日本僑報社 2024年10月27日(日) 21時0分
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通訳の道を選んだ初心と信念を綴り、同封する色紙に漢字で「言必信、行必果」と書いて、彼女宛てに送った。一ヶ月後…。
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読むともなくネット記事を読んでいたら、こんな記事が目に留まった。東日本大震災からここ数年にわたり、日本の地殻プレートはアメリカに向かって東に移動しているという。ふと私は思った。「中日関係は、まるでこの地理的な距離と同じように、日米はどんどん近づき、中日はどんどん離れていっている」と。
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45年前のその日を振り返れば、1978年8月12日、中日両国政府は北京で「日中平和友好条約」に調印した。それに先立ち、国交回復を果たした1972年、周恩来総理は「言必信、行必果」という題辞を来訪中の日本の大平正芳外相に贈り、これを受けた田中角栄首相は「信為万事之本」と返したという。両国間において、誠実と信義に基づいて先人たちが交わした代々にわたる丁重な友好の約束であるものの、45年経った今となっては苦笑いするしかないようだと私は言いたい。
先月の通訳の授業で、先生が田中角栄の娘である田中真紀子のスピーチを逐次通訳の材料として聞かせてくれた。「1972年中国訪問の時には、お父さんは一命を賭して、日中国交回復に向けて出発する。『もし、真紀子と二人で行って、中国の恨みのたくさん持ってる、目に見えない人たちから殺されるかもしれない』。父はあの時、死を覚悟して本当に行く決意をしたのです」この言葉を聞いたとたんに、感動がこみ上げてきて、胸にじんと来た。田中角栄首相は、「将来に日本の一般の人達と中国の一般の人達が笑顔で交流できる時代を作る」ことを天命にして、日本国内で「国賊」と呼ばれても、死を覚悟して中国を訪問したのだという。45年経った今の日本語学習者も、中日両国が当時の「蜜月時代」に戻れたらと必死な信念で願っているに相違ない。
大学で日本語を専攻していた私は、卒業後、大学院で日本語通訳の道を選んだ。通訳というのは、言葉が相通じない人たちの間にコミュニケーションの橋を架ける存在だと私は思っている。中国の人たちに日本人の思いやり、侘び・さびの文化を伝えたいと思っている。また、中国の古き良き伝統や素晴らしい文化を日本の人々に向けて発信したいと考えている。そんな初心から、覚悟を決めて通訳の道に進んだ。ちょうどその頃、ある翻訳プロジェクトがきっかけで、中国語専攻の日本の大学院生のすみれちゃんに出会った。しかし、コロナ禍にあって、交換留学プログラムはほとんど中止を余儀なくされていた。相手国に留学を果たせなかった者同士として、私たち二人はすぐに仲良くなった。ところが、直接会うことができなかったため、インターネットや手紙でしかコミュニケーションをとることができなかった。
ある日、通訳の道を選んだ初心と信念を綴り、同封する色紙に漢字で「言必信、行必果」と書いて、彼女宛てに送った。1ヶ月後、彼女から返事を受け取った瞬間、私は目を見張り、胸がいっぱいになった。返ってきた色紙には、なんと漢字で「信為万事之本」と書いてあったのである。ああ、彼女は私の気持ちをちゃんと受け取ってくれたんだ。私たちの心はこんなにも繋がっていたんだと強く胸を打たれた。
すみれちゃんと私は皆、ただのちっぽけな人間で、ごく普通の大学院生に過ぎない。しかし、それだけに草の根の交流は大切になる。人間は自分の物差しで互いを測るのは駄目であり、異文化コミュニケーションもまた然り。人は互いに文化背景などが違うからこそ素晴らしいので、その違いを認めることが必要となる。たとえ政府間の交流は途絶えたとしても、民衆の交流は日本海を流れる「黒潮」のようなものである。私たち一人ひとりが「黒潮」の中のサンマ、マグロ、カツオのように思えてくる。黒潮の流れによって育ちながら、黒潮に新たな活力を与えていく。
日中平和友好条約締結から45年、鄧小平や周恩来をはじめとする先人たちの知恵と勇気に学び、草の根の交流を大切にし、笑顔で交流できる時代を一緒に作ろうではないか。
■原題:先人たちに学ぼう――日中平和友好条約の今日的な意味
■執筆者:範楚楚(西安外国語大学)
※本文は、第19回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「囲碁の智恵を日中交流に生かそう」(段躍中編、日本僑報社、2023年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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