Record China 2013年12月31日(火) 8時55分
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北京では「中国の夢」などと書かれた政治スローガンが目立っている。北京・王府井の書店では習近平主席の演説集のキャンペーンで特設コーナーができていた。
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今年(2013年)に入って、2度ほど北京に行ってきた。今年夏と秋の2回だ。印象深いのが夏の北京で、中国で問題になっている微少粒子状物質(PM2.5)の洗礼を受けたことだ。4日ほど北京に滞在したが、最終日には喉がいがらっぽくなって、風邪を引いてしまった。しかし、翌日、日本に帰ったら、喉の痛みは一晩で消えて、風邪もすぐに治ってしまった。PM2.5の健康に与える有害性を直に経験した。(文&写真:相馬勝)
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とはいえ、4日間の滞在中、1日はカラリと晴れたので、天安門広場や北京随一の繁華街・王府井などを歩き回った。気温は30度前後だが、湿度が60%程度で日本同様、蒸し暑い。ただ、大陸性気候のせいか、日陰に入ると結構涼しく、汗が出てくると木陰で涼んでいた。そこで気づいたのは、市街地に政治スローガンが増えたことだ。
「中国の夢を実現しよう」「中華民族の偉大なる復興」「改革開放は素晴らしい、生活は蜜より甘い」―などで、習近平国家主席が日ごろから叫んでいるスローガンが主だ。
中国では最大級の書店である王府井書店にも行ってきたが、このところ習近平主席の演説がまとめられ、入り口の特設コーナーで大々的に宣伝、販売されていた。これ
も政治的運動の一環だろう。
習氏は演説で、政治問題では毛沢東主席、経済では改革・開放路線を導入した?トウ小平氏の言葉を引用することが多い。
習氏自身の言葉で最も有名なのが「蠅だろうが、虎だろうが、ともに退治すべき」との言葉だ。今年1月、党員の不正監視機関である党規律検査委員会の全体会議で
語った。このあとに「指導幹部の規律違反・違法案件を断固として調べて処分し、民衆の回りで起こっている不正の風と腐敗問題をしっかり解決すべきだ」と続く。習氏
の腐敗撲滅にかける断固とした決意が伝わってくるようだ。
反腐敗問題では元重慶市トップの薄熙来・元政治局員が裁判で、無期懲役という重い判決が下された。また、薄熙来と気脈を通じていたといわれる元政治局常務委員の
周永康氏も身柄を拘束され、近く、正式に罪状が発表されるとも伝えられる。一説には周氏が横領したのは1000億元(約1兆6000億円)というとてつもない額で、裁判になれば死刑に相応する重い判決が予想される。そうでもしなければ、民衆の不満は収まらないだろう。
ただ、李鵬元首相ら保守的な元老から「党の最高幹部である政治局常務委員経験者が刑事被告人になれば、党の威信は丸つぶれだけに、内部の処分だけで、穏便に済ま
せるべきだ」との声も出ているとの報道もあり、習主席は難しい舵取りを迫られている。
さらに、難しいのは経済問題で、下降気味の経済をどのようにして建て直すか、頭の痛いところだろう。
習近平体制が発足してから、北京市内でスローガンが増えたのも、政治・経済運営の難しさを示すものといえそうだ。習氏にとって、来年が正念場となるのは間違いない。
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。
著書に「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)など多数。
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