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中国の新エネルギー車の割合は50%でピークアウトするとの見方が出ている。写真は「騰勢N9」。
中国汽車流通協会乗用車市場信息聯席分会によると、2024年の中国の自動車販売台数は前年比5.5%増の2289万4000台、うち新エネルギー車(EV、PHEV、燃料電池車)は同40.7%増の1089万9000台で、全体に占める割合は47.6%だった。
2025年の販売台数は前年比2%増の2340万台、うち新エネルギー車は同20%増の1330万台で、全体に占める割合は57%と予想している。
しかしこのところ販売シェアは頭打ちのようだ。今後どうなっていくのだろうか。
中国メディアもこの頭打ち現象を論じ始めている。
新華財経によると、新エネルギー車の24年の月別販売台数と全体に占める割合は以下の通り。24年全年の割合は47.6%だった。
1月 67万3000台 33.0%
2月 38万2000台 34.7%
3月 71万8000台 42.4%
4月 67万5000台 44.1%
5月 79万7000台 46.7%
6月 85万6000台 48.5%
7月 88万1000台 51.3%
8月 102万5000台 53.7%
9月 112万2000台 53.2%
10月 119万5000台 52.9%
11月 126万7000台 52.3%
12月 130万3000台 49.5%
25年1~2月は以下の通り。
1月 74万4000台 41.5%
2月 72万0000台 51.5%
春節休みがあるため、1月と2月は累計で評価する必要がある。すると45.9%となり、年間予測より10%以上低い。24年8月の53.7%をピークに減少傾向にある。
クラス別のデータもある。新華財経による24年の新エネルギー車の価格帯別の販売台数と販売台数全体に占める割合は以下の通り。
10万元以下 256万9000台 43.3%
10万~15万元 350万1000台 49.7%
15万~20万元 126万3000台 38.5%
20万~25万元 109万1000台 63.0%
25万~30万元 128万3000台 59.6%
30万~35万元 47万台 66.2%
35万~40万元 21万7000台 35.1%
40万元以上 33万4000台 33.6%
価格的には20万~35万元(約400万~700万円)ゾーンで突出している。国産乗用車は高価格化が進み、20万元以上の国産車の割合は22年が27%、23年が36%、24年が41%と上昇した。新エネルギー車が原動力に違いない。課題は20万元以下のボリュームゾーンだ。
新エネルギー車の中でPHEVが伸びている。中国汽車工業協会によると、23年の新エネルギー車の構成は純EVが70.4%、PHEVが29.5%、燃料電池車などが0.1%だった。それが24年には純EVが60.0%、PHEVが40.0%、燃料電池車などが0.0%と、PHEVの比率が急増した。
非営利の研究機関・中国電動汽車百人会は25年にPHEVが40%、レンジエクステンダー(エンジンを発電にのみ使用)が10%となり、純EVは50%に減少すると予想した。レンジエクステンダーのシェアは微々たるものだったが、10%に急増するとしている。コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーもレンジエクステンダーは耐久性とコストの優位性により爆発的に増加すると指摘する。
中国メディアはPHEVとレンジエクステンダーの優位性について次のようにまとめている。
インフラ
地方都市では充電インフラが不足している。PHEVとレンジエクステンダーは従来の燃料駆動と電気技術を巧みに組み合わせて低燃費と長航続距離を実現させ、現状の地方都市において非常に便利で信頼性が高い。
政策の影響
PHEVとレンジエクステンダーは地方政府の購入補助金、ナンバープレート優先登録などにおいて純EVと同様の扱いを受けられる。国は公用車の30%を新エネルギー車とし、都市部では100%でもよいと規定している。これらは普及の大きな推進力だ。
ユーザー体験の多様化
週末の気ままなドライブや長距離旅行など、自動車のユーザー体験は多様化している。航続距離が長く、給油の簡単なPHEVとレンジエクステンダーは家族全員のニーズに対応する理想的な選択肢だ。
汽車之家研究院は「自動車購入ユーザー動向の洞察(2025)」というレポートを発表した。それによると、買い替えを促す補助金政策「以旧換新」により、買い替え人口が初購入者を上回り、自動車市場の主力となった。24年に自動車の購入意向を持っている人の男女比率は男性が78.7%、女性が21.3%だった。女性は前年比4.1%減だったが、男性の59%は配偶者やパートナーなど女性の意見を参考にすると答えた。
年齢別では、買い替え人口の増加に伴い、41歳以上の比率が急上昇し、40歳以下、特に男性比率が低下した。しかし、今後は買い替え需要でも若年化が進むとみられ、やはり女性と若年層がカギとなる。
また、55%は日常の移動の他に車内での休息など豊かなリビングとしての空間価値を重視していた。47%は車内で過ごす時間が増えたと回答しており、特に新エネルギー車のユーザーにこの傾向が強い。
情報収集を開始してから購入決定までの期間は平均2カ月。中でもオンラインで自動車を調べる期間は21年の41日から24年は35日へと短くなっている。ただし閲覧コンテンツ量は変わらず、事前研究が深まっている。新エネルギー車と内燃エンジン車を比較する人にはさらに2倍のコンテンツ需要がある。メーカーは市場やユーザーの急速な変化に対応し、マーケテイングを迅速に調整する必要がある。それらをクリアして販売台数を伸ばしているのがPHEVとレンジエクステンダーというわけだ。
新エネルギー車全体ではなく、純EVの構成比に注目しなければならない。純EVはボリュームゾーンを捉えきれるのか?25年はその将来を決する年になりそうだ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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