Record China 2020年7月1日(水) 18時40分
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シリーズの第1弾として『素筆珠山』をご紹介しよう。「陶磁器の街」の景徳鎮の過去から現在までを紹介する1冊だ。
「中国発のこの1冊」シリーズの第1弾として『素筆珠山』をご紹介しよう。日本でもよく知られる「陶磁器の街」の景徳鎮を紹介する1冊だ。どのような歴史的経緯をたどって現在に至ったのか。どのような姿勢で作品作りに取り組んできたのか。陶工が成し遂げた「偉業」と現代に伝えられる「息吹き」とは……。本書をひもとけば、歴史ある景徳鎮の街をつぶさに歩いて回る気分にも浸れるはずだ。以下、版元の許諾を得て、本書の一部の日本語訳を掲載する。
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景徳鎮は世界的な陶磁器の都だ。この街に行けば、どの場所からも「龍」の姿を目にすることになる。市街中心部の珠山の頂上に「龍珠閣」という建物があるのだ。龍珠閣は1922年までに荒れ果ててしまっていたが、1949年に宿泊施設として利用されるようになった。そして1987年には明代の建築を模した建物として生まれ変わった。現在の正式名称は「景徳鎮官窯博物館」だ。
龍珠閣で陳列されている器は、いずれも石膏を用いて破片を修復したものだ。官窯で制作される磁器は皇室専用であり、品質管理が厳格だった。わずかな瑕疵があっても、打ち砕かれる運命が待っている。膨大な資源があった古い時代の中国にとって、このような方式は皇室の豪華さと威厳の象徴だった。
しかしこの方式は同時に、景徳鎮の人々にとって、たゆむことなく完全さを追い求める審美の習慣を育む要因になった。現在に至っても、窯を開いて取り出したばかりの作品を一つひとつ点検し、少しでも問題があればただちに打ち砕いてしまう職人の姿を見ることができる。だが、不完全な美を受け入れないということは、巨大な浪費と制約に直面することでもある。
デザイナーである私の友人は、不完全であるとして砕かれた器を低価格で販売することにした。砕かれた器の日用品としての価値を掘り起こしたわけだ。この種の方法は、浪費を減少させるとして、多くの人の賛同を得た。
龍珠閣で陳列されている官窯で制作された「正統青花龍紋大缸」は景徳鎮の地下にあった。このような「青花龍紋大缸」の破片は、まるで山のように存在する。「明史」の記載によれば、当時の皇宮では防火のために日常的に、このような「龍紋大缸」に水を入れて配置していた。
そのために、景徳鎮の珠山には「龍紋大缸」を専門に制作する官窯が32カ所あり、後には徐々に減らされて16カ所になった。「龍紋大缸」の製造が困難であることは言うまでもない。あまりにも巨大であるため造形が困難であり、その後の作業でも変形や彩色の変化など、制御不能な要因は実に多い。最終的な成功率は5%前後だ。今に残されている「龍紋大缸」にも、真に完全無欠と言えるものはほとんどない。
現存する「龍紋大缸」は多くの場合、博物館で陳列されている。ガラス越しに見ることはできるが、陶磁器には茶葉と似た面があり、実際に手で触れることで初めて、その微妙さを体得できる。しかし、実際に手で触れることは博物館の規則で禁止されている。そこで一人のコレクターが、何年もかけて「龍紋大缸」の破片を収集し、長い時間をかけてつなぎ合わせて修復することで、完璧な「正統青花龍紋缸」を作り上げた。
彼は2018年に、修復が完成した「正統青花龍紋缸」を、5月18日の国際博物館の日を選んで景徳鎮中国陶磁博物館に寄贈した。寄贈にあたっての唯一の要求は、この「正統青花龍紋缸」の陳列ではガラス壁を用いずに、見学者が触れることで表面の質感やつなぎ合わせた部分の感触を確認できるようにすることだった。
【DATA】
書名:『素筆珠山』(江蘇鳳凰美術出版社 2020年2月)
著者:劉[女朱]● (●はさんずいに瑩)/ 挿絵:宿利群
プロフィール
・劉[女朱]●:雑誌「三聯生活週刊」のコラムニストとして活躍。茶文化など関連する著作や活動も多い。
・宿利群:北京市で1961年2月に生まれる。一族は遼寧省瀋陽の出身。環境芸術デザインなどを手掛ける。清華大学が設立した北京清尚建築設計研究院(清華工美)で高級エンジニアを務める一方、その他の芸術活動に取り組んでいる。(翻訳・編集/如月隼人)
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