中国で「風が吹けば桶屋」式現象、日本の処理水放出で海なし新疆の海産物が注目

Record China    2023年9月18日(月) 8時0分

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中国では、新疆ウイグル自治区産の海産物が大いに注目されるようになった。直接のきっかけは日本の福島第一原発で処理水の海洋放出だ。それにしても内陸奥地の新彊で、なぜ海産物が生産されているのか(写真参照)。

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中国ではインターネットで、新疆ウイグル自治区産の海産物が大いに注目される現象が発生した。日本の福島第一原発で処理水の海洋放出が始まったことで中国政府が日本産水産物の輸入を全面停止し、そうでなくても海産物への不安が広まったことが原因だ。それにしても、海に面しない新疆産の海産物の生産とは、どのようなことなのか。

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「問題ある土壌」は、海水の原料になる成分を含んでいる

海洋性の魚介類などを養殖するには、海水または塩分濃度などが海水と同様な水が必要だ。ところで、新疆をはじめとする中国内陸部には塩分やアルカリ分を多く含む土壌の地域が多い。そのような土地にはごく少数の耐塩性植物が生育できるだけで、他の草木は生育しない。したがって、農業にとっても大きな障害になる。

新疆ウイグル自治区には、広大な塩分やアルカリ分を含有する土壌の地域がある。しかし、土壌中に含まれる塩分やアルカリ分はもともと、地質時代の海が干上がったことで出現したものだ。そのため、微量元素を追加し、微生物の働きも借りることで、海洋性の魚介類を養殖するのに適した水を作ることに大きな困難はないという。

中国ではこれまで、塩分やアルカリ分を含む土壌に強い水稲の開発などが注目されてきた。しかし中国共産党は2017年の中央1号文章ですでに、「塩分やアルカリ分の多い低湿地での養殖を推進する」として、養殖業における土壌中の塩分などの活用に言及している。中国政府・農業部(現、農業農村部)も同年、塩分やアルカリ分を利用しての養殖業を積極的に発展させる方針を明らかにした。


豊富な雪解け水は冷水魚の養殖に好都合

乾燥地域が多い新彊だが、水資源は一般的に思われているよりも豊富だ。新疆には中国最長の内陸河川であるタリム川や、中国で唯一北極海に注ぐエルティシ川などが流れる。新疆の砂漠面積は43万平方キロで、牧草地の面積は51万平方キロ以上だが、水域面積も5500平方キロに達している。

新疆農業農村庁漁業監督処のトウ康処長(「トウ」は「登」におおざと)は「新疆の主な水源の一つは雪解け水だ。水質は澄んでおり、温度は低く、冷水魚の養殖に非常に適している」と説明した。

特に注目されている「新疆産の海産物」にはサーモンがある。同自治区イリ・カザフ自治州ニルカ県カラス郷にあるサーモン生産工場では、1日当たり最大50トンのサーモンを加工でき、今年は6000トンの生産目標を達成する見通しという。新疆では「人工海水」だけでなく、淡水養殖も盛んになりつつあり、オーストラリア原産の淡水ロブスター、南米のシロエビ、カニ、シベリアチョウザメ、ゴールデントラウトなどさまざまな魚介類が養殖されるようになった。

専門家「処理水は無毒」を信じられない人もいる

新疆の魚介類が最近になり大きな話題になった最大の原因は、日本が8月24日に福島原発の処理水の海洋放出を始めたことだ。香港メディアの香港01は、「これらの廃水が魚介類を食べる人々の健康に害を及ぼすことは今はないし、将来もないと言う専門家がいる」と、海洋放出については中立の立場を維持した上で「だれもがこの説を信じているわけではないことは明らか。日本に対して複雑な感情をもつ中国人大衆の場合には、とりわけそうだ」と指摘した。

中国大陸には大都市と沿海都市を中心に、約7万店以上の日本料理店がある。日本からの海産物の輸入が停止されたことは、これらの日本料理店の命運にとって大きな問題だ。そのため、新疆の魚介類が大衆とメディアの議論を引き起こしたことは容易に理解できる。

あるネットユーザーは、「これで日本の水産物に依存している中国企業に安心感を与えることができるだけでなく、わが国には市場の穴を埋める方法と能力があることを示した。この機会に新疆の魚介類を宣伝し、より多くの消費者に購入してもらえばよい」と表明した。


実効性は限定的だが「百利あって一害なし」も事実

ただし、別の指摘もある。ネットでは「新疆の魚介類の生産量は2倍になっても全国の生産量の1%にも満たない」「メディアはこれ以上、新疆の魚介類について騒ぎ立てるな。焼け石に水だ! 14億人の腹を満たすには全く足りない!」と言った書き込みが見られる。

新華社は2022年5月、「中国の水産物総生産量は1989年の1333万トンから、20年には6549万トンに増加し、年平均増加率は5.27%だった」と報じた。中国はすでに世界最大の水産物生産・消費国の一つだ。

香港01は、新疆の現在の水産物生産量は広東省や江蘇省などの沿海省とはまだ大きな差があるが、時がたてば、大きな力になる可能性はあると論評した。香港01はその背景には、中国の歴代指導者がいずれも、「食の確保」をとりわけ重視してきたことがあると指摘した。

香港01はさらに、「新疆で水産物産業が引き続き盛んに発展すれば、1人当たりの可処分所得が3万元(約60万円)に満たない現地住民にとって、『百利あって一害なし』であり、安心できる魚介類を食べたい中国人にとっては、さらに別の意味がある」として、新疆で養殖水産業が盛んになることにはさまざまな

意義があると評した。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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