男児殺害や日本産水産物問題、日中双方には今こそ慎重な外交努力が必要―香港メディア

Record China    2024年9月23日(月) 17時0分

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香港メディアの香港01は、深セン市内で日本人男児殺害事件が発生し、一方で中国側が日本産水産物の輸入再開の動きを見せる現在こそ、日中双方に慎重な外交努力が必要と主張する論説を発表した。

香港メディアの香港01は21日付で、深セン市内で日本人男児殺害事件が発生し、一方で中国側が日本産水産物の輸入再開の動きを見せる現在こそ、日中双方に関係を改善するための慎重な外交努力が求められると主張する論説を発表した。以下は同論説の主要部分を日本人読者向けに若干の情報を追加することも含めて再構成したものだ。

親日中国人」を標的にした行為が多かったが、日本人児童を直接襲撃するように

深セン日本人学校の男児が襲撃されて死亡した。犯人の動機はまだ公表されていないが、犯行の時期や場所、男児の国籍などからして、「仇日感情」が無関係とは考えにくい。逆に日本では、中国で3カ月以内に日本人を狙った攻撃事件が2件発生したことで反中感情が高まり、ネットでは「断交」「中国人観光客の受け入れ禁止」などの言葉が次々に投稿された。

深セン市内で日本人男児殺害事件が発生したのは9月18日で、日本軍が1931年に東北地方を武力侵略した日でもあり、中国では一般的に「国恥日」と呼ばれている。中国では毎年この日に民衆を組織した活動が行われ、学校の生徒などが抗日記念館を見学する。遼寧省の14都市では午前9時18分に防空警報が鳴り、列車が停止し、車や船が警笛を鳴らす。中国ではメディアがSNSなどを通じて「国辱を忘れるな」と強調する。

中国政府が強調したいことは、「わが世代は自らが強くなった」ということだが、毎年この日には、日本を憎む言論が次々と発表される。中国で過去数十年間にわたって反日感情が時おり高まった。この仇日感情は大規模な抗議活動を招いたことがある。例えば、2012年に中国の多くの地域の人々が日系商店を襲ったり、日系車を壊したりした。ただしこれまで、個別の日本人を対象にした人身攻撃事件はあまり発生しなかった。むしろ、「日本を称賛している」と見なされた中国人芸能人がボイコットの対象になったり、屋外で和服を着用した中国人が拒絶されたり非難されるなどの例が多かった。

しかし最近、中国のSNSでは反日感情が強まり、3カ月内に日本人学童を襲撃する事件が2回発生した。今年6月には蘇州市内のスクールバスの停留場で、ナイフを持った中国人男性が日本人女性とその子供を襲い負傷させた。この事件では中国人女性が日本人を守ろうとして殺害された。

中国政府が日本の「福島原発処理水の海洋放出」を非難したことで反日感情が高揚

一部の分析によると、2つの事件は反日ポピュリズムが極端に混ざり込んで表出した強い警告であり、このポピュリズムが引き起こした危険な行為は、中国国内の治安を破壊し、中国のイメージを損ねている。また中国政府が続けている外資誘致の努力に影響を及ぼす可能性もあり、日本人襲撃事件の影響を無視することはできない。

日本および日本人への反感が高まった一つのきっかけが、日本側が23年に福島第一原発の処理廃水の海洋放出を始めたことを、中国政府が「太平洋を下水道にしている」と非難したことだった。

中国では日本人学校に石や卵が投げられ、ネット上では反日的な動画や画像が次々に投稿された。例えば広東省在住の女性がまだ箱を開けていない日本ブランドのエアコンを返品する様子を投稿したり、日本風の居酒屋の経営経営者が店内の壁に貼られていたアニメのポスターを引き裂いたり酒の瓶を割ったりして、日本風の店はやめて中国風の酒場に変える考えを披露したことだ。

中国政府は、一貫して法に基づいて中国にいる外国人の安全と合法的権益を保障していると主張する一方で、同時に日本側の原子力発電についての行為が、反日の風潮が高まる事態を招いたと主張した。

事件の数日前に、深センの日本語学校を非難する動画投稿

深センでの日本人男児襲撃事件の数日前には、深センの日本人学校を撮影して、現地警察に「中国からの追放」を呼びかける動画がSNSに投稿された。同様の動画はそれ以外にも多く投稿されている。多くの動画は中国の日本人学校がスパイを養成していると示唆しており、日本人学校を「新植民地」と呼び、日本の中国侵略に対する中国人の歴史の記憶と憎しみをかき立てることを意図している。政府あるいは共産党系のメディアは「一部の人が愛国を利用してアクセスを稼いでいる」と批判したが、反日感情を完全に抑制することはできなかった。

習近平国家主席と岸田文雄首相は23年11月に米国で会談した際に、両国が共通する利益を追求する「戦略的互恵関係」を再確認し、その後は両国の議員の交流が進められるなどで、日中関係は改善の兆しを見せていた。しかし深センでの日本人男児殺害事件は、中日関係に影を落とすと分析されている。

日本の外務省の岡野正敬次官は深センでの日本人男児襲撃事件を受け、呉江浩駐日本中国大使を外務省に呼び出し、「在中日本人の安全と安心を保障できなければ、日中関係の根本に影響を及ぼす」と強く指摘した。日本での対中感情が悪化すれば、日中の対話は進めにくい状況に戻り、両国間の懸案問題の解決も遠のくとされる。

日中両国には数多くの懸案で妥協点を見出す外交努力が必要

日中間に歴史を通じての恩讐が存在することは事実だ。また、第2次世界大戦から残された歴史問題のほかにも、釣魚島(日本側の呼称は尖閣諸島)の領有権紛争など多くの未解決問題がある。また、日米が同盟を強化して中国を包囲し、日本の政治要人が台湾関連に介入する意向を表明し、日本政府がアジア太平洋にNATOを招き入れようとしていることは、いずれも日中関係の緊張を高めている。8月に日本が初めて中国軍機の日本領空進入を確認し、最近になり中国海軍の空母の遼寧と駆逐艦2隻が日本の接続水域に初めて進入したことも、間違いなく両国の緊張高めている。

双方の数多くの懸案で妥協点を見出すためには、冷静に対話できる環境を作らねばならない。今回の悲劇が直接両国関係の悪化につながることを避けるために、両国政府は外交面で努力せねばならない。

日中双方は20日、福島第一原発での海洋排出問題について4つの共通認識に達した。主な内容は、日本側が海洋排出の重要な部分についての長期的な国際監視を手配し、中国を含む利害関係国が独立した海水標本の分析を実施することや、科学的証拠に基づいて関連措置の調整に着手し、規則に合致する日本水産物の輸入を徐々に再開することだ。中国側の海洋排出に断固反対する立場は変わっていないが、日本は中国をIAEAの枠組みの下で第三者監視国グループに加入させることに成功し、中国側は日本産水産物の輸入を徐々に再開することになった。

日中両国はアジアひいては世界の重要な経済国であり、両国関係の安定は地域の繁栄と発展に直接影響する。現状において、両国が関係の悪化を食い止め、回復傾向に乗せられる措置を取れるかどうかは各界が注目している。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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