Record China 2014年3月13日(木) 17時50分
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13日午前、中国の全人代閉幕後、李克強首相が記者会見を行った。この会見で周永康に関する質問を許すか否か、そして許した場合に、李克強がどのように回答するか、世界中のチャイナ・ウォッチャーが固唾を呑んで見守っていた。写真は中国の人民大会堂。
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2014年3月13日午前、中国の全国人民代表大会(全人代)閉幕後、李克強首相が記者会見を行った。この会見で周永康に関する質問を許すか否か、そして許した場合に、李克強がどのように回答するか、世界中のチャイナ・ウォッチャーが固唾を呑んで見守っていた。
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しかし、3月2日に開かれた全国政治協商会議の報道官による記者会見のときと違い、「周永康」という人名はストレートには出なかった。
理由は二つある。
一つは全人代開幕直前の3月1日、雲南省昆明市で起きた無差別殺傷事件の犯人が、すべては明らかになっておらず、中国当局側が新疆ウィグル自治区の分離独立派によるテロ事件と片づけたままになっていることがあるだろう。これに関しては本当にウィグル独立派によるテロなのか疑問視する見方が少なくない。少数民族が多く、どちらかと言えば弱者が多い昆明にテロを仕掛けて、いかなる独立声明を表現し得たのかという見方だ。昆明といえば反射的に連想するのは薄熙来の父、薄一波の「軍事拠点」であった第14軍団だろう。
まるでそれを認めたかのように中共中央紀律検査委員会は3月9日、雲南省の沈培平副省長を拘束し取り調べ(双規)に入った。3月9日といえば、全人代開催中の真っただ中だ。それでも江沢民の息が掛かっていた沈培平を拘束したことは、関係者を驚かせた。
おまけに3月5日の李克強が政府活動報告を行った際の昆明無差別殺傷事件に関する部分では「新疆分離独立派」という言葉を使わなかったということも注目に値する。
もう一つの理由は、3月8日に消息不明となったマレーシア航空の旅客機のゆくえが、未だにつかめないままになっていることだ。
いずれも中国人民の生命に関わる深刻な問題であるにもかかわらず、中央テレビ局CCTVのトップニュースは、もっぱら開催中の全人代を扱ってきた。
習近平は一連の「してはならない」条例の中で、「(中央テレビ局における)報道は、情報の重要性によって決めるべきで、形どおりの党指導層の報道ばかりをしてはならない」という趣旨のことを盛り込んでいる。
しかし実際は、多くの人命の安否に関する情報よりも、政治問題ばかりを優先したとして、人民は大きな不満を抱いてきた。
このような状況の中で、さらに周永康失脚に関する正式の公布などをしたら、人心の安定に動揺を来し、党と政府への不満はさらに増すだろうことを計算したためだと思う。
もとより、腐敗官僚をどこまで逮捕していくのか、人民は習近平の決意のほどに関心を寄せていた。習近平政権は常々「腐敗を撲滅しなければ、党が滅び、国が滅ぶ」とか「いかなる高い官位にあった者でも、党紀律に違反すれば容赦はしない」あるいは「法の前で人は平等だ」と叫んできた。だから周永康がかつて中共中央政治局常務委員であったとしても「手は緩めない」という事実を人民に見せなければならない。
この板挟みが、全人代閉幕後の李克強による記者会見に如実に表れている。
◆みんな、分かっている
実は記者会見場の記者からの3番目の質問に、中国共産党の機関紙である「人民日報」の記者の質問を許している。
彼は反腐敗運動に関して質問した。
そして李克強は「官位の高低に関わらず、党規約を犯した者はすべて厳しく裁く」「法律は人の前に平等である」「今後も一貫して反腐敗を貫徹していく」という言葉を用いて回答した。これは明らかに「周永康といえども手は緩めない」ということを示唆している。
この含意に留めて、人心掌握に苦慮している姿が印象的だった。
全国政治協商会議のスポークスマン・呂新華のように「あなた、分かっていますよね」という「迂闊な」言葉はさすがに使わなかったものの、「みんな、分かっている」のである。
(<遠藤誉が斬る>第23回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。
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