2022年8月11日、中国メディアの観察者網は、小説やゲーム、マンガをドラマ化した「IPドラマ」産業について「貧しくなった一方で、ある意味豊かになった」とする文章を掲載した。以下はその概要。

業界内で一般的に称されている「IPドラマ」とは、ざっくり言えば小説、ゲーム、マンガをリメークしたドラマだ。現在、連続ドラマ市場は非常にビジネス化しており、ネット配信ドラマにしろ、テレビドラマにしろ、その「第一属性」は商品であり、芸術性ではない。投資家やプロデューサーがドラマを作る際、第一に考えるのはどうやってコストを回収するか、その商業的価値を最大限発揮させるかということだ。

IPドラマのコンセプトが大きく注目されるようになったのは2013〜14年に、青春系の作品が大ヒットしたころだ。そして17〜19年にはIPドラマのピークを迎え、多くの小説、マンガ、ゲームの作者がドラマ版の版権を売り出した。価格は安いもので数十万元（数百万円）、高いものでは1000万元（約2億円）にも上った。しかし当時のIPドラマ業界はやりたい放題で、IPの購入に対するルールもなく、詐欺まがいの行為が横行していた。業界内で最も多くの金銭が乱れ飛んだこの2年、意味がわからないドラマ、駄作が大量発生し、そうでないものを見つけるのが難しい状況だった。

19年になると、IPドラマ業界の熱は冷め始めた。数多くの規制政策が打ち出されたことで、金銭目的でやって来た者たちが業界を去り、業界にお金が流れなくなったのだ。これにより業界はどんどん金銭的に貧しくなっていったが、業界の環境は好転し始めた。IPドラマブームが去り、業界内でドラマ化する素材の選択が理性的に行われるようになった。内容をよく知らない人が版権を購入し、売り上げを増やすためだけにむやみやたらに内容をいじくり、出来上がった作品はオリジナル作品のファンからも嫌われる駄作、という状況が減った。

以前に比べて版権を売ることはかなり難しくなった。しかしそのおかげで業界は冷静さを取り戻し、作品に対して真剣に取り組むようになった。投機目的で業界に入った者がすでにいなくなり、夢を追いかけるためにやってきた創作者が残った。これによりわれわれは、創作の本質に立ち戻ることができたのだ。（翻訳・編集/川尻）