米国で中国人留学生が激減、政治状況以外に立ちはだかる真の原因とは

Record China    2024年1月29日(月) 8時0分

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中国メディアの三聯生活週刊はこのほど、米国に留学する中国人が激減したと紹介し、その原因を分析する記事を発表した。政治状況も関係しているが、さらに大きな「留学の夢」を打ち砕く要因があるという。

中国メディアの三聯生活週刊はこのほど、米国に留学する中国人が激減したと紹介し、その原因を分析する記事を発表した。記事は結論部分で「最も活力に満ちた若者が世界と交流しなくなれば、国全体もより閉鎖的になるだろう」と中国の今後に対する懸念を示した。なお、三聯生活週刊の記事は日本時間1月27日午後2時までに閲覧できない状態になり、ページを開こうとすると「削除された」と表示される。中国国外に拠点を置く留学情報華字サイトに転載された同じ記事は、閲覧可能な状態だった。以下はその主要部分だ。

米国での「留学生の最も多い出身国」は間もなくインドに

米国に渡った中国人留学生が最も多かった年は新型コロナウイルス感染症の流行が始まる前年の2019年で、人数は37万人に達し、米国が受け入れた外国人留学生の34%近くを占めた。しかし米国に渡った中国人留学生は4年連続で減少し、23年には29万人と、19年比で2割も落ち込んだ。

アメリカの大学

一方で、インドから米国に渡る留学生は急増して、23年は前年比35%増だった。現在は米国で学ぶ外国人留学生の出身国の比率で、中国人学生はインド人学生をわずか2ポイント上回っているだけだ。中国は長年にわたり「米国における留学生の出身国で最多の国」の座にあったが、遠からずその座をインドに譲り渡すことは必至の情勢だ。

中国の名門大学の清華大学が発表した卒業生の進路状況によると、海外(香港、マカオ、台湾を含む)の教育機関に進学した卒業生の割合は19年には15.3%だったが22年には7.1%に低下した。北京大学も同様で、14.8%から8.42%に低下した。両大学とも、ほぼ半減したことになる。

中国人留学生が激減した最大の理由は「政治状況」ではない

米国に渡る中国人学生の減少に政治状況が大きく関係していることは間違いない。20年には当時のトランプ米大統領が国家の安全保障を名目に特定の学生や学者に関連ビザの取得を禁止した。中国の大学10校以上が米国側の「ブラックリスト」に掲載され、卒業生などの米国留学が制限されるようになった。また、米国の大学では一部の「理工学系の敏感な専攻」について、中国人学生の入学に対して以前ほど開放的ではなくなった。

ただし、政治的な状況が留学に与える影響は限定的だ。圧倒的多数の中国人学生は今も、正常に米国への留学を申請することができる。また、前記の清華大学と北京大学は米国側のブラックリストには入っていないが、それでも米国に向かう卒業生は激減した。

中国人学生の留学の大きな「阻害要因」は費用の大幅上昇の可能性がある。米国をはじめとする海外の先進国の多くではここ数年、インフレが急速に進行しており、現地の一般人も日常の出費を負担することが困難になっている。まして中国人学生にとって、先進国での生活費はそれ以前から重い負担であり、しかも学費が上昇していることが追い討ちをかけている。

清華大学

米国留学の場合、学費に生活費を加えると、年間の支出は6万-10万ドル(約890万-1500万円)になる場合もあり、さらに過去2年間にわたり人民元の対米ドルレートが大幅に下落したことで、中国人にとっての負担は一層大きくなった。

中国国内の景気後退も留学生減少の大きな要因

一方で、中国国内では景気の低迷により、中流家庭はもちろん富裕層家庭の所得も減少している。また、現在は所得に影響が出ていないとしても、多くの家庭は支出について慎重になった。留学のような大出費を伴う選択は格別なぜいたくと考えられるようになり、若者の多くは留学の夢を断念せざるをえない状況だ。

かつては、子どもの留学のためには過大な負担も厭わなかった家庭が多かったが、今では、多くの一般家庭がそのような能力や勇気を失ってしまった可能性がある。その背景には、すでに海外で留学生活を始めた学生の中に、家庭の収入が減ったためにローンの返済ができなくなったり、実家からの仕送りが途絶えたために自らのアルバイトだけに頼って学業を終えたり、中には学業を中断して帰国せざるをえない学生も発生しているなどの、過酷な状況がある。

あえて留学しても見えてこない「将来の明るい生活」

また、海外で学位を取得した後に希望の仕事に順調に就くことができれば、多くの家庭は留学にかかる莫大な出費にも耐えることもするだろう。しかし、卒業後もよい仕事に就けないケースも増えていることが、留学の夢を打ち壊す「とどめ」になっている。

統計によれば、中国人の留学経験者の80%が最終的に帰国して就職することを選択している。また、この数年間は帰国して就職活動をする留学経験者の数が目立って増えている。留学経験者にとっても「就職戦線」は厳しくなった。さらに、中国の大学や大学院の卒業生も増加しており、就職難はかつてないほど厳しい状況だ。

河南省の就職説明会

国家統計局は先日、23年12月における16歳から24歳までの年齢層の失業率は14.9%、25歳から29歳までの年齢層では6.1%だったと発表した。留学を終え帰国した若者は、就職先についての「期待値」を引き下げざるをえなくなった。給与面でも希望額を引き下げ、さらに就職の競争が激烈な大都市での就職は諦めて、地方の中小都市での就職を狙う若者も増えた。

しかし、多くの学生にとって、海外留学がもたらすものはただの卒業証書ではない。国外で生活し、国外の教育機関で学んだ経験により、視野を大きく広げて人生経験を豊かにすることができる。金銭には換算できない「学習成果」だ。中国全体を考えれば、ますます多くの若者がより広い国際的視野を持つようになれば、国全体もますます開放的になり、そのことでひいては、自国に対する自信も持てるようになる。逆に、最も活力に満ちた年齢層である若者が世界と交流しなくなれば、国全体もより閉鎖的になるだろう。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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