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日中ハイレベル経済対話が6年ぶりに東京で開催された。
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日中両国の閣僚らによるハイレベル経済対話が22日、6年ぶりに東京で開かれ、脱炭素分野での官民連携の推進などを確認する一方、日本側は日本産水産物の早期の輸入再開などを重ねて求めた。双方は協力の裾野を広げ、懸案や課題の解決を図る方針だ。
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ハイレベル経済対話は岩屋外相と王毅・中国共産党政治局員兼外相に加え、経済分野などを担当する日中両国の閣僚クラスが出席し、脱炭素分野での官民連携の推進に加え、大阪・関西万博を機に人的交流を促進することで一致した。
日中ハイレベル経済対話の中で、中国側は「自由貿易体制への支持を表明し、国際社会から広く歓迎されている」と強調した。
岩屋外相は経済対話後、記者団に「協力案件だけでなく、課題や懸案の解決に向け率直な議論を行い、実り多かった」と強調した上で、「(水産物の)輸入再開に向けたプロセスの進展を確認したのは有意義だった。牛肉、精米を含む農産物の対中輸出の再開・拡大についても、早期に解決できるものから優先的に解決していくことが大事だと話した」と語った。中国は東京電力福島第1原子力発電所からの処理水の海洋放出に伴い、日本産水産物を禁輸しているが、岩屋氏は2024年9月に日中が合意した段階的な輸入再開への調整が着実に履行されていることを確認したという。
日本は、地域の平和と繁栄には建設的で安定的な日中関係の構築が欠かせないとし、引き続き首脳を含めたハイレベルでの意思疎通も通じて協力の裾野を広げつつ、懸案や課題の解決を図っていきたい考えだ。
中国外交部はハイレベル経済対話の成果を発表。王毅外相は「相互理解が深まり、協力に向けた信頼が強まった」と評価し、「一国主義や保護主義がまん延する中で、自由貿易体制を支持し、国際貿易ルールの順守が表明された。国際社会から広く歓迎されるだろう」と強調した。
このハイレベル対話に先立ち、岩屋外相と王毅外相が会談し、日中両国による戦略的互恵関係の推進などに向け、協力をしていくことで一致した。
具体的には「グリーン経済」や少子高齢化への対応など、幅広い分野で実務的な協力を進めていくことになった。
冒頭、岩屋外相は「地域と国際社会に責任を有する日中両国が緊密に意思疎通を重ね、共に役割を果たしていく必要がある。協力と連携のポテンシャルを最大限発揮するために課題や懸案の解消も含め、率直に議論できる関係の構築が重要だ」と述べた。
こうした中、日中韓3カ国は都内で外相会合を開催し、経済交流や少子高齢化などの共通課題への対応で3カ国が「未来志向」の協力を進めることで一致した。岩屋外相は共同記者発表で、日本が議長を務める首脳会議(サミット)の早期開催に向けて調整作業を加速することで合意、早期開催を目指すという。日中韓サミットで李強首相の来日が実現すれば、中国首相が18年5月以来7年ぶりに日本を訪れることになる。
会合には岩屋外相、王毅外相、韓国の趙兌烈外相が出席した。経済や安全保障面で国際情勢の変化が激しくなる中、東アジアの隣国として連携する意思を確認した。東南アジア諸国連合(ASEAN)も巻き込みながら、人的往来や交流を活発することになった。さらに3カ国の自由貿易協定(FTA)実現に向け交渉を加速する。
岩屋外相は会合で北朝鮮情勢に関し、核・ミサイル開発やロシアとの軍事協力に懸念を表明した。国連安全保障理事会の決議に沿った北朝鮮の非核化が日中韓の共通目標で、緊密に意思疎通したいとし、拉致問題の即時解決にも協力を求めた。
共同記者発表で岩屋外相は「3カ国が未来志向の交流と協力を推進していくことは地域、国際社会を分断から協調に導く上でも極めて重要だ」と言明。「幅広い国民の支持を得て安定的に(関係を)発展させるためには国民生活に直接裨益(ひえき)する協力を進めることが重要だ」と主張した。
王外相は「国際情勢が混迷し、世界経済の回復が伸び悩む中で中日韓はさらに意思疎通を強化して地域の平和と発展に安定的要素を提供する必要と責任がある。多国間主義と自由貿易を堅持する」と強調した。その上で、25年が終戦から80年の節目になるとし、「歴史を真摯に反省することで着実に未来を切り開くことができる」と訴えた。
世界ではトランプ米政権の関税引き上げをはじめとする保護主義的な動きが広がり、米国と中国が貿易摩擦や政治的な対立を深めている。日韓は共に米国の同盟国だが、日韓にとって中国は貿易総額の2割を占める最大の貿易相手国だ。中国からみても日本が2位、韓国が3位の取引相手で、3カ国の経済は密接な関係にある。
日中韓の枠組みは1997年に始まった「東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓」から独立して誕生した。アジア通貨危機を受けて経済再生がアジアの喫緊の課題となり、当時の小渕恵三首相が98年12月のベトナムでの演説で「日中韓という北東アジアの主要国が対話のネットワークを強化すること」を提唱した。
トランプ米政権による関税の引き上げにより、米国や世界の景気の下振れリスクへの警戒感が高まっており、トランプ政権の外交・経済政策における不確実性を背景に日中韓が再び接近を強めている。中国は経済的にも軍事的にも大国となり、米国と覇権争いをするまでに台頭した。
日中は石破首相の訪中、20年に新型コロナウイルスの影響で延期になったままの習氏の国賓来日の再要請につなげることを想定する。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾など韓国内政の混乱を受け、日韓関係の先行きは再び不透明になっている。
石破首相は21日、首相官邸で王、趙両外相と会談した。石破氏は「両国は日本にとって極めて重要な隣国だ」と述べ、「隣国ならではの難しい問題も時に発生するが、国益に基づく現実的な外交により対話し、未来志向の協力関係を築いていきたい」と力を込めた。王氏は会談後、記者団に「われわれは中日関係の未来に期待を持っている」と強調。「日本側が歴史、台湾などの重大問題について約束を守ることが大事だ」と力説した。林芳正官房長官も21日、王、趙両外相と個別に面会した。記者会見で3カ国外相会談に関して「未来志向の協力を確認するとともに地域、国際情勢についての率直な意見交換を期待する」と話した。
日中は懸案を抱えながらも衝突リスクを回避するための安定を重視し、双方が対話を求める局面に入っている。今回の一連の会議を通じて、日本と中国の友好関係構築は東アジアの平和と発展の基盤となることを改めて確信した。
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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