものもあれば、まったく異なる系譜で独自に発展した語彙も少なくない。四字熟語と成語の関係もその一つで、表面的な共通点だけでは捉えきれない本質的な違いが潜んでいる。
歴史的に見れば、日本語における文字のルーツは古代中国にあり、逆に近代以降の中国語に含まれる抽象語彙の一部は明治期の日本で生まれた和製漢語が逆輸入されたものだ。
日本語の四字熟語に関して言えば、その多くは中国古典──例えば「論語」「戦国策」「史記」など──から受け継がれたもので、明治以前の漢籍教育の影響は今もなお随所に見られる。
現代では、成語は中国語において「現役の語彙」として日常会話からビジネス、政治演説に至るまで幅広く使われている。一方、日本語の四字熟語は使用範囲が限定され、主に教養的・修辞的な場面で用いられることが多い。
共通の起源を持つ以上、「温故知新」「一日千里」のように日中で表記も意味も一致する語彙も多数存在する。そのため、学習者にとっては既視感を生かした語彙習得がしやすく、心理的なハードルを大きく下げる効果がある。
しかし注意したいのは、「同形異義」という落とし穴の存在だ。
例えば「一刀両断」は、日本語では「思い切った決断」を意味するが、中国語では「人間関係を断ち切る」という冷厳なニュアンスが強い。また「落花流水」は、日本語では「男女の情愛」を象徴する詩的表現だが、中国語では「完敗する」という意味に用いられる。
こうした違いは、単に語義の誤解を招くリスクというより、言語と文化が交差する接点としての魅力でもある。例えば「花鳥風月」は、日本独自の自然美への感性を凝縮した室町時代生まれの表現で、中国には見られない日本的美意識を語る四字熟語だ。
さらに、明治以降の近代日本では、西洋概念を漢語で翻訳する際に「一石二鳥」(中国語では「一挙両得」)などの新しい四字熟語が創作され、和製漢語の発明という意味での表現文化も発展していった。
四字で物語を語る力、それは四字熟語と成語に共通する最大の魅力だ。表記が似ていても、そこに込められた意味、使われる場面、受け取られ方は異なることが多い。表面の一致だけで満足せず、違いも楽しむ遊び心と探究心を携えて、日中の言語世界を横断する旅に出よう。(提供/邦人Navi)
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