BSよしもとの番組を見て考えた、現地の食文化を中国理解の入り口に

泉川友樹    2024年9月1日(日) 15時0分

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先日、知人から紹介されてBSよしもとの『巡って発見!ぶらり中国周遊紀 シーズン2』を視聴した。写真は『巡って発見!ぶらり中国周遊紀 シーズン2』。

先日、知人から紹介されてBSよしもとの『巡って発見!ぶらり中国周遊紀 シーズン2』を視聴した。吉本興業の芸人と中国メディアのアナウンサーが中国西南部に位置する雲南省の省都である昆明市を訪れ、花卉(かき)市場を巡ったりご当地グルメを堪能したりしたレポートの中からクイズを出題する内容で、ニュースではなかなか分からない中国のリアルな生活ぶりが伝わってきた。市場で勤める若い人気インフルエンサーがライブ配信で花をネット販売している様子からは中国のIT技術の発展ぶりがよく分かったし、マツタケやキヌガサダケ等を使ったキノコづくし鍋や「過橋米線」と呼ばれるビーフンを使った麵料理からは雲南省の豊かな食文化を垣間見ることができた。この数年はコロナ禍の影響で中国訪問がなかなか難しかったが、そのような中でも日中共同でこのような番組が制作され、立体的かつ等身大の中国を伝えているのは非常にありがたく、素晴らしいことだと思う。

私自身は初めて中国を訪れてから20年以上がたち、33ある1級行政区(省・自治区・直轄市・特別行政区)のうちマカオ以外はすべて訪問した。通算するともう100回以上は行っていると思うが、中国は訪れるたびに驚きと発見があり、いまだに飽きがこない。とにかく奥が深い。

例えば私も雲南省には何度も訪問しているが、雲南省の中だけでも文化や特色は地域によって多種多様だ。昆明市では私も滋味あふれる過橋米線もキノコ鍋を味わったが、プーアル茶の語源となっている普洱市では本場のプーアル茶のみならずプーアルコーヒーも楽しんだ。大理石の語源となっている大理市を訪問した時には現地の石材を使った素晴らしい工芸品を鑑賞したし、白族の住居にお邪魔しご当地料理をふるまっていただいたこともあった。さらに、ミャンマーと国境を接している瑞麗市では国境付近の貿易を活性化するために中国政府が通行や関税の支払いに便宜を図っていることを視察した。これらはどれも忘れ難い経験、思い出だし、私が中国を理解しようとする上での血となり、肉となっている。

日本人が中国に抱く一般的なイメージといえば『三国志』に代表されるような「長い歴史を持つ国」あるいは中国共産党の指導の下で統一的に国づくりを進め「急速な発展を遂げている政治・経済・軍事の大国」というものだろうか。そのような「画一的」な見方も一面の事実ではあるが、中国にはこれまで述べてきたような奥行きや懐の深さがあるのだから、ステレオタイプな見方で隣国を理解した気になるのは非常にもったいない。私はむしろ、広大な国土、独特な気候風土、多民族文化等を背景とした「地域性」や「多様性」が中国の最大の魅力だと思う。

日中には政治的にはさまざまな課題があっても、中華料理の素晴らしさに異論を唱える人はあまりいないだろうし、悠久の歴史に育まれた中国の文化は日本にとっても敬うべき「先祖」のような存在だ。ありがたいことに最近は東京でも本格的な中華料理、いわゆる「ガチ中華」を楽しめるところが増えてきており、過橋米線も日本にいながらにして味わうことができるが、現地で食べるのはまた格別。「日中友好のために!」などと肩に力の入ったことは考えず、現地の食文化に触れるという気軽なことを入り口として中国を理解しようとしてみてはいかがだろうか。

■筆者プロフィール:泉川友樹

1979年、沖縄県生まれ。2003年、沖縄国際大学卒業後、北京外国語大学に留学し中国語通訳を学ぶ。2006年、日中経済交流促進団体に就職。2018年、放送大学大学院修了。2020年、沖縄大学地域研究所特別研究員。2022年、沖縄国際大学沖縄経済環境研究所特別研究員。 中国語検定1級、旧HSK11級(高等A級)、全国版中国語通訳案内士

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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