農民による手作り動画「三国志」、ネット民が仰天し喜んだ“ハチャメチャ”な手法とは―中国

Record China    2022年10月30日(日) 21時0分

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中国では、安徽省の農村に住む若者が制作・ネット配信する「動画・ドラマ三国志」が受けている。これまで考えられなかった“ハチャメチャ”な手法を大胆に駆使しているからという。

中国メディアの極目新聞によると、安徽省北部の中崗鎮新筑村に住む若者が制作・配信する「動画・ドラマ三国志」が、ネットユーザーに受けている。これまで考えられなかった“ハチャメチャ”な手法を大胆に駆使しているからという。

動画制作の中心人物は鮑小光さんだ。中国でよく使われる言葉の「90後」の世代に属するというから、年齢は年齢は20代から30代にかけてだ。

「三国志」は人気が特に高い歴史物語で、中国でもテレビの連続ドラマ版や映画版が、繰り返し制作されてきた。出演者も豪華なら、莫大な予算を投じたセット、歴史を感じさせる登場人物の重厚な語り口まで、作品のどの要素についても「ベスト」を追求することが当たり前だった。

しかし鮑さん版の「三国志」はまるで違う。例えば一騎打ちのシーンだ。それぞれの武将がまたがるのは馬ではなくて、自転車や電動バイク。手に持つ武器は槍や青龍刀ではなくて、農具のくわ、さらには肥やり用の長い柄のついたひしゃくだ。よろいのように見えなくもないものを身につけてはいるが、どうみても「雰囲気だけは出るように作ってみました」といったシロモノだ。

特に話題になった城攻めのシーンでは、鮑さんの伯父の家の入口を城門として使った。楼閣にはわらのたばを使った。4、5日をかけて組み上げたという。多くのネットユーザーの「語り草」になったのは、攻防を繰り広げる兵士らが手にしていた盾が、すべて大きな鍋のふただったことだ。鮑さんによると、最初は木の板で作ろうと思ったが間に合わなかった。そこで、村人から鍋のふたを借りた。村内のほとんど全ての家から鍋のふたをかき集めたという。

主要な人物には鮑さんの友人や親せきを配した。高齢の登場人物の一人は、鮑さんの向かいの家に住む、70歳近い男性に演じてもらった。ところが彼は、普通話(標準中国語)が苦手だ。結局動画では、全編を通じて「安徽省なまり」のせりふが飛び交うことになった。

プロの作った「三国志」ではありえない制作の手法が、ネットではかえって大受けした。多くのネットユーザーが「土の味の三国志」などと評するようになった。鮑さんによると、1話当たりの制作費用は200-300元ぐらいだ。日本円にして数千円ということになる。出演者のギャラは、基本的にゼロ。時おり「ほんの気持ち」の謝礼を渡したり、食事を御馳走するぐらいという。

鮑さんは、初級中学(日本の中学校に相当)卒業の学歴しかない。15年前には、村のほとんどの若者と同様に村を出て街に行って働き始めた。レストランや工場での梱包作業員など、仕事を次々に替えた。ただ、鮑さんは子どものころから映画やドラマが大好きで、特にお気に入りの作品は「三国志」だった。

街で出稼ぎ生活をしていた時に、ドラマ制作スタッフ養成クラスがあることを知り、自分も「その業界」に入ってみようかと思ったこともあった。しかし、その「養成クラス」は詐欺と分かった。もう少しのところでだまされるところだったという。

鮑さんは結局、数年前に実家に戻って内装の仕事を始めた。そのうちに、ショートムービーの投稿サイトが注目されるようになった。そこで鮑さんは意を決して、自分も動画を撮影して投稿することにした。他の投稿者は多くの場合、自分の生活の周辺のことを題材にしていた。鮑さんは、他人とは少し違う動画を撮りたいと考えて、三国志の連続ドラマを作ることにした。

鮑さんは、それまでに制作されてきたドラマ版「三国志」を改めて考えてみた。すると、時代感を表す手法にも、表面的な場合があることに気づいた。例えば、現代中国語ならば「是(シー、=はい)」と言うところを、古風な「諾(ヌオ、=はい)」に置き換えているだけなどだ。そこで、自分が作る「三国志」では、現代の生活感を思い切って取り入れてしまえば、もっと「伝わるもの」があると考えた。

鮑さんは、昔から「三国志」が好きだったといっても、特に知識があったわけではない。そこで、動画を作成するようになってからは、いろいろと資料を調べた。そのおかげで、物語の歴史的背景も少しずつ理解できるようになってきた。

脚本は鮑さんが書いている。友人によると、よい脚本を作ろうと思うあまりに、自宅に閉じこもってしまうこともある。そんな時には、鮑さんの思考の回路を断ち切ってしまうことが怖くて、電話もできないという。作品は1カ月に2作か3作の割合で発表している。最初のころは、「制作の速度が速すぎて質が落ちるのではないか」と感じていたが、現在は初期の作品と最近の作品を比較すると、作品の質が確実に向上していることを実感できるので、今後もさらに作品の質を向上させたいという。

鮑さんの両親は最初、息子の動画づくりに反対していた。現金収入にならないからだ。しかしその後、動画配信で少しずつ収益が出るようになってきた。内装の仕事と動画制作の収入は、同じぐらいになったという。といっても、内装の仕事を減らしたので、収入全体が増えたわけではない。鮑さんは、「自分のしたいことができているので、とても楽しいです」と説明した。

また、鮑さんの「三国志」づくりにともなって、静かだった村に活気が出てきた。村の幹部の一人は、「彼自身は達成感を得た。村人は楽しんでいる。今では、よそからわざわざ見学にくる人もいる」と、地元に“元気”が出てきたことを喜んでいる。将来は、鮑さんの動画配信が村の農産物のアピールにつながり、村の発展が加速することを期待しているという。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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