<在日中国人のブログ>中国に元号が再びあったらいい

黄 文葦    2019年4月8日(月) 23時40分

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4月1日、新元号「令和」が発表された。日本中、急に「万葉集」が売られるようになった。そして、古典ブームを巻き起こした。中国にもその波が及んだ。写真は新元号発表時の新橋駅前。

4月1日、新元号「令和」が発表された。日本中、急に「万葉集」が売られるようになった。そして、古典ブームを巻き起こした。中国にもその波が及んだ。中国で「令和」の由来や出典を巡って、ネットをはじめ各所で大きな話題となっているらしい。日本でも中国でも、ネットで一気に古典を探る雰囲気になってくる。古典は日中両国の一番確実な文化的な絆だと感心した。

正直言って、元号がある日本が羨ましい。今回新元号が生まれることによって、日本での暮らしの中、伝統と現代が融和することを再び心得た。元号は歴史と文化である。中国が元号を失ったことを残念に思う。古代中国が日本に移った、昔の中国人が今の日本人に変身した、と想像した。

今の世の中、元号が使われる国は日本しかないけれど、中国は元号の発祥の地である。中国の影響を受けて、朝鮮は6世紀、日本は7世紀、ベトナムは10世紀、元号を使い始めた。

当然のように、中国の歴史を言うなら、元号は欠かせない存在である。西暦は時間軸、元号は時間軸中の空間物語である。西暦は歴史の望遠鏡、元号は歴史の顕微鏡である。ある元号を思えば、その時代の物語を思い出す。

日本の元号はほとんどが「四書五経」など中国の古典から出典される。今、中国は自らの古典の宝蔵を使わないともったいないではないか。昔の中国の元号を見ると、永、和、平、慶、嘉など美しい文字が多かった。日本の元号も似たようなスタイルである。崇禎、康熙など中国昔の元号はたいへん歴史の重みが感じられる。多くの元号が歴史と共に永遠に人々の記憶の中に刻まれている。中国では1911年、清王朝が終わった後、元号が廃止されてしまった。そして、中国に元号が再びあったらいいと思わずにいられない。

今回新元号「令和」の出典について、純和風か、それとも中国古典詩文集の「 文選」からの孫引きか、世間ではいろんな議論があった。そのおかげで、「文選」も広く知られるようになった。日本人は現代中国よりもずっと古代中国と中国古典に尊敬の念を持っているらしい。

将来、中国に元号を作るとしたら、日本のように古典ブームが再来すると確信する。現在、中国の経済はだんだん豊かになってきた。しかし、文化的貧困はまだ残されていると認めざるを得ない。元号選考によって、ある程度人々の注目点をカネから文化に転換させればいい。中華文化の中には良くない部分もあると思うが、「元号」は優れた部分である。

今年は中国建国70 周年を迎える節目の年である。正直言って、この70年間は中国4000年の歴史とのつながりが薄いと気にしなくてはならない。「文化大革命」(1966-1976)で、中国の伝統文化がほぼ完全に破壊された。

中国に再び元号があったら、現在と過去の間、歴史・文化の絆が増えてくるだろう。勿論、元号を作っても、「皇帝の時代」に戻させるわけではなく、元号が真の民主主義と共に到来すれば、中国の幸運だと思っている。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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