中国、インドネシアにチャンスはあるか=帰化選手の大量起用に賛否―W杯アジア最終予選、日本の突破は確実

長田浩一    2024年11月25日(月) 19時30分

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来年3月に再開される W杯アジア最終予選の残り4節で、帰化選手を複数起用している中国、スタメンの大半を帰化選手が占めるインドネシアがどこまで出場権獲得に迫れるかに注目が集まる。

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男子サッカーのワールドカップ(W杯)アジア最終予選は11月までに全10節のうち6節を消化した。C組では日本が5勝1分けの勝ち点16と、2位のオーストラリア(豪州)に9点差をつけて独走しており、予選突破は確実。来年3月に再開される残り4節では、帰化選手を複数起用している中国、スタメンの大半を帰化選手が占めるインドネシアがどこまで出場権獲得に迫れるかに注目が集まる。

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C組、2位以下は大混戦

2026年に開催される北中米W杯のアジアの出場枠は8.5(0.5は他大陸とのプレーオフ分)。最終予選は、2次予選を勝ち抜いた18カ国を6カ国ずつ3グループに分け、各国はホーム&アウェーでそれぞれ10試合を戦う。各グループの上位2カ国は自動的に出場権を取得。3、4位の国はアジアプレーオフに回り、残り2.5枠を争うという構図だ。

最終予選C組は、前回大会にアジアから出場した6カ国のうち日本、豪州、サウジアラビアが入ったため、この3国が上位2位以内を争うとみられていた。ところが、ふたを開けてみると日本が快調に白星を重ねる一方で他国は星のつぶし合いを演じ、6節終了時点で日本以外は豪州が勝ち点7、インドネシア、サウジアラビア、バーレーン、中国が各勝ち点6(同勝ち点の場合は得失点差で順位を決定)と大混戦。日本はあと1勝で出場権を獲得するが、2位以下は全く予断を許さない展開となっている。

このような状況になったのは豪州、サウジが予想外に苦戦しているためだが、裏を返せば他の3国、とりわけ国際サッカー連盟(FIFA)ランクでは下位の中国、インドネシアが健闘しているためと言える。特にインドネシアがサウジに対し敵地で引き分け、ホームで快勝したのはサプライズだった。


スタメンの9人が帰化選手

中国とインドネシアで特徴的なのが、帰化選手が重要な役割を演じていること。中国は、第6節のホーム・日本戦では負傷などの影響で帰化選手がいなかったが、第1節の埼玉スタジアムでの日本戦では、イングランド・プレミアリーグでのプレー経験のあるティアス・ブラウニング(祖父が中国人)など、数人の帰化選手が出場していた。

しかし、何といってもインドネシアの大量起用が目を引く。第5節のホーム・日本戦では、スタメン11人のうち9人が帰化選手だった。チーム全体でも半数以上を帰化選手が占め、そのほとんどがかつてインドネシアを植民地支配したオランダ生まれの若者たち。何らかの形でインドネシア人の血を引き、オランダ代表経験はないもののプロとしてプレーしている選手たちを、同国のサッカー協会がここ数年のうちに戦略的・組織的に帰化させ、代表チームに引き入れているわけだ。

彼らの中にはイタリア・セリエAやオランダリーグで主力として活躍している選手も含まれるだけに、その効果はてきめん。今年1月のアジアカップでは、同国として初めてグループリーグを突破してベスト16に進出。4月のU23アジアカップでは、豪州や韓国を下してベスト4に進出し、上位3カ国に与えられるパリオリンピックの出場権獲得まであと一歩と迫った。帰化選手をさらに増やして臨んだ今回のW杯最終予選では、前述のように強豪サウジを破るなど、6節終了時点で3位につけ、アジアプレーオフはもちろん、ストレートで出場権を得る2位も視野に入る。

来年6月、運命の直接対決

彼らのほとんどは、インドネシア人の血を引いているとはいえオランダ人として生まれ、成人した選手たちだ。そうした選手たちを、W杯の出場権を得るためとはいえ、大量に帰化させるのはやりすぎだし、国民に受け入れられないのではないか、という声も聞かれる。「スタメン11人中、9人が国籍を取得した“外国人”選手。こんなインスタント代表チームに夢を抱くインドネシアのサッカー少年がどれくらいいるだろうか」(東京中日スポーツのコラム)というわけだ。

そうした指摘に対しては、「日本だって帰化選手に頼った時代があったじゃないか」との反論がありそうだ。確かに、1970年代のネルソン吉村(帰化後は大志郎、故人)を嚆矢として、ブラジル出身の選手たちが帰化し、日本代表として活躍した歴史がある。80年代の与那城ジョージ、2010年W杯に出場した田中マルクス闘莉王ら、日本人の血を引く選手たちのほか、ラモス瑠偉、呂比須ワグナー、三都主アレサンドロは、日系人ではないものの日の丸をつけてプレーした。ただ、彼らはその何年も前に来日し、日本のチームでプレーし、十分なじんだうえで国籍を変える決断を下した。人数的にも、それぞれの時代の日本代表で、帰化選手はいた場合でも1、2人だった。インドネシアとは全く事情が異なる。

とはいえ、インドネシアの帰化戦略がFIFAのルールに反しているわけではないし、国民の7割以上が支持しているとの報道もある。強豪サウジを破ってW杯出場が現実の希望となった今、この数字はさらに高くなっているだろう。そうであれば、外部がとやかく言うべきことではないかもしれない。

3月に再開される最終予選およびその後のアジアプレーオフで、中国とインドネシアが悲願のW杯出場権を得る可能性はあるのか。11月の両国と日本との試合を見る限り、より伸びしろを感じたのは欧州育ちの選手で固めたインドネシアだったが、中国もここにきて粘りを見せている。来年6月5日に予定されている直接対決が、両国の運命を大きく左右しそうだ。

■筆者プロフィール:長田浩一

1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任。現在は文章を寄稿したり、地元自治体の市民大学で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中国との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外国の地は北京空港でした。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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