人民網日本語版 2020年2月12日(水) 12時50分
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業界ウォッチャーは、「マスク不足にはなっているが、日本社会にはマスクをめぐる激しいパニック状態に陥っていない」と指摘した。
日本メディアがこのほど紹介した一般社団法人日本衛生材料工業連合会のデータによると、日本国内の家庭用マスクは10億枚ほどのストックがあったが、ここ1カ月ほどですでに売り切れてしまった。しかし業界ウォッチャーは、「マスク不足にはなっているが、日本社会にはマスクをめぐる激しいパニック状態に陥っていない」と指摘した。(文:深海星)
日本社会の冷静さは、小さなマスクの中にも現れており、自然災害にたびたび見舞われてきた歴史の中で、マスクは実にさまざまなことを映し出してきた。普段は周りと「距離」を置くためのものであり、マナーと自律性を示す「日常」品だが、今のような時には国境を越えた「連帯」の象徴になる。中国から日本を見た時、中国人をより感動させるのは、おそらく災害に対する日本人の「危機意識」だ。明日何が起こるかわからないので、今日のうちにしっかり準備をしておこうと考え、マスク1枚から準備を始めるのだ。
■目に見える「日常」
多くの日本人にとって、小さなマスクは今や社会生活を送る上で欠かせないものになっている。地下鉄の中、レストランやホテルの中などさまざまな場面で、マスクは大きな存在感を放っており、毎年春の日本人を悩ませる「花粉の季節」になるとなおさらだ。日本は名実ともに「マスク大国」だ。同連合会がまとめた統計をみると、2018年に日本全国で生産されたマスクは約55億枚で、このうち家庭用は約43億枚だった。この1年間、コンサルティング会社の富士経済の試算によれば、マスクという一見大して目を引かない小さな商品に、日本人は358億円あまりをつぎ込んだという。外からみると、特に欧米人の目からみると、マスクをつけた日本社会のムードは、なんとも不思議なものにみえる。実は日本のマスクの歴史は古く、最初に登場したのは明治時代初期のことだ。当時のマスクは真鍮のメッシュでできており、防塵対策が主な用途だった。しかし歴史を振り返ると、疾病との戦いが日本列島を巻き込むマスクブームを起こした主な原因だ。
1918年にスペイン風邪が世界的に猛威を振るうと、日本でも2300万人以上が感染し、死者は40万人を超えたといわれている。この痛ましい出来事が日本にマスクの流行をもたらした。評論によると、この出来事は、国の発展とは単なる工業化や近代化を意味するだけではなく、国民の認識の深いレベルでの転換もその中に含まれるということを日本国民に教えた。その後、大規模な伝染病が起こるたびに、日本ではマスクの販売量が急増して過去最高をたびたび更新した。
■「備えあれば憂いなし」は一種の義務
マスク不足に直面しながら、日本の企業、地方自治体、各種機関の多くが自分たちの災害用備蓄物資だったマスクを中国に寄付した。
このことと同じく印象深いのは、寄付されたマスクがわずか数日で集められたということだ。市場の小売業者から調達したものもあるが、企業や自治体の災害用備蓄物資の方も多い。日本社会のマスクをめぐる姿勢は、日本人の「自分のことは自分でしっかりやり、できるだけ他人に迷惑をかけない」という責任の意識と関係があるかもしれない。マスクをつけるというごく当たり前のことには、災害に直面した時には誰もが自分の身は自分で守らなければならないという危機に対する態度が反映されている。より重要なことは、準備をするのは平時ということだ。最悪のケースを想定し、着実に準備しておけば、備えあれば憂いなしとなる。災害への対応を日常の中に落とし込むことで、人々の自信はより高まると考えられる。こうした社会のムードの中、憂いがなくなるように備えることが徐々に全国民の義務になっていった。茨城県中部にある水戸市は最近、中国の重慶市にマスク5万枚を寄付した。日本メディアが伝えたところでは、この5万枚は同市が普段から備蓄している災害用物資のマスク15万枚の一部だという。ちなみに水戸市の常住人口は27万人だ。
このケースから日本の地方都市のマスク備蓄の1人あたり平均枚数をうかがうことができる。地方自治体の備蓄に民間の備蓄も加えると、この数字は実際にはもっと大きくなるとみられる。実際、インフルエンザや花粉症の季節には、公共衛生の観点からの予防意識と日本国民の自律性が、徐々に日本社会の共通認識に変わっていく。長い歴史の中、マスクは「疾病予防の用品」から「日用品」へと徐々に転換していった。
■1人1人の役割を重視
マスクだけではない。日本では防災グッズの準備と防災訓練が社会における全国民的課題になっている。地震や津波などの災害は日本人にとって珍しいものではない。外部の人々に深い印象を与えるのは、往々にして日本人が災害時にみせる秩序の感覚だ。この秩序の感覚にはそれなりの根拠がある。専門家の指摘によれば、「人々の感覚という角度からみると、公共衛生に脅威を与える重大事件はいつも『突然やって来る』ようだが、救急救命管理という角度からみると、災害に対する日常的な管理は日常の中の当たり前のことでなければならない」という。
■日本の防災意識
防災意識は、企業の選択の上にも反映されている。政府の緊急時管理態勢だけでなく、日本の民間企業はこれまでずっと防災や緊急時対応で重要な役割を担ってきた。日本の大手食品メーカーにとっては、日常的に食べている食品をどのようにして非常食にバージョンアップさせるかが、ここ数年の新たな業務の重点となっている。アナリストは、「『非常食ブーム』は人々の防災意識の向上と関係がある」と指摘した。日本のダイヤモンド・オンラインがネットで行った調査によると、日本のネットユーザーの半数以上が、「非常食を買って不測の事態に備えるつもり」と回答した。モノの準備だけでなく、災害の記憶を風化させないことも、日本が今直面する「危機意識」をめぐる課題だ。
■日本の企業・学校は防災訓練を定期的に実施
これまで災害を体験したことがない多くの「傍観者」にとって、被災者の遭遇は自分が永遠に実感することも体験することもできない「向こう側」の出来事であり、「こちら側」にいる人々の間では記憶が風化しやすい。東日本大震災が起きた時、日本の批評家・東浩紀氏は、「災害の記憶を風化させてはならない。災害の記憶は一種の遺産であり、重要な現実的価値をもっている。あの痛みを記憶し続けることで、人々に安全な状況の中でも危険を忘れないよう注意を促すことができる。一人一人が努力し、自分の安全に対して責任を負わなければ、災害はある日突然やって来て大きな被害をもたらす」との見方を示した。今、中国は新型コロナウイルスの感染による肺炎がもたらした挑戦に直面している。お隣の国・日本で生まれたこうした物語は、人々を感動させるだけでなく、私たちの姿を映し出す鏡にもなってくれる。(提供/人民網日本語版・編集/KN)
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