中国新聞社 2022年7月1日(金) 18時40分
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二酸化炭素を海洋あるいは水辺の生物に吸収させて地球温暖化を抑制する「ブルーカーボン」に注目が集まっている。写真は海南省海口市内の東寨港マングローブ自然保護区。
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気候変動の抑制策として、温室効果ガスの排出を減少させる取り組みが行われている。さらにもう一つ、大気中に存在する温室効果ガス―主に二酸化炭素―を大気中から除去する取り組みも進められている。陸上ならばその一つは、森林面積を増やしたり砂漠を緑化する「グリーンカーボン」と呼ばれる方法だ。植物は自らの体を作る際に空気中の二酸化炭素を吸収することを利用した方法だ。海洋でも生物に二酸化炭素を吸収させる方法を使うことができる。これをブルーカーボンという。自らが研究者である海南省環境科学院のケイ巧院長(「ケイ」は「形」の「彡」をおおざとに替える)はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、中国におけるブルーカーボンの取り組みについて説明した。以下はケイ院長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
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■海洋とその周辺の生態を利用して炭素を補足、中国そして海南省にはできることが多い
国連環境計画(UNEP)、食糧農業機関(FAO)、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)は2009年、共同で「ブルーカーボンシンク:健康な海洋の炭素固定作用の評価報告書」を発表し、初めてブルーカーボンの概念、すなわち海洋生物により炭素を捕獲することを提唱した。広い意味でブルーカーボンとは、海洋に関連する生物を利用して大気中の二酸化炭素を吸収し固定するプロセスや活動、メカニズムを指す。
ブルーカーボンはグリーンカーボンなどの方法と比べ、炭素固定量が多く、貯蔵時間が長いなどの特徴がある。森林や草原などの陸上生態系による炭素貯蔵の期間は長くても数十年しかないが、ブルーカーボンならば数百年、さらには数千年に達する場合がある。中国もこのブルーカーボンに積極的に取り組んでいる。
中国が権利を主張する海域は約300万平方キロで、大陸の海岸線は1万8000キロだ。さらに670万ヘクタール大陸部海岸および海岸湿地帯がある。マングローブ林、海草床、塩沼は国際的に三大浜海ブルーカーボン生態系と認められているが、中国に存在するこれらの生態系は極めて広大であり、単位面積当たりの炭素固定の潜在力はかなり大きい。
海南省は中国の海洋大省だ。海域が広いだけでなく、生態系は豊富だ。例えばサンゴ礁の分布面積は全国合計の約98%で、海藻の群生面積は64%だ。またマングローブ林の面積は全国の約14%で、状態も比較的よい。つまり海南省の海洋生態系は炭素貯蔵能力が高い。海南省は約200万平方キロメートルの海域面積を所管しており、海洋微生物の炭素固定総量は非常に大きい。
■中国人科学者が初めて提唱した漁業カーボンシンク、さらに必要なデータの取得
中国人科学者が初めて提唱してブルーカーボンの手法もある。その一つは漁業カーボンシンク(炭素貯蔵庫)で、漁業活動を通じて水生生物による水中の二酸化炭素の吸収を促すものだ。海洋の生態改善、漁業の経営モデルの転換なども含まれる。中国は2022年、福建省連江市で初の漁業炭素シンク取引を実施した。
サンゴ礁が形成される際にも二酸化炭素は固定される。われわれがイメージするサンゴは、海中で集団として生息するある種の小さな動物が体を入れるために形成する骨格だ。この骨格の主成分は海水中のミネラルであるカルシウムと海水中の二酸化炭素が結合した物質である炭酸カルシウムだ。サンゴが形成される際には海水中の二酸化炭素が吸収される。海水中の二酸化炭素濃度が減少すれば、それだけ空気中の二酸化炭素が海水中に溶ける。つまり大気中の二酸化炭素を減らす効果が発生する。
一口にブルーカーボンと言っても、具体的にはさまざまな分野がある。また、さまざまな事業を進めていくためには、ブルーカーボン取引制度やブルーカーボン投融資基準など、社会的な仕組みの構築も必要だ。
話を科学的な取り組みに戻せば、これまでブルーカーボンのメカニズムや効果について、さまざまな研究が行われてきた。しかしこれまでの研究は対象地域が米大陸や東南アジアなどの熱帯地方に集中していた。
海南省は熱帯地域と亜熱帯地域の両方にまたがっている。これまでの研究対象地域とは植物の成長状況などが異なるため、海外での研究成果に基づくデータををそのまま適用して評価したのでは、誤差が生じる。したがって、海南省内に特化した基礎的調査や関連実験が必要だ。
■さまざまな取り組みや研究が必要、海南省がブルーカーボンの中心になる可能性も
ブルーカーボンという発想を、地球温暖化の抑止に役立てるためには、やらねばならないことがいくつかある。まず、海洋生態環境の保護を強化することだ。既存のマングローブ林や海藻の群生などなどの生態系の保護を強化することで、炭素吸収能力を強化せねばならない。そして、養殖池などを湿原に戻すことも必要だ。海草の群生もダメージを受けている場合があるので、生態修復などのプロジェクトを展開して、ブルーカーボン生態系の面積を拡大する。沿岸海域の汚染防止などのプロジェクトを実施することで、海洋生態環境の質を高め、海洋の炭素固定能力を高めることが望まれる。
ブルーカーボンについては、今後も理論研究が必要だ。海水中の微生物の働きも研究する必要がある。中国としては、海洋関連で大気中の二酸化炭素を減らすために何が活用でき、どのように気候変動対策の体系に組み込んでいくかを模索せねばならない。
漁業カーボンシンクについても、どの程度の期待が持てるかの研究がさらに必要だ。もちろん、海洋に関連して炭素を補足する技術を研究し、「期待値」を向上させていかねばならない。
海南省は現在、中国独自の特徴を持つ自由貿易港を建設中だ。自由貿易港の建設は、ブルーカーボンの発展のための人材や技術、資金などの調達に結びつく。例えば、中国内外からブルーカーボン研究の専門家や研究者を誘致することが考えられる。自由貿易港のビザなし入国政策を利用すれば、国際的な専門家や組織のオフライン交流・検討に大きな便宜を提供でき、ブルーカーボン国際交流プラットフォームの構築に役立つはずだ。(構成 / 如月隼人)
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