ベトナム人は本当に怠け者なのか、中国メディアが現状に多角的メス

Record ASEAN    2023年6月4日(日) 10時0分

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ベトナムに進出する中国企業も多いが、「ベトナム人労働者は怠け者」という意見がよく出る。中国メディアが実情と分析を紹介する記事を掲載した。写真はベトナムの首都、ハノイで撮影。 ベトナム ハノイ

海外に進出する中国企業が増えている。相手国の労働コストが安価であることに目をつけて生産拠点を設けたり、相手国市場の購買力に期待するなどで、その「力学」は中国に進出してきた日本企業などの場合と違わない。隣国であるベトナムに進出する中国企業も多いが、「ベトナム人労働者は怠け者なので、賃金が安くても割に合わない」という意見がよく出る。中国メディアの環球網は3日付で、実情と分析を紹介する記事を掲載した。

現地の中国人経営者「ベトナム人は残業代を提示しても定刻に帰宅」

ベトナム人労働者の勤勉さを否定する中国人経営者は、確かに存在する。ベトナムで印刷工場を3カ所経営し、100人近いベトナム人を雇用する馮さんは「ベトナムの人件費は中国より低いが、生産性も低い」と吐き捨てるように言った。ベトナム人従業員の効率の悪さにいつもイライラしている。SNSに投稿されている「ベトナム人労働者は遅刻するし、残業代を払うと言っても終業時間になると帰ってしまう」は真実という。

ベトナムの専門家で海南熱帯海洋学院ASEAN研究院の古小松院長も、ベトナム人労働者は中国人労働者と比べて、規律を守らず、遅刻や早退が多く残業をしたがらないと述べている。

しかし、このような意見に反対する人もいる。ベトナムに14年間滞在して会社を経営している王立輝さんは、「若いベトナム人労働者の質は悪くない。(もともとの)仕事の能力はやや劣るが、学習能力は極めて高い」と述べた。王さんの会社はベトナム国内に180以上の店舗を展開しており、ベトナム人1110人を雇用している。中には会社幹部に抜擢したスタッフもいる。


王さんは、従業員をただ雇うだけでなく、従業員自身の成長や仕事で経験を積ませることにも注意する必要があると述べた。王さんの会社は新型コロナウイルス感染症の流行期にも解雇はせず、自宅に隔離された従業員にも給料の半額を支給した。現在はベトナムでも景気が低迷しているが、会社の5月の売上高は1月比で26%増加したという。

それでも労働市場には魅力、肝要なのは「やる気出す」仕組みづくり

最近ベトナムを訪れ、中国産業のベトナム移転に関する調査を行った北京大学国家発展研究院の范宝群研究員は、ベトナムの労働者が「怠け者」かどうかを論じるのではなく、ベトナムの若者の教育背景や価値観、キャリア傾向、人生の追求、消費への関心などを研究して理解し、ベトナム人従業員のための企業管理システムや従業員成長計画を創出して、仕事を愛し、企業に心から奉仕するという彼らの内発的な動機を活性化する必要があると論じた。

在ベトナム中国企業の責任者の多くは、ベトナムの労働市場は全体として活力があり魅力的と認めている。ベトナム全国の平均年齢は32.5歳で、人口の70%が労働力だ。成人識字率は約95%、労働力率は約70%というデータも出ている。いずれも中国の水準に近い数字だ。

一方で、4月末には人口が世界一になったとみられるインドでは、識字率が約73%で、総人口に占める労働人口は約52%だ。世界の主要経済国が10年ほど前からベトナムの労働力を極めて重視するようになった理由は、その量と質だ。

古院長は、ベトナム人は他の東南アジア諸国と比べて教育水準が高く、その結果として労働者の質も比較的高く、効率も比較的よいと指摘した。また、ベトナムと中国は文化が比較的近いので、中国企業の管理者がベトナム人従業員とコミュニケーションをとることは比較的容易という。さらに、ベトナムでは人件費が安いという状況も、長期にわたり続くとみられている。

「あくせくせずにのんびり楽に」は若い世代で大きく変化

中国人経営者がよく指摘するのは、「より多くの収入を得て、よりよい生活をしよう」という意欲が希薄なことだ。しかし、このような気質も、若い世代では変化しつつある。ベトナム人の所得水準は中国人よりもはるかに低いにもかかわらず、若者は飲食やファッションに金銭を投入することに熱心だ。またネット通販も普及しつつある。街のカフェやレストラン、商業施設ではさまざまな格好をしている若者を多く見かけるようになった。


マッキンゼーが2022年3月に発表したリポートによれば、ベトナムでは今後10年間で、新たに3600万人以上が1日に11ドル(2023年6月3時点の為替レートで約1540円、為替レートは以下同じ)以上を消費する、ベトナムの消費の主力層に追加される可能性がある。この消費の主力層は2000年にはベトナム人口の10%だったが、2022年時点で40%にまで拡大していたという。

ベトナムでは、1980年から2012年の間に生まれた「デジタル世代」が、2030年までに消費人口の約40%を占めると予想されている。急速なデジタル化も、ベトナムの若者の消費のあり方を変えつつある大きな原動力だ。ベトナム政府・産業商務省によると、ベトナムの電子商取引(EC)市場は22年に164億ドル(約2兆3000億)に達した。同年にオンラインで買い物をしたベトナム人は5700万人から6000万人で、1人当たりの支出は260-285ドル(約3万6400円-3万9900円)だったという。また、ベトナムにおける23年第1四半期(1-3月期)の電子商取引の売上高は前年同期比で22%増だったとの調査結果もある。

ただし最近の景気低迷は、ベトナムにおける消費の拡大にブレーキをかけている。ベトナムの製造業の経営環境は過去6カ月にわたり悪化しつづけた。ベトナム人の貯蓄意欲は高まり、使い道を裁量で決められる資金の30%を貯蓄に回すようになった。この比率は21年以降で、最も高い水準という。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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