<日本人が見た中国>クリミア半島に見る、尖閣諸島の未来

Record China    2014年4月10日(木) 21時4分

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先月、ロシアがウクライナのクリミア半島を自国に併合した事件に、尖閣諸島の未来を重ね合わせた日本人も多いのではないだろうか。資料写真。

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先月、ロシアウクライナのクリミア半島を自国に併合した事件に、尖閣諸島の未来を重ね合わせた日本人も多いのではないだろうか。

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大国が「力による現状の変更」により小国の領土の一部を併合。これに対し国際社会は「国際法違反だ」と声は上げるが、大国との関係悪化を恐れて、なんら有効な対抗策を打ち出すこともできずに時が過ぎてゆき、やがて併合は既成事実化する…。

日本はウクライナのような小国ではない、との反論があるかもしれないが、米証券大手・ゴールドマンサックスの予想によれば、2050年の中国の国内総生産(GDP)は日本の約10倍。現在のロシアとウクライナのGDPの差は約15倍なので、そこまでの差はないが、それでも国際社会に対する影響力は雲泥の差。今回のように、大国の暴挙に対して国際社会はただ手をこまねいて見ているだけ、という事態が発生する可能性は否めない。大国の力の前には、国際法など何の役にも立たないのだ。

では、日本はどうすればよいのか。私は国益を考えた場合、日本は今すぐにでも国際司法裁判所に提訴すべきだと思う。

日本は一貫して「尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題は存在しない」という立場をとっている。今までの経緯からすれば、そうした立場をとることは当たり前のことではあるのだが、そうした立場をとっている間にも日本と中国との国力の差はどんどん開き、日本の正義が通らなくなるリスクがどんどん増している。いわゆる「棚上げ」は、国力を増し続けている中国を利することにしかならないのは、今回のクリミア半島の例を見ても明らかである。

それよりも国力がまだ拮抗している今のうちに、国際司法裁判所に提訴を行い、中国国民、日本国民のみならず、全世界の人たちの目の前で事実関係を一つ一つ明らかにしていき、最終的に尖閣諸島がどちらの国のものなのか、白黒はっきりさせるべきだと思う。

中国に住んでいて残念に思うのは、中国国民も日本国民も、多くの人がお互い全く違う事実に基づいて尖閣諸島を自国の領土だと固く信じており、相手の国を「とんでもない国だ」と思っていることである。日中間の国民感情の悪化も、こうした誤解がその根底にあることが少なくないと思う。

その中でも特に私がくやしく思うのは、多くの中国の人たちから「日本はずるい国だ」と思われていることだ。「尖閣諸島が自国の領土だと言うのなら、堂々と話し合ってそれを証明すればいいじゃないか。なのに『領土問題など存在しない』などと言って話し合いに応じないのは、何かやましいことがあるからだ。実効支配を続けてなし崩し的に自国の領土にしてしまおうというのはずるい考えだ」というのが彼らの主張だ。日本ほど策を弄するのが苦手でずるくない国はないと私は思うのだが、中国の人たちの目にはそう映ってしまうのだ。日本が国際司法裁判所に提訴しても、中国政府は100%応じないだろうと言われているが、それでも日本が正々堂々とした態度を取ることによって攻守は逆転する。基づいている事実が異なるだけであって、正義を愛する心は日本国民も中国国民も同じだ。

中国政府が提訴に応じなくても、中国国民は尖閣諸島を自国の領土と信じて疑っていないので、「中国は当然、受けて立つべきだ」という世論が巻き起こるであろう。現在の中国政府と中国国民の関係を考えた場合、そうした世論の突き上げによって、中国政府が日本の提訴に応じざるを得なくなる可能性は低くないと私は思う。

そうなった場合、困るのは中国政府だ。なぜなら、国際司法裁判所の裁判の過程で中国政府が今まで国民に隠してきた「不都合な事実」が次々と明らかになるからだ。そして、そうした「不都合な事実」によって裁判に負けた場合、国民の怒りの矛先が中国共産党一党独裁体制に向かうことも十分に考えられる。そういった意味では、中国政府にとってのベストシナリオは、このまま日本が「棚上げ」を続けている間に圧倒的な国力を蓄え、時が来たら一気に力でねじ伏せ、「不都合な事実」は永遠に国民の目に触れさせない、というものではないだろうか。

両国民は異なる事実に基づいて、お互いを「とんでもない国だ」と思っているわけだから、「棚上げ」を続ける限り日中間の国民感情も悪化したままであろう。そうした状態は中国政府にとっては都合が良いかもしれないが、中国国民と日本国民にとっては不幸なことだ。そう言った意味でも、今こそ国際司法裁判所提訴によって事実関係をはっきりさせ、両国民の誤解を解き、前向きな新しい日中関係を築いていくべきときなのではないか、と私は思う。

柳田 洋

斉明峻徳機電設備(大連)有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。2014年から現職。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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