故郷を離れ大都市で暮らす「老漂族」、ますます増加―中国

Record China    2012年11月21日(水) 20時32分

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20日、競争が激しさを増す中国では近年、故郷を離れて北京や上海などの都会で働く子や孫に付いて、慣れない都市で孤独な生活を送る親世代の層「老漂族」が増えつつある。写真は河南省の公園でくつろぐ年配の方。

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2012年11月20日、競争が激しさを増す中国では近年、故郷を離れて北京や上海などの都会で働く子や孫に付いて、慣れない都市で孤独な生活を送る親世代の層「老漂族」が増えつつある。新華網が報じた。

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中国東北地方出身の女性、李麗霞(リー・リーシア)さんもその一人だ。李さんは東北から孫を連れて北京に移り住んでまもなく2年が経とうとしている。故郷の親戚たちからは、北京で孫と一緒に晩年を楽しみ、さぞかし快適だろうとうらやましがられている。しかし、李さんはそう思っていない。夫は退職後、再雇用され地元で働き続けている。いままで離れて暮らしたことがなかった2人は、この年にして初めて「別居婚」の日々を送るようになり、李さんは北京で孤独を感じながら生活している。

北京にいる李さんは離れて暮らす夫のことが常に気掛かりで、毎日電話をして近況を聞く。電話口で夫にかける言葉は、天気の寒暖についてや、寒くなったから厚着をするようにとか、出かけるときに鍵を忘れないようになどといったごくささいなことだ。しかし、実家に戻れば、今度は逆に子供のことが気に掛かる。李さんは「私が実家に戻れば子供が不便で慣れないのではないかとか、いろいろなことが心配になる」という。北京では、しばしば感情に波が出て、息子や嫁と口論したり、時折「荷物をもって実家に帰る」と怒鳴りちらしたりすることもあるという。だが、息子が困った顔をするのを見ると、後悔する。

「子供は近くにいても、『幸せ』とは距離がある」と李さんが語るように、李さんのような「老漂族」は喜んで一家の「後方支援隊長」として娘や孫のために毎日洗濯や食事作りに勤しみ、友人のいない異郷の地に住む寂しさにも耐えている。子供たちとの団欒がもたらす喜びはあるが、同時に孤独と悩みも抱えている。また、「老漂族」は、比較的恵まれた物質的条件を持っているにもかかわらず、より精神面で満たされることを強く望んでいる。築いてきた友人関係が断ち切られ、交際範囲が狭まり、言葉が通じないといった従来とは異なる環境は彼らに新たな悩みをもたらす。

山東省威海市出身の叢(ツォン)さんの場合は、恐らく多くの「老漂族」と比べれば、妻と離れて暮らす必要もなく比較的恵まれているかもしれないが、それでも人生の大半を過ごしてきた土地から離れて北京で暮らす生活は、時に寂しさや孤独が知らぬまに心の中で湧き上がってくるという。「年をとって、本当ならゆっくり生活を楽しむはずが、逆に新しい環境に慣れなくてはいけなくなるなんて」と叢さんは言う。さらに「食材の買い物や食事の用意、孫の相手など、我々年寄りにはなかなか口が出せない。方言は今さら直そうとしても難しいが、近所の人たちは方言を聞き取ってくれない。遠い場所は怖くていけないし、いつもマンション内と周辺を散歩するばかり」と語る。

叢さんはある日、偶然、マンションの敷地内で山東省のナンバープレートをつけた車を見つけた。その瞬間、心がぱっと明るくなって、言葉で言い表せないほどの親近感を抱いたという。この車はその後叢さんの精神的な拠り所となった。ほぼ毎日、そこに車が泊まっているかどうかを確認しにいくのだ。「ある日、車の方に女性が向かってくるのを見かけた。もし車の持ち主が男性だったら、タバコを1本手渡して、故郷の方言で思う存分しゃべれたのに」と叢さん。「一人っ子を持つ家族の多くは、子供の住む場所が、老人が今後住む家になる。周りの同僚や友達の中にも、故郷の家を売って、大都市で家を買い、子供たちと一緒に住む人がいる」と語る。

これ以外にも、医療保障制度の未整備は故郷を離れて都市で暮らす人たちが病気や入院を恐れる原因となっている。特に、農村から来た老人はどこに行っても自分のお金を出さなくてはならない。

ある心理学者は「老漂族」の精神状態は精神的空虚および心理的空虚にあると考えている。以前は、自分が家の中心であったのが、子供たちの家に住むことで、この価値観が崩壊し、それに取って代わって喪失感、孤独感、衰退感、うつ、焦りなどのマイナスの感情が生まれる。同時に、子供たちは仕事などで非常に忙しく、家に帰ってきても、両親と触れ合う時間も少ないため、老人はますます寂しさを感じる。自分に一番欠けているのは何の時間かという話題になると、多くの老人が言葉の交流が非常に欠けていると答える。「一日中仕事をしてきた子供は、帰宅したときにはすでにすごく疲れていて、話もしたくないようだし、私たちも多くを問わない」と李さんは言う。

北京大学人口研究所の教授は「精神的な扶養問題はすでに高齢化社会において深いレベルで解決しなければいけない問題となっている」と指摘する。高齢化問題の専門家、穆光宗(ムー・グアンゾン)教授は「社会保障制度の整備に従って、経済的には自分自身を養える能力をもつ老人が徐々に増えているが、老人は健康的な精神および心理状態を得ることを心から求めており、それに関してはいまだに満足を得られていない」と語る。また穆教授は、「これは、まさに大多数の老人に見られる心理的問題の核心だ。特に家庭での老人扶養が主となる社会構造上、いかに地域社会で老人たちに精神的サポートを与えられるかという社会機能の問題は、緊急に解決すべき事項になっている」とし、解決方法として、「子供としては、できるだけ時間を作って親とふれあい、話をすること。それが、親ができるだけ早く新しい環境に溶け込むための手助けとなる。また、親を周囲にいる同じ年代の近所の人に紹介し、新しい友達のコミュニティーを形成させたり、地域社会が実施している何らかの各種活動に老人を参加させたりすることが大事」と語る。(提供/人民網日本語版・翻訳/MZ・編集/内山

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