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<習近平主席訪仏>マクロン大統領と会談、中仏関係強化と新冷戦抑止で一致―セルビア、ハンガリーとも「一帯一路」推進で合意へ

八牧浩行    2024年5月7日(火) 14時30分

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国賓としてフランス訪問中の習近平中国国家主席は6日、パリの大統領府でマクロン仏大統領と会談した。

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国賓としてフランス訪問中の習近平中国国家主席は6日、パリの大統領府でマクロン仏大統領と会談した。習主席のフランス訪問は5年ぶり。

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マクロン大統領は「国際情勢はこれまで以上にヨーロッパと中国の対話を必要としている。私たちは歴史の転換点に立っており、構造的な課題を克服する必要がある」と述べた。また公正なルールに基づいた経済関係の重要性を訴えた。

中仏両国は今年、国交樹立60年を迎えた。フランスは東西冷戦中の1964年に米国の反発を押し切って中国と国交を結んでおり、習氏は当時の判断について「中仏両国は冷戦の壁を突破した」と語り、フランスが伝統的に重視する独自外交を称賛した。

習氏は中仏関係について「近年、高いレベルの発展を保ち、航空、宇宙、原子力、食料、グリーンなどの分野における協力は新たな成果に絶えずつながっている」と強調。経済面での協力を通じて関係強化をさらに推進する方針を伝えた。


パリ五輪機に「戦闘停止」呼びかけ

一方、マクロン氏はウクライナへの侵攻を続けるロシアへの働きかけを中国に求め、習氏は今年夏に開催されるパリオリンピック、パラリンピックを機に「戦闘の停止を呼びかける」と応じた。

習主席は「両国は独立自主を堅持し、共に『新たな冷戦』を防ぎ、平等で秩序ある世界の多極化を推し進めるべきだ」と呼びかけ、フランスと協力関係を強めたい考えを示した。マクロン氏も賛同した。

習主席はウクライナや中東での紛争について「われわれは対岸の火事だとみているわけではなく、平和の実現に向けて一貫して積極的な役割を果たしてきた」と強調。「世界の紛争は交渉によってのみ解決できる」と応じた。マクロン大統領は「ロシアにいかなる武器も売却せず、軍事転用が可能な製品の輸出を厳格に管理するという中国の取り組みを歓迎する」と述べた。


平和の実現に向け積極的な役割を果たす

両首脳は会談後、共同記者発表に臨み、マクロン大統領は両国の関係について「世界の安定にとって有益な役割を果たすことができる」と指摘。「五輪休戦が、国際法を尊重した永続的な解決に取り組む機会になる」と発言。習氏は、「いま世界は平穏ではないが、責任ある大国として、中国はフランスと共にパリ五輪を契機に大会期間中の全世界での休戦を提案する」と述べた。習主席は世界の紛争停止に向けて尽力する方針を伝えた。


欧州委員長、EVを補助金で不当に支援と批判

これより先、マクロン大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長との3者会談に臨んだ。マクロン氏は習氏に対し「誰にとっても公平な」貿易ルールを要望したほか、ウクライナ侵略と中東情勢に関して「中国との連携が重要だ」と強調。中国が仲介の役割を果たすよう要請した。

マクロン氏はウクライナ侵略と中東情勢という「重大な危機」を巡り「中国との協調は絶対的に重要だ」と強調。フォンデアライエン氏はウクライナ侵略をやめさせるために「中国がロシアにあらゆる影響力を行使することを期待する」と述べた。

習氏は「中国は危機を引き起こした者ではなく、当事者でもないが、和平交渉促進のために力を尽くしている」と応えた。「中国は常に戦略的かつ長期的な観点からEUとの関係に取り組んでいる」と強調。「中国とEUの関係が互いに強化され、共に発展することが望まれている」と関係強化に意欲を示した。

フォンデアライエン氏は中国が自国の電気自動車(EV)を補助金で不当に支援していることについて批判したが、習氏は「中国の新エネルギー産業は世界の供給を豊かにし、インフレ圧力を緩和した」と主張。気候変動対策にも貢献していると説明し、「いわゆる中国の過剰生産能力問題というものは存在しない」と反論した。さらにEUに対し「中国への正しい認識を持ち、前向きな対中政策をつくるよう希望する。双方は安定したサプライチェーン(供給網)の協力関係を築くべきだ」と呼びかけた。

習氏は「中仏関係と中欧関係が共に発展するよう希望する」と述べ、「中国と欧州は世界の二つの重要な勢力として対話と協力を堅持し、戦略的意思疎通を深めるべきだ」と語った。

習氏は3月にオランダのルッテ首相、4月にドイツのショルツ首相とそれぞれ北京で会談。安全保障や先端技術、通商で対立が深まる米国に対抗するため、欧州との関係強化に動いてきた。

マクロン大統領は習氏を厚遇し、7日にはパリでの日程を終えた習主席夫妻を母方の故郷、南部ピレネー山脈に招待して歓待する予定。スペインと国境を接するピレネー山脈のトゥルマレ近隣はマクロン大統領が幼少期に祖母に会うためによく訪問し、「第2の故郷」と呼んでいる。ピレネー会談は昨年4月に中国を訪問したマクロン大統領のために習主席が用意した広州日程に対する答礼として準備された。

習氏は続いて友好国セルビアを訪れ、ブチッチ大統領と一帯一路などを協議。7日は1999年に米軍を主体とする北大西洋条約機構(NATO)軍が同国の首都ベオグラードの中国大使館を誤爆してから25年目にあたる。習氏は関連式典に出席する。

ハンガリーではオルバン首相らと会談。同国は経済を中心に中国との関係が深く、中国のEV大手、比亜迪BYD)が工場を新設する。オルバン氏はトランプ前米大統領とも良好な関係にある。

米国もブリンケン国務長官、イエレン財務長官、テスラトップのイーロン・マスク氏ら官民の要人が今春相次いで訪中しており、したたかな中国の外交攻勢が際立っている。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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