<遠藤誉が斬る>「新公民運動」女性活動家、獄中からの手紙――1通のメール

Record China    2014年1月27日(月) 20時58分

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27日未明、私のメールボックスに「新公民運動」女性活動家・侯欣(こう・きん)氏(45歳)からの手紙が届いた。書いた日付は2014年1月23日。差出人は中国の民主活動家である。写真は「新公民運動」。

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中国の憲法を根拠に人権擁護などを訴える「新公民運動」の中心的人物として知られ、公共秩序騒乱罪に問われた人権活動家、許志永氏(40)に対する判決公判が26日、北京市第一中級人民法院(地裁)で開かれ、懲役4年の実刑判決が言い渡された。関係者によると、「自分が裁かれる法的根拠はない」と主張している許氏だが、ほかの新公民運動の仲間の裁判結果をみてから「上訴するかどうかを判断する」としているという。

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弁護士で大学講師でもあった許氏は、2012年から13年にかけて、出稼ぎ労働者の子供に対する教育の機会均等や政府高官の資産公開を求める「新公民運動」をインターネットで展開した。時には仲間と街頭で横断幕を掲げてビラをまいたりしたことがあったが、それが公共秩序騒乱罪にあたるとして、昨年7月に拘束された。

2014年1月27日未明の1時43分、私のメールボックスに「新公民運動」女性活動家・侯欣(こう・きん)氏(45歳)からの手紙が届いた。書いた日付は2014年1月23日。差出人は中国の民主活動家であり、いつも情報を送ってくれている。中国語で約1500文字。日本語に訳すと長くなるが、どうか広く世界の万民に知らせてくれという懇願があったので、一部だけ省略してその要望に応えることとする。

侯欣氏は投獄された後、心臓発作を起こし入院したこともあり、それでも自分が自己の良心に背き、無知なまま無駄に生きるくらいなら、死んだ方がましだと決意しているという。

手紙の最後に侯欣氏は『数十年前、こんにちの執政党は反腐敗を掲げて民主共和国を建国した。言論の自由を掲げて国民党を倒した。しかしあれから60年経った今、高みにおられるお歴々の方々、どうか革命の初心を思い出してほしい。あのとき国民に約束したことを実現してほしい!』と呼び掛けている。

◆「新公民運動」女性活動家・侯欣からの手紙

今日私はここで公判を受けることになっている。これまでの11カ月間、私はこれまで想像もしなかった経験をしてきた。私は自問自答を繰り返している。「私は本当に罪を犯したのだろうか」と。

そう、たしかに私は自分の家族に対して申し訳なかったと思っている。一人の娘として、また一人の妻として私は自分の職務を十分には果たせなかった。 

「西単331」行動において、私は確かに事前に公安の許可を得ていなかった(筆者注:「西単311」とは、2013年3月31日、北京市西単で、袁冬・張宝成・馬新立・侯欣の4名が横断幕を掲げるなどして「資産公開」を要求した行動)。しかし、私は無罪だと言いたい。

公安も検察も、そして裁判所も、私に何度も「素直に罪を認めろ」と迫ってきた。私の家族も友達も、「罪を認めた方が早いのではないか」と私を諭した。罪を認めた方が私には有利だということを私は知っている。

しかし私たちのこの国がもし、「官員(政府官僚と党幹部)が資産公開するという基本的な職責を実行することを要求する」のが罪になるのだとしたら、私たちのこの時代は、あまりに不条理な時代ではないだろうか。のうのうと暮らしている高級官僚であれ、日々の暮らしに奔走している庶民であれ、私たちはきっと歴史の恥辱の柱に刻まれ、百年後も千年後までも、後世の笑い者となるだろう。

私はたしかに恐れている。牢獄に入ってから二度も病に倒れた身として、二度と生きてこの牢獄から出ることはできないのではないかと恐れている。それでも私は、自分が自己の良心に背き、無知なまま無駄に生きるくらいなら、死んだ方がましなような日々を送るより、死を選ぼうと思う。

4千年以上の文明の歴史を有し、アジア一の民主共和国を建立したはずの民主共和国、私が深く愛する中国は、いったい、どこまで(文明的に)落ちぶれれば気が済むのか?

習(近平)総書記は、腐敗が執政党(中国共産党)の存亡に関わることを自覚してはいる。

それならなぜ全人民の力を結集させ人民の力を借りようとしないのか、「憲法第三十五条」が保証している「言論、集会、結社、出版の自由」を公民が行使することを認めないのか?執政党を監督し、すべてを変革し、後世に申し開きできる状況を作ろうとしないのか?

公安検察は私と許志永を同罪にしようとしている。街頭で「官員の資産公開要求」をしたのは「西単331」行動の、一回限りだ。しかもこのときは、周りにいて写真を撮っただけで、私自身は横断幕を掲げてはいない。しかし私はそれ故に冤罪だとは言わない。私は喜んで、この行動を栄誉と受け止める。

数十年前、こんにちの執政党は反腐敗を掲げて民主共和国を建国した。言論の自由を掲げて国民党を倒した。しかしあれから60年経った今、高みにおられるお歴々の方々、どうか革命の初心を思い出してほしい。あのとき国民に約束したことを実現してほしい!

 多くの人が「なんで、あなたはこういうことをしているのか」と私に聞く。

 たしかに、私は既に45歳になり、他の多くの人と比べると過度の不公平や過度の迫害を受けてきたわけではない。しかし私たち一人一人はみな、21世紀に生きている公民だ。もし自分の利益が侵された時にのみ抗議の声を発するのだとすれば、それは一匹の豚に等しいのではないのか?

 

建国から65年が過ぎようとしている。正々堂々と公民でいることは、決して過ぎた望みではないはずだ。私はこの国を愛している。私がやっている全ては、この国への、そして我が同胞への捨てがたい愛に基づいている。

ただし愛国の最高の姿は、「政府を監督し、執政党を監督すること」であって、決して「礼賛の歌を歌いあげ、迎合すること」ではない。裁判所がどのような判決を私に出そうと、私は自分のやるべきことをやったに過ぎない。私はその結果を甘んじて受けとめよう。

「自分の観点を表現しただけで被告席に立たなければならない」というのが、中国の公民にとって、どうか今回が最後であることを切望してやまない。       

2014年1 月23日

(<遠藤誉が斬る>第17回)

遠藤誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』など多数。

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