Record China 2018年10月5日(金) 5時20分
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中国メディアの中国新聞社は1日、中国における貯蓄額の増加が39年ぶりに9%を割り込んで8.3%になったと紹介し、その原因を探る記事を発表した。原因としては消費意欲が極めて旺盛になったことなどを挙げた。
中国メディアの中国新聞社は1日、中国における貯蓄額の増加が39年ぶりに9%を割り込んで8.3%になったと紹介し、その原因を探る記事を発表した。原因として筆頭に、海外旅行などを含め消費意欲が極めて旺盛になったことを挙げた。
これまで、「貯蓄に熱心」と言われてきた。将来の社会情勢などに対する猜疑心が強く、「いざという時に頼れるもの」をできるだけためておこうという意識が高いことが理由などとされてきた。しかしそんな中国人の意識も、変化しつつあるようだ。
記事は、中国人民銀行(中央銀)が発表した統計では、金融機関における貯蓄額の残高の伸びが、前年同月比で8.3%だったと紹介。同数字は過去39年間にわたり9%を割り込んだことはなかったという。個人名義による貯蓄残高の減少はさらに著しく、2008年に18%程度だった伸びは、7%前後にまで落ち込んだ。
記事は、貯蓄残高の伸びが鈍化している第一の理由として、消費意欲の旺盛さを挙げた。例として、黒龍江出身の張連池さんの事例を紹介。張さんは「食べるものも食べずに倹約して家を買ったのですが、定年退職してからは戻りませんね。いつも妻と一緒に、旅行をしています。国内や東南アジアには一通り行きました。1年に5回か6回は旅行しています」と述べたという。
日本で中国人客の増加と、大量に土産物を買う「爆買い」が注目されたのは2015年だった。当時はツアー客が多く、旅程で定められた限られた時間内で懸命に買い物をするので、「爆買い」はことさらに目立った。多くの日本企業が「商機到来」と敏感に反応すると同時に、目の色を変えて大量買いする中国人の姿を見て「あさましい」と眉をひそめる日本人もいた。
現在は中国人の「爆買い」も以前と比べれば落ち着きを見せているが、消費意欲はそれでも極めて旺盛だ。中国人訪日客の日本旅行中の旅行支出額(宿泊費、飲食費、娯楽等サービス費、買い物代など)は1人当たり約21万円で、中国人とならんで訪日客の多い韓国人の約6万9000円と比べて圧倒的に多い。買い物代では中国人客が約10万9000円、韓国人は約1万8000円だ(日本政府観光局、2018年4~6月期1次速報値)。
中国新聞社によると、前記の張さんも「お金があるなら使ってしまわねば。私たちの古い考え方は変えねば」と明言したという。記事が、定年退職者である張さんを紹介したことも興味深い。これまで、日本のインバウンド業務関係者には「中国人でもターゲットとすべきは若い世代。経済の高度成長と共に自らも成長したので、金を使ってほしい物やサービスを手に入れることに違和感を持たない。それ以上の世代は貧しかったころの節約の習慣が身についており、大量の出費をためらう場合が多い」との声も強かったからだ。
「旺盛な消費意欲」が上の世代にも伝わりつつあるとすれば、中国人全体としての「金払いのよさ」はさらに底上げされることになる。
もちろん、旺盛な消費意欲は海外旅行だけに向けられるものではない。中国新聞社の記事は、中国政府・国家発展改革委員会と商務部が発表した数字として、2018年前半における消費品小売額の総額は、前年同期比9.4%増の18兆元(約299兆円)で、最終消費の経済成長に対する貢献率は同14.2ポイント増の78.5%に達したと紹介した。
同期における1人当たり可処分収入の全国平均の伸びは前年同期比6.6%増の1万4063元(約23万3000円)だった。記事は、「稼ぐ額よりも消費の伸びの方が大きい」として、貯蓄の伸びが鈍化しているのは自然なことと論じた。
記事は続けて、手軽な財テク商品が普及したことも貯蓄の伸びにブレーキをかけていると指摘。例として、阿里巴巴集団(アリババグループ)系の天弘基金管理有限公司(ティエンホン・アセット・マネジメント)による「余額宝(ユーウァバオ)」を挙げた。
「余額宝」は「1元からの購入が可能」をキャッチフレーズに2013年に販売が始まった金融商品で、銀行預金以上の利回りで注目を集めた。最近の利回りは以前ほどではないが、「余額宝」は銀行預金にはない特徴がある。2014年以来、「余額宝」は運用残高を使っての商品購入サービスを導入したことだ。15年には不動産会社と提携して、物件購入の際の頭金を「余額宝」残高で充てるサービスも始めた。「余額宝」の場合、財テク商品でありながら、消費行動に結びつきやすい特徴がある。
中国新聞社によると、前出の張さんも「銀行口座に残している金額は数万元(5万元=約83万円)です。残りの金で、当面必要がない分は余額宝を購入しています」と説明した。「余額宝」による天弘基金の運用規模は6月末時点で、1兆4000億元(約23兆2000億円)に達したという。
一方で、中国では、貯蓄の伸びが減速していることを問題視する声も出ている。中国人民銀行が発表した8月の金融関連統計によると、人民元建ての貸付残高は1兆2800億元(約21兆3000億円)で、うち住宅関連は7012億元(11兆6000億円)だった。国家金融与発展実験室の李揚理事長は「中国国民は早い時期に(全体として貯蓄より借金が多い)赤字部門になるだろう。その影響はとても深刻だ」と発言した。
また、中国新聞社記事によると、金融業界から「個人の貯蓄率の下降があまりにも速くなれば、社会全体が債務返済の圧力を受け、金融システムはリスクを引き受けることがより困難になる」との声も出ているという。
ただし、中国人民大学が最近になり発表したマクロ経済月度分析は「貯蓄の増え方が減速するのは、常態化現象であり、過度に心配する必要ない」との見方を示している。(翻訳・編集/如月隼人)
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