人民網日本語版 2019年6月5日(水) 17時20分
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3日、「ユニクロで服を買い占める」光景を大勢の人がSNSで目撃した。この買い占め劇を引き起こしたのは、ユニクロが売り出した、米国のアーティストのカウズとコラボレーションしたTシャツだ。
3日、「ユニクロで服を買い占める」光景を大勢の人がSNSで目撃した。この買い占め劇を引き起こしたのは、ユニクロが売り出した、米国のアーティストのカウズとコラボレーションしたTシャツだ。銭江晩報が伝えた。
人気の靴を買うために並ぶ、ファストファッションブランドと高級ブランドの有名デザイナーとのダブルネーム商品を争って手に入れるというのはよく耳にする。しかし今回のユニクロ買い占め劇の背後にいるカウズは、多くの人にとってあまりなじみのない名前だ。
■カウズって誰?
2カ月ほど前、カウズの作品が1億香港ドル(約14億円)で落札されたという。そんなカウズだが、ユニクロとのコラボは今回が初めてではない。
今回のコラボシリーズでは、カウズがここ数年打ち出しているストリートアート作品が取り入れられており、発売からそれほどたっていない「コンパニオンシリーズ」のピンクBFFとブルーBFFもある。また、今回がユニクロとの最後のコラボになるという。
カウズの「バッテンをした目、大きな耳」のキャラクターが、コラボを出せば大人気となったのはなぜだろうか。
4月1日、カウズの2005年の作品「ザ・カウズ・アルバム」が、香港でのオークションで1億1600万香港ドル(約16億円)で落札された。オークション前の予想価格は600万香港ドル(約8400万円)だった。
この作品は英国のビートルズが1967年に出したアルバムのジャケットにインスピレーションを得たもので、オリジナルのキャラクター・キンプソンがちりばめられ、ビートルズとキンプソンが融合して1平方メートルの画面を形作る。
多くのアーティストは亡くなってから評判が上がり作品に破格の値段がつくようになるが、カウズはまだ45歳ながら創作のピークを迎えており、今回の落札価格が何よりもその実力を証明している。
■ニューヨークの「謎の落書きアーティスト」からファッション界の新たな寵児へ
米ニュージャージー州出身のストリートアーティストのカウズは、本名をブライアン・ドネリーといい、12歳の頃から落書きアートに興味をもっていた。
学校に上がると、両親は毎年、何回も教科書を買い換えなければならなかった。というのも、どの教科書も落書きでいっぱいで、空を飛ぶペガサスなど空想の世界が広がっていたからだ。
96年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業すると、アニメ会社でしばらく働いたが、働き始めてすぐに月曜日から土曜日まで、朝9時から夜9時まで働く機械的で無味乾燥な生活はまったく性に合っていないと思い、会社を辞めた。
会社を辞めると、楽しいことを探しに出かけ、よく路上の大型広告看板をみつけては、夜になって人々が寝静まった頃に落書きをしに行った。「当時は高速道路の側らに座り込んで、自分が落書きして変身した大型広告看板を眺めていた。一日で一番楽しい時間だった」という。
ある日のこと、カウズは毎日広告看板によじ登って落書きするより、都市の中にある電話ボックスやバス停のポスターの方が、落書きしやすいし、より親しみやすいことに気がついた。
それからカウズは「創作のルール」を決めて、夜になると街の中心部に張られているポスターをこっそり持ち帰り、落書きをし終わると元のところに張り直すことにした。
落書きの翌日には、大勢の人が道ばたでカウズの作品を鑑賞した。作品と一緒に記念撮影するためにわざわざ訪れる人も出てきた。こうしてカウズは当時のニューヨークで有名な「謎の落書きアーティスト」になった。
大手ファッションブランドは初めは頭を痛めていた。落書きされたポスターをすぐに張り替えなければならないからだ。清掃係は歯ぎしりして、「落書きした張本人を見つけたら、顔に色を塗りたくってやりたい」と憤っていた。
しかし目端の利いたブランドが徐々に商機を見いだすようになり、ディーゼルやカルバンクラインなどがカウズに提携を持ちかけ、ブランドに活力を与えてほしいと考えるようになった。
こうしてカウズはストリートアーティストから、ブランドやファッション界に注目される芸術家になり、米国、英国、フランスの各地で個展を開くようになった。長期的なコラボを展開するファッションブランドもどんどん増えていった。
■カウズのデザイン展はチケットが入手困難
トレンドを別にしても、カウズの作品は人々に強烈な印象を与える。
カウズの作品には繰り返し描かれるイメージがよく登場し、たくさんの色彩が入り乱れ、モチーフの多くは世界的に有名な漫画やアニメのキャラクターだ。ザ・シンプソンズ、スポンジ・ボブ、スヌーピーなどが多く登場する。
創作手法の点では、カウズは有名なキャラクターを再構築するのを好み、わかりやすいポップアートのテイストが作品とビジネスを結びつきやすくする。注文が細かいことで有名なヒップホップ歌手のカニエ・ウェスト(中国のファンは「カニエ爺さん」と呼ぶ)でさえ、大金をはたいてカウズにアルバムジャケットのデザインを依頼したくらいだ。
かつてカウズが落書きしたポスターを張り替えていた掃除係も、カウズのブレイクで一もうけしている。10年頃、オークション市場に出すと1枚あたり数万ドルで売れたという。
その後たまたまチャンスがあり、カウズは招待を受けて日本を旅行し、東京で人気ブランドの関係者と知り合いになった。そのうちの1人がカウズにフィギュアのデザインを依頼し、こうしてカウズ初の3次元作品が登場した。
このフィギュアはミッキーマウスの体に骸骨の頭が乗っかったようなミニモンスター風で、両目はカウズのシンボルといえるバッテンになっている。名前は「コンパニオン」でカウズの代表的作品になった。
その後、カウズは自身のハウスブランド「オリジナルフェイク」を設立し、トレンド街道を駆け抜けていった。ここ数年は、カウズとのコラボを競うブランドが地球何周分も走り回っているという。オリジナルフェイクとアベイシングエイプのコラボパーカーは一時は8000元(約12万8000円)の値がついた。
しかしカウズを真に頂上へと押し上げたのは、なんといってもコンパニオンをオリジナルとするフィギュアたちだ。
15年5月、カウズは高さ7メートルのコンパニオンの大型フィギュアを上海に持ち込み、淮海路の時代広場の真ん中に展示した。これは中国初のカウズのデザイン展でもあった。17年にも上海余徳耀美術館でアート展「カウズ:終わりが始まるところ」を開催。週末はチケットがまったく手に入らない盛況だった。
ここ数年、カウズは「小さな巨人」フィギュアをいろいろな場所で展示することに力を入れている。今年3月には37メートルのコンパニオンを香港のビクトリア湾に浮かべた。カウズの友人によると、次は60メートルを超える作品を考えているという。
今回のユニクロとの最後のコラボが発売早々に人気に火がついたのは、カウズ自身の知名度はもとより、中国が世界で最初に発売されたエリアで、本家の日本より3日も早かったこととも関係がある。また、このTシャツはカウズのすべての作品の中で最も値段が安いということとも関係があるかもしれない。(提供/人民網日本語版・編集/KS)
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