Record China 2023年4月17日(月) 11時0分
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鉄道建設に力を入れる中国だが、香港メディアの香港01は、鉄道建設にはプラス面もマイナス面もあると警鐘を鳴らす論説を発表した。日本で出現した状況からしっかり学ぶ「殷鑑遠からず」の精神が必要とした。
「殷鑑不遠(殷鑑遠からず)」という言葉がある。さまざまな失敗による殷の滅亡(紀元前1046年)を「遠い昔に起こった現在とは関係のない出来事」と考えるのではなく、滅亡の原因や過程を現在に通用する教訓とみなすべき、という主張だ。香港メディアの香港01は16日付で、中国で猛烈な勢いで続けられている鉄道建設について、かつての日本で新幹線など鉄道路線を盛んに建設したことで発生した諸現象を引き合いにして「殷鑑不遠」と論じる記事を発表した。
中国では改革開放が本格化した1980年代には「要致富,先修路」(豊かになるためには、まず道路を作れ)と盛んに言われるようになった。ところが2000年代に入ってしばらくすると、鉄道建設の遅れによる問題が大きくなった。そのため、中国は鉄道建設に大いに力を入れるようになった。その成果として、鉄道の総延長は世界第2位、高速鉄道の総延長は世界第1という「鉄道大国」になることができた。鉄道路線網は僻地(へきち)にも張り巡らされるようになった。
2016年から20年までを対象期間とする第13次5カ年計画とその次の第14次5カ年計画では、貧困の撲滅と農村の振興が重要な取り組みとされた。そのための重要な手段の一つとされたのが、鉄道および高速鉄道の建設だ。中央政府・鉄道部の統計によれば、過去10年間で中国の130カ所の県が「鉄道が通っていない」という状態に終止符を打った。僻地及び貧困地区における鉄道建設のために、4兆3000億元(23年4月16日時点の為替レートで約84兆円)が投じられた。
しかし、鉄道建設は本当に貧困の撲滅と農村の振興に奏功するのか。この問いに対する解答を得るためのヒントとなるのが、中国の東の隣国である日本の状況だ。
日本は中国よりよほど早く、1957年から鉄道建設に大いに力を入れた。東海道新幹線の着工は59年だった。64年に東海道新幹線が開通した後も、日本は新幹線の建設を進めた。日本では70年代末には、全国を覆い各重点都市を結ぶ鉄道交通ネットワークが完成した。
日本の鉄道ネットワークの完備は工業の勃興を促進した。日本は敗戦に伴い、資源に乏しい東アジアの遅れた国になった。しかし工業の勃興で経済大国になった。世界の名声を得た日本の重要な工業地帯は、鉄道に依拠して形成されたものだった。
しかし日本では鉄道網の整備が、別の状況ももたらした。まず、農村部の没落だ。日本の国内輸送は歴史を通じて、主に水運に頼っていた。そのために、村や町は水路に沿って分布していた。鉄道網の全面的な整備は、多くの村や町が交通の流れから阻害されることを意味した。そのことで、農村からの労働力の流出がさらに加速した。
日本政府は70年代には「村おこし」政策に力を入れるようになった。しかし農村工業化運動も村づくり運動も、労働力の流出や農業の疲弊、農村の高齢化などの問題を解決することができなかった。2016年時点で、日本での農業従事人口の全人口に占める割合はわずか1.5%で、その半数近くが70歳以上の高齢者という状況になった。日本では農業の衰退とともに、食糧自給率も低下しつづけることになった。
日本における鉄道建設は、別の問題も引き起こした。鉄道関連の巨大な債務問題だ。1964年には300億円だった赤字は、79年には8218億円に達した。年間の増加率は24.69%だった。日本国有鉄道(国鉄)の長期負債額も、64年の8313億円から79年には11兆1672億円にまで増加した。年間増加率は18.91%だ。日本政府は国鉄の民営化改革を進めることになった。
しかしその後も、土地の売却制限やバブル景気の悪影響で、新規の債務が発生し、債務残高は増加した。結局は政府が残った債務を肩代わりすることになった。政府はかなりの程度、沿海地区の経済ベルトがもたらす税収を期待しているが、解決するためにはさらに時間と労力を要する。先行きは不透明だ。
中国でもすでに、農村部の空洞化や高齢化、就農人口の不足などの問題が発生している。中国は農村部振興が経済建設の中心に据えられ、繰り返し強調されてきた。中国では日本と異なり、農村部や貧困地区での鉄道建設に力が入れられてきたので、鉄道建設が農村振興にもたらす積極な役割は無視できないが、それでも諸状況を総合的に考える必要がある。
鉄道建設でまず重要なことは、他のインフラ建設と組み合わせて、総合的に進めることだ。特に、地方の特色ある産業の育成は極めて重要だ。産業が十分に育っておらず、鉄道という便利な輸送方法が出現したのでは、人口流出と農村の空洞化、農業の疲弊が加速するだけだ。
鉄道建設はさらに、地方の交通インフラの実情と実際の必要性と結びつけて考えねばならない。長期に渡って水運や道路輸送が機能してきた地域にあっての鉄道建設や駅の開設には、慎重の上にも慎重を期さねばならない。鉄道の開通は、従来の輸送手段体系を直撃する。そのことで地域の町や村が不可逆的な破壊を被る場合もある。
また、鉄道建設のコストと長期的な債務負担を直視せねばならない。つまり、国民経済全体における鉄道建設の費用と効果を考えねばならない。重要なことは、建設によって生じた債務が効果的に解消されるかどうかであり、国民経済に深刻な負担にならないかどうかだ。鉄道の総延長が長くなることを単純によしとするのではなく、総合的な観点から考えねばならない。
鉄道を建設すれば、経済によい影響を与えるかもしれない。しかし巨額の投資による負の側面も発生する。鉄道建設がもたらすプラス面よりもマイナス面がずっと大きいということも、十分にありえる。われわれはこれらについて、一衣帯水の隣国である日本の経験から学ばねばならない。まさに「殷鑑遠からず」ということだ。(翻訳・編集/如月隼人)
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