<在日中国人のブログ>私は日本人から中華文化を教えてもらった

黄 文葦    2018年12月5日(水) 10時20分

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私は小さい頃から、ヘビは怖い動物であると認識していた。しかしその後、中国古代の4大民間伝説の1つ「白蛇伝」を知り、ヘビのイメージが変わった。

私は小さい頃から、ヘビは怖い動物であると認識していた。しかしその後、中国古代の4大民間伝説の1つ「白蛇伝」を知り、ヘビのイメージが変わった。「白蛇伝」は、白蛇・白娘子が、幼い頃かわいがってくれた許仙のことが忘れられず美しい娘となって彼の前に姿を現し、たちまち2人が恋に落ちるという恋物語である。日本初の本格的カラー長編アニメーション映画は「白蛇伝」であり、同作は日本とも深いつながりがある。

ヘビは人間にいろいろな恩恵を与えている。太極拳の創始者である明朝の張三豊は、タカとヘビの戦いを見てインスピレーションを受け、ヘビの柔らかさ、タカの勇ましさを融合した太極拳の神髄を悟ったという。

先日、フェイスブックの友人で立命館大学産業社会学部教授の原尻英樹先生からご著書「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」(海鳥社)を頂いた。日中のヘビ文化の繋がりを知ることができ、興味深く読ませていただいた。

ヘビをまつる九州の2つの祭、それに中国・福建省のヘビ祭りを写真で紹介している。3つの祭りに共通する信仰やそれぞれの祭りが生まれた背景を探る内容となっている。同著書は写真を多く掲載しており、ヘビ文化の臨場感が伝わってくる。

龍崇拝は中国伝統文化の1つとしてよく知られており、中国の伝説によく出てくる龍は中国人にとって最も神聖な霊獣である。対してヘビ信仰は珍しいのだが、私の故郷である福建省の南平市という中部地方では、ヘビ崇拝が存在する。小さい頃、周りの大人からヘビは「小龍」だと教えられた。ヘビは小さな龍として崇められているのだ。原尻先生のご著書では、「ここの住民は越の時代の子孫であり、蛇を信仰しており、その蛇は中国においては後に龍になっている。龍の元が蛇であり、それは自分たちの祖先が祀っていた神である」と記されている。これはヘビ信仰に至ったいきさつであり、日本と越との関係は古く深いのだと知ることができた。

同著書を読んで、ヘビ文化が盛んである樟湖(南平市)という地域に興味を抱くようになった。樟湖は千年の歴史を誇り、ヘビはトーテムのような存在で、マスコットであり、神の化身だとされている。ヘビ文化は地域の人々の暮らしに浸透しているだけではなく、観光資源にもなっている。ヘビ祭りの際には、海外から大勢の観光客が詰めかける。ただ、ネットで福建省のヘビ文化とヘビ祭りについて調べてみたのだが、日本との関連性はあまり言及されていなかった。原尻先生のご著書では日中のヘビ文化を比較することができ、視野を広がったように感じる。

同著書によると、お神輿にあたるものに神々などを乗せて村中を練り歩くなど、樟湖のヘビ祭りは日本の祭りと似ているところが多い。違うのは、お披露目の時に、あちこちで爆竹が鳴らされることである。さらに、祭りでは本物のヘビが観衆の前に登場する。そういう光景を想像すると、一度南平のヘビ祭りを見学したいと思った。

今後、南平、長崎、筑後のそれぞれのヘビ文化がいろいろなカタチで繋がればいいと思う。同じヘビ文化、同じ文化遺産がより一層光彩を放つはずである。日本に来てから、日本人から中華文化を教えてもらうことが多い。日本に来て間もない頃、アルバイト先のケーキ屋さんで、仕事仲間が中国古代の哲学者である老子と荘子を知っていたことに驚いたのをよく覚えている。その後、司馬遷の「史記」が大好きな雑誌の編集者にも出会った。そして今、原尻英樹先生から日中のヘビ文化を教わった。中華文化に熱心な日本人に感謝したい。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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