「麻薬戦争」でフィリピン前大統領を逮捕、背景に正副大統領の抜き差しならぬ対立

Record ASEAN    2025年3月15日(土) 18時0分

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フィリピンのドゥテルテ前大統領が「麻薬戦争」をめぐり逮捕された。異例の逮捕劇の背景にはマルコス現大統領と前大統領の娘で副大統領のサラ氏との抜き差しならない対立がある。写真はフィリピン。

フィリピンのドゥテルテ前大統領が11日に逮捕された。「麻薬戦争」をめぐり国際刑事裁判所(ICC)が発布した逮捕状を比警察が執行。前大統領は同日夜、ICCのあるオランダ・ハーグに移送された。 異例の逮捕劇の背景には現大統領のマルコス・ジュニア氏と前大統領の娘で副大統領のサラ氏との抜き差しならない対立がある。

ドゥテルテ前政権は「麻薬戦争」と呼ばれる強力な薬物犯罪対策を実施。人権団体の推計によると、容赦ない麻薬撲滅作戦では貧困層を主とする数千人が多くは麻薬との関与を示す証拠がないまま、警察官や自警団によって殺害された。

ドゥテルテ氏はICCが「人道に対する罪」で違法薬物の取り締まりに関する予備調査を開始したことを受けて、2019年にフィリピンのICC脱退を決めた。比国政府は昨年まで捜査への協力を拒否していた。

ロイター通信などによると、ドゥテルテ前大統領は香港への短期訪問を終え、マニラ国際空港に到着した直後に逮捕。空港に隣接するビラモール空軍基地にいったん留置された。

ドゥテルテ前大統領は9日、香港でフィリピン人労働者数千人を前に演説し、ICCの捜査を非難。ICCの捜査官を「売春婦の息子ども」と罵倒しながらも、逮捕が自分の運命なのであれば「受け入れる」としていた。

ドゥテルテ氏の別の娘ベロニカさんがインスタグラムに投稿した動画によると、ドゥテルテ氏は拘束されていた空軍基地で「法律とは何か、私が犯した罪とは何か」と主張。「私がここに連れてこられたのは、自分の意思ではなく、誰かの意思によるものだ。あなたは今、自由の剥奪について答えなければならない」と述べた。同氏が誰を念頭にしたかは不明だ。

ドゥテルテ氏の元法律顧問は「逮捕は違法だ」と反発。警察は空港で弁護士が同氏に面会するのを許可しなかったとも訴えた。ICCに管轄権はないとの認識も示した。

前回22年の比大統領選では20年間にわたり独裁政治を敷いた故マルコス元大統領の長男で北部のルソン島を地盤とするジュニア氏と南部のミンダナオ島で大きな力を持つドゥテルテ家のサラ氏がタッグを組んで圧勝した。

しかし、マルコス、ドゥテルテ両家は「同床異夢」。憲法で大統領(任期6年)の再選は禁止されているため。ジュニア氏は親族のロムアルデス下院議長を次期大統領選に擁立する意向とされる。これに対し、サラ氏も大統領選への出馬に意欲を隠していない。

そのサラ氏は昨年11月、「自分が殺された場合にマルコス大統領夫妻らを暗殺するよう『殺し屋を雇った』」などと発言し、物議を醸した。下院は発言を問題視。今年2月、機密費の不正使用などと併せ、サラ氏を弾劾訴追することを決めた。(編集/日向)

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