中国のEVメーカーが東南アジアに進出、日本車の主導的立場を突き崩す可能性

亜洲週刊    2023年5月28日(日) 11時10分

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東南アジアへの中国などの電動自動車(EV)の進出が加速しており、日本の自動車メーカーが築いてきた同地域における主導的立場が突き崩される可能性が出てきた。写真は上海五菱汽車のAir EVなど。

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香港メディアの亜洲週刊はこのほど、中国などの電動自動車(EV)関連会社の東南アジアへの進出が加速しており、日本の自動車メーカーがエンジン車で築いてきた同地域における主導的立場が突き崩される可能性が出てきたと報じた。

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自動車産業チェーンが整ったタイに中国EVメーカーが進出

東南アジアでの2022年におけるEVの販売台数は約5万1000台で、中国からは合衆汽車やBYDはタイに投資をして日本企業と競争する状態になった。中国企業以外でも、テスラはインドネシアに工場を設立する見込みであり、韓国の電池メーカーも東南アジアへの進出を始めた。

合衆汽車は先にタイの自動車組立会社と提携して、24年からNETA Vモデルを現地生産する。合衆汽車はすでにタイ国内ショールームを開設しており、今後はNETA V以外のモデルを発売する計画もある。

タイは「東南アジアのデトロイト」とも形容され、22年には東南アジアの自動車生産台数の43%にあたる188万台の乗用車や商用車両が生産された。タイは自動車工業における川上から川下までの産業チェーンが完成しており。外国系自動車会社の工場が多く操業している。

タイでは長年にわたり、日系企業が従来型のエンジン車を製造販売してきた。しかし最近では、EVを生産する中国企業の進出が目立つ。過去2カ月の間に、合衆汽車以外の中国のEVメーカー3社がタイに進出した。上海汽車集団とタイのCPグループの合弁による上汽CP新エネルギー産業区の建設も先ごろ始まった。設立の目的は重要部品の現地生産で、25年ごろに操業を開始する見込みだ。20年にタイに進出した長城汽車も、同国でのEV生産能力を増強する計画だ。

また、20年にタイに進出して生産ラインを設けている長城汽車も、タイでの電動車生産能力を拡大する計画だ。カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ(CTMR)によると、タイは東南アジア最大のEV市場であり、域内のEV販売台数の58%がタイでの実績だ。2位のインドネシアは19%、3位のベトナムは16%だ。

上海五菱汽車のAir EV

インドネシアは豊富な人口に加えて電池原料のニッケル鉱の多さも魅力

東南アジアのもう一つの自動車生産・販売大国であるインドネシアも、EV関連企業の誘致に積極的だ。同国は豊富な労働力に加えて、EV用バッテリーの重要な原料であるニッケル鉱が多く産出することも強みだ。中国、韓国、米国のEV関連企業がインドネシアの強みに着目して工場設立を計画している。

EV用バッテリーメーカーとして世界的大手の中国の寧徳時代はインドネシア企業と提携し、最大約60億ドル(約8440億円)を投資して工場を建設する考えだ。ニッケル鉱採掘などの上流部門も手掛けるという。

韓国のLGエネルギーとヒョンデ自動車は、インドネシアにバッテリー工場を建設することで提携した。上海五菱汽車(Wuling、ウーリン)の初の海外生産拠点は17年にインドネシアで生産を開始した。生産されるAir EVはインドネシアで最も売れているEVになり、市場シェアは80%に達した。五菱汽車はこのほど、インドネシア政府と、同国での投資を拡大する新エネルギー事業に関する覚書を締結した。

インドネシア当局関係者は4月までに、米テスラもインドネシアに生産拠点を構える可能性が高いことを明らかにした。同国のジョコ大統領は22年10月に訪米した際にスペースX社に足を運ぶなどして、イーロン・マスク氏と2度にわたって面談した。テスラのインドネシアへの投資を得ることが、大きな目的だったとされる。

ジョコ大統領はテスラに対して、税関連やニッケル採掘権などのロイヤルティーを含む一連の優遇措置を提供すると申し入れたとされる。ジョコ大統領は、テスラが最終的にインドネシアでの工場建設を決定することを確信していると述べた。テスラがアジアに設置した生産拠点は今のところ中国の上海だけだが、インドネシア、タイ、マレーシアがテスラの工場誘致を目指している。

ベトナムではビンファスト社に注目、欧米へのEV輸出にも熱意

ASEAN自動車産業連合会によると、22年のASEAN7カ国(インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)における自動車販売台数は342万台だった。うち、エンジン車以外の新たな動力源を用いる自動車の販売台数が5万台を上回る程度であることは、東南アジアはEVなどにとって発展の余地が極めて大きいことを示している。

CTMRの調べによると、昨年東南アジアで最も売れた電気自動車5車種は、中国の五菱汽車のAir EV、ベトナムのビンファストのVF8とVF e34、韓国のヒョンデ自動車のIONIC 5、中国の長城汽車のOra Good Catで、テスラ車は5位以内に入らなかった。

メーカー中で最も目を引くのが、前出4社のうち唯一、2車種をランクインさせたビンファストだ。同社はベトナム最大の私有企業であるビングループの中で自動車部門を受け持っている。ビングループの創業者であるファム・ニャット・ブオン会長は1968年の生まれで、最初は鉱山技術者だったが、食品事業を手掛けて成功し、その他の事業にも進出してビングループをベトナム最大のコングロマリットに成長させた。ビングループとして東南アジアだけでなく、米国、カナダ、ドイツ、フランス、オランダなどにもビンファスト製自動車を輸出しする強い意志を持っているという。

中国のEVメーカーでは、BYDがベトナムで生産する計画を立てている。

上海五菱汽車のAir EV

EVで出遅れたマレーシアではテスラがネットワーク構築を計画

マレーシアでは、同国の自動車メーカーであるプロトンが先ごろ、創立40周年を迎えた。しかしマレーシアではEV関連事業の発展が遅い。17年に中国の吉利汽車が49.9%出資したことでプロトンの経営を主導することになり、最近になって「X90」を発売したが、「X90」はハイブリッド車であり、EVではない。

マレーシア市場は現在でもエンジン車が主流でり、モーターショーではエンジン車の方がEVより注目を集める。しかし一部の自動車メーカーは、すでにEVの将来性に着目して事業を進めている。マレーシアの自動車メーカーのベルマズ・オートは小鵬汽車、東風汽車、吉利汽車など多くの中国電気自動車メーカーと提携し、マレーシアにおける経営権について交渉を進めている。

マレーシア政府もEVの普及に冷淡であるわけではなく、テスラ車のマレーシア向け輸出を承認している。テスラ側はマレーシア現地法人を設置する計画で、体験センターやサービスセンター、「スーパー充電ステーション」のネットワークを構築する考えだ。

東南アジアの自動車市場はこれまで日系自動車メーカーが主導してきたが、日本の自動車メーカーによるEV事業は中韓のメーカーに後れを取った。EVが将来的に従来型のエンジン車に取って代わることで、東南アジアにおける中韓の自動車メーカーの影響力が次第強まり、日系メーカー取って代わる可能性が出てきた。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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