<日本人が見た中国>解雇した社員の逆恨み!顧客データ全部消され事件

Record China    2014年1月8日(水) 7時40分

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「総経理、顧客データが全部消されてます!」―社員にそう報告されて全身から血の気が引いたのは、解雇した男性社員の最終出勤日、「昼過ぎから彼の姿が見えないなぁ」と思っていた矢先のことだった。

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「総経理(社長)、顧客データが全部消されてます!」―社員にそう報告されて全身から血の気が引いたのは、解雇した男性社員の最終出勤日、「昼過ぎから彼の姿が見えないなぁ」と思っていた矢先のことだった。

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解雇理由は「あまりにも仕事ができないから」。しかし、解雇通告のときには「もっとキミに適した仕事があると思うよ」とプライドを傷つけないように説明したつもりだった。しかし、解雇されたこと自体がプライドをいたく傷つけてしまったようで、最終日、彼は報復として会社の顧客データを全て消して逃げた。当然、自宅も引き払われており、携帯電話も通じない。

こんなことが起こるとは夢にも思っていなかったので、顧客データのバックアップは取っていなかったし、全社員がアクセスできるようになっていた。今から考えれば脇が甘すぎたのだが、消されてしまったものは仕方がない、また一から作り直しだ、と私は半ば諦めていた。

しかし、そこで諦めなかったのが、会社の共同経営者の劉さんだ。彼女は翌日から仕事そっちのけで、逃げた彼を見つけるための「捜査」を始めた。彼の友人関係、前の会社などなど、考えられる全てのところに電話をかけ、情報を集めていった。

そして、1週間後、劉さんは彼の生まれ故郷の河南省に、入院中の母親がいることを発見、病院に電話をして母親に「お宅のお子さんが大変なことをしてくれた。彼と連絡がつかないので警察に捜査を依頼しなくてはならない。このままだと彼は前科者になってしまう」という話をした。

すると翌日、全く連絡がつかなかった彼が当社に出頭、泣きながら劉さんと私に謝った。そして私たちは彼を「もうこんなことしちゃダメだよ」と諭して帰してやった。

彼が帰った後、劉さんは私に「彼に謝ってもらってもデータは復元できません。でも、今回の事件の一部始終は他の社員が全て見ています。会社に対してこういうことをするとどうなるか、ということが、みんなよくわかったんじゃないでしょうか」と話した。私は劉さんの経営者としての資質に感心するとともに、この人だけは敵に回したくないな、と思った。

人に始まり人に終わる会社経営。会社の外側の敵と戦うのと違って、社員は一緒に働く仲間であるので無防備になりがちで、その分、牙を剥かれたときの被害は物理的にも心理的にも大きくなる。

特に、中国ではまだ大学進学率が30%前後と低く、いまだに大卒=エリートという意識を持っており、仕事がそれほどできないのにプライドだけが異常に高い大卒ホワイトカラーも少なくない。そんな人たちのプライドを傷つけずに、能力を発揮してもらうには、歩合給や能力給の比率を高くすることが有効であると思われる。しかし、どうしても解雇せざるを得ない場合には、逆恨みされても会社に被害が及ばないように、それなりの防備を固める必要があるように思う。

●柳田洋

永豊有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。現在は中国での会社経営経験を生かし、中国に積極展開しようとしている日本企業の社員を対象に、講演、助言などのサポート活動を行う。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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