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<コラム>北の核・ミサイル開発のこれまでの流れ

木口 政樹    2019年5月22日(水) 22時20分

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KBSの番組の一つ「南北の窓」という放送で放映された内容を参考に北朝鮮のこれまでのミサイル開発、核開発についてレジュメ的にまとめてみたい。資料写真。

今回はKBSの番組の一つ「南北の窓」という放送で放映された内容を参考に北朝鮮のこれまでのミサイル開発、核開発についてレジュメ的にまとめてみたい。一度こうやってまとめておけば、後々見返したりしていろいろとご参考になるはず。

米との交渉が膠着状態に陥るなか、北朝鮮が5月4日と9日にまたまたミサイルをぶっ放した。韓国と米国政府の公式発表が遅れ、発射されたミサイルの種類や発射の意図に関しても意見が入り乱れている。

過去を振り返ってみると、北朝鮮は節目ごとにミサイル発射を強行し局面打開を図ってきた感がある。北朝鮮のミサイル発射の流れを簡単に整理してみた。

2018年2月、北朝鮮軍創建70年を記念する軍事パレードが平壌で行われた。平壌の金日成広場を埋め尽くした観客。数万人の群衆が花を持ち上げて金正恩委員長の名前と、労働党のシンボルを作成する。この日北朝鮮は、各種の大砲の装備と戦車、装甲車はもちろん、大陸間弾道ミサイル「火星-14」型と「火星-15」型を動員し軍事力を誇示した。さらにこれまで一度も公開されることのなかった新型弾道ミサイルもお目見えした。当時このミサイルは、ロシアのイスカンダル弾道ミサイルと形が似ているということから多くの軍事専門家に「北朝鮮版イスカンダル」と呼ばれた。

そして今年5月9日、北朝鮮が打ち上げたミサイルに再び世界の注目が集中した。韓国と米国当局の公式分析結果が出ていないが、多数の専門家が、あれは間違いなく北朝鮮版イスカンダルミサイルだとしている。「外観から見ても、後で明らかになった飛行データを見ても、これはロシアが開発したイスカンダルとほぼ同じ弾道ミサイルであると判断することができる。270kmと420kmという距離、さらに最高頂点高度が45kmから50kmの間であったという点、この点はすべてイスカンダルミサイルが持つ特徴をそのまま反映している。」(ヤン・ウク/韓国国防安保フォーラムセンター長の言)

ロシアのイスカンダルミサイルは、固体燃料を使用する短距離ミサイルで最大300kmまで飛行できることが知られている。最大の特徴は、低高度から上昇した後、変則的な飛行軌跡を描いたあと目標を打撃するところにある。今回、北朝鮮が発射したミサイルがイスカンダルと類似モデルであることが正しい場合、脅威的な武器となる理由だ。

「ミサイル防御システムというのは、弾道ミサイルの軌跡を計算し、それに合わせて終末段階で迎撃するもの。ところが今回のミサイルのような場合は、弾道ミサイルの軌跡を描くけれども、一番最後の部分では自分が希望する打撃方向に下降して、またあがって速度を高めた状態で再び目標地点を打撃する。なので、韓国が既に持っているミサイル防衛システムの概念のもとでは、イスカンダル型のようなミサイルの迎撃が困難になると見なければならない。」(イ・ホリョン/韓国国防研究院研究委員の言)

1970年代、エジプトからソ連産のスカッドミサイルを持ち込んだ北朝鮮は、「逆設計」方式で技術力を蓄積。以後1980年代半ば、韓国全域を射程距離に置くスカッドミサイルの開発が完成し、1990年代には射程距離を大幅に増やし1000km以上飛ぶ長距離ミサイルにまで発展させた。

1998年8月、北朝鮮は金正日の国防委員長再任を前に、テポドン1号を発射する。射程距離約2500キロ、北朝鮮の最初の長距離かつ多段階レベルのミサイルであるテポドン1号の発射で、北朝鮮のミサイルの脅威は急激に増大する。

「テポドンがもたらした意味はとても大きかったです。1段推進体の変更、あるいは推進体全体の形状変更、次いでコンセプトの変更に関してかなり深刻にならざるをえなかった。まさにそのような点から見てこのテポドンというのは、北朝鮮の長距離ミサイル開発に大きなエポックをもたらした事件とみることができるわけだ。」(前出ヤン・ウク/センター長の言)

しかし、北朝鮮がミサイル開発を重ねるごとに、国際社会も監視と制裁を強化してきた。2003年2月には、東海(日本海)で最大射程距離100km以上の新型地対艦ミサイルを発射した北朝鮮。この時から米国防総省は、北朝鮮のミサイルに「KN(north korea)」というコード名をつけて本格的な監視体制に入ることになる。

国際社会の対応も迅速だった。2006年7月には、北朝鮮の第二の長距離ミサイル「テポドン2号」発射。その直後、国連安全保障理事会は最初の対北朝鮮制裁決議1695号を採択し、北朝鮮の行為を糾弾した。

しかしミサイルと核に対する北朝鮮の執着は、三代世襲を続ける間少しも弱まらなかった。2012年4月、金日成主席の100回目の誕生日の閲兵式に参加したキム・ジョンウン委員長。「我々の革命隊伍の陣頭に、永遠に金日成同志と金正日同志の太陽旗が風になびき、常に私たちを新しき勝利に導くのだ。最後の勝利に向かって進もう!」(キム・ジョンウン、2012年4月の言)

この日は、金委員長の肉声演説の披露だけではなかった。一度も公開されることのなかった大陸間弾道ミサイルKN-08が公開されたのである。推定射程距離が最大1万2000km、アメリカ本土を脅かすICBMの登場だった。

以後キム・ジョンウン委員長は、核とミサイル開発を先代の遺訓と強調しながら露骨な歩みを続けていく。労働ミサイルと新型放射砲など中短距離ロケットを相次いで発射して緊張を高めたかと思えば、2015年5月にSLBMと呼ばれる潜水艦発射弾道ミサイル、北極星1号の試験発射を強行し、2016年3月には、ミサイルに搭載する核弾頭の小型化を誇示するまでに至った。

「わが祖国が、どんな強敵も絶対にちょっかいが出せない東方の核強国、軍事強国に躍り上がったのだ。」(キム・ジョンウン 2017年新年の辞)

2017年、キム・ジョンウン委員長は大陸間弾道ミサイルICBMの完成に向けてまさに暴走した。同年5月と7月には、火星-12型と火星-14型を順に打ち上げ、ついに2017年11月には、大陸間弾道ミサイル火星15型の試験発射を国の核力の完成だと宣言した。

北朝鮮政権の悲願の核武力の完成を、執権6年目に成功させたキム・ジョンウン委員長。しかし最大の悲願を達成したという対外宣伝は同時に、それまで経験したことのない強度の高い対北朝鮮制裁に直面する結果をもたらすことになる。

北朝鮮の核・ミサイル挑発が最高潮に達した2017年には、国連安全保障理事会の決議案も出た。北朝鮮の外貨稼ぎの最大の稼ぎ頭である石炭の輸出が禁止され、海外労働者の新規送出も完全に禁止された。史上初めて石油製品の制裁がなされ、繊維製品や食品、農産物、電気機器の輸出も順次全面遮断された。前例のない強硬な措置が多数含まれた決議案は、歴代最強と評価された。

「非核化対話に出てきたのも、金正恩書記から見るとき、白頭血統(ペクトゥヒョルトン。金日成からの血統を白頭山にちなんでペクトゥヒョルトンといっている)という金氏体制を維持をするためには、そのような圧迫やマックスのプレッシャーがあまりにも脅威に感じられたのでしょう。」(前出イ・ホリョン/研究委員の言)

「制裁があまりにも累積的に強化されたため、ある時点に至ればこの制裁が最終的には政権を脅かす短剣になるはず。結果的に、北朝鮮は小さな戦いには勝ったかもしれないが過去30年の大戦争には最終的には負ける、私はそのように見てるのです。」(キム・ジンム/淑明女子大国際関係大学院教授の言)

「我々の自主権および尊厳、生存権を脅かすいかなる勢力も、いささかの容赦もなく、即反撃を加える英雄的朝鮮人民軍の堅固な意志を誇示した訓練は、胸がすっきりするほど見事に終わった。」(朝鮮中央TV / 2019年5月4日のニュース)

北朝鮮当局は、今回の2回のミサイル発射を、正常かつ自衛的な軍事訓練と規定している。しかし、非核化交渉が足踏み状態に陥っている中で、北朝鮮のこのような態度は過去に回帰するような印象を与えている。それでも対立と反目、和解と戦略的交渉というこれまで何回も繰り返された轍を踏むことはあってはならないという評価だ。

「国際社会が共に非難し、国連安全保障理事会でやれることは積極的にやっていく。これまで1年半の間、曲がりなりにも引っ張ってこれた北朝鮮の非核化交渉、その火種はまだ生きていると見る。過去30余年間、つまりジュネーブ合意以降のほぼ30年間の中で、こんなに長く北朝鮮が何の挑発もせずに交渉に素直に応じたことは一度もないのです。これからはこの交渉の火種を生かし、とにかく、北朝鮮を交渉の場から出て行かないようにし、北朝鮮に何とか核をあきらめさせるべき交渉に引っ張っていくことが優先順位の筆頭にあるものだと、私はそのように見ます。」(前出キム・ジンム教授の言)

節目ごとに核とミサイルで突破口を模索してきた北朝鮮。しかしその武器は、数十年後、最終的にブーメランとなって自分を孤立させる結果をもたらした。なんとか造成されてきた対話のチャンス…北朝鮮がこれ以上軍事力ではなくして会話によって国際舞台に出てこなければならない理由である。それをどうやって北に理解せしめるか。米、韓をはじめとした周辺国がやらねばならない課題だが、だんだん昔といっしょになってくるんじゃないかという一抹の不安はある。トランプがどんなやり方でこの膠着状態にメスを入れるのか。それほど好きではないけれど、トランプに負うところが大だと筆者には思われる。(安部首相やムン・ジェイン大統領ではちょっとむりかも)。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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