2018年9月8日、独ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトによると、ロイター通信はこのほど、9日の北朝鮮の建国70年記念日について、「資金調達と新イメージ投影のチャンス」と報じている。以下はその概要。

アナリストらは、核開発計画の完成を宣言した北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党委員長が、日曜日のイベントを利用して、経済発展目標を強調するとともに、米国や中国、韓国との間で歴史的な首脳会談を成し遂げた外交努力を今後も継続するとの見方を示している。

韓国のシンクタンク、統一研究院のホン・ミン研究委員は、「この日、金正恩氏は建国70年の歴史を回顧すると同時に、このイベントを利用して少なくとも今後10年間の国家統治のビジョンを提示するという圧力にも直面している。だが正恩氏は、国家政策を経済優先に変更して以降、何かを打ち破ったわけではないので、今週末は簡単なものにはならないだろう」と指摘する。

核兵器開発に対する経済制裁は、この貧困国を圧迫しており、人口の約40％、すなわち1000万人以上が人道援助を必要とし、子どもの約20％が栄養失調に悩まされている。

金正恩氏の独裁統治下で、この国の人権状況は憂慮すべきものとなっている。国連の報告書によると、北朝鮮では昨年、政治犯収容所に8～12万人が収監されていたという。

北朝鮮の国営メディアは、この日のパレード行進について「勝利を祝い、経済発展の継続的な拡大を祝う」と報じている。

北京から平壌への高麗航空の1便はすでに予約で埋まっているが、乗客の大多数が外国人の観光客やメディア関係者だ。

中国・北京に本社を置く北朝鮮専門の旅行社、高麗ツアーズのサイモン・コッカレル氏は、映像映えのするマスゲームのチケット価格について「以前300ユーロ（約3万8000円）に達したことがあったが、今年のVIP席は800ユーロで、最も安い席でも100ユーロ。需要は相当に旺盛だ」とし、「飛行機もホテルも予約でいっぱいだ。北朝鮮側が9月中旬まで中国人観光客の受け入れを拒んでいるのは、単純に受け入れ能力の問題によるものだ」としている。

韓国のシンクタンク、韓国海洋開発院の試算によると、北朝鮮は観光業によって年間約4400万ドル（約48億円）の収入を得ており、北朝鮮訪問者の約80％を中国人観光客が占めているという。

これまでのところ、アフリカ西部モーリタニアの元首だけが、北朝鮮の祝賀行事のために同国を訪問すると伝えられている。北朝鮮外交部は先月、国営朝鮮中央通信を通じて声明を出し、「北朝鮮の建国70年記念日に他の国が高官レベルの代表団を派遣するのを妨げている」と米国を非難している。

中国からは習近平（シー・ジンピン）国家主席が訪朝するとの観測もあった。だが中国政府は4日、序列3位の栗戦書（リー・ジャンシュウ）全国人民代表大会常務委員長（国会議長）が参加すると発表した。

北朝鮮はまた、9月後半に外国人投資家の誘致を目的とした見本市やその他の旅行プログラムを予定している。だが北朝鮮との貿易の多くをブロックしている制裁に留意しなければならない。

北朝鮮分析サイトの38ノースは、9日の軍事パレードについて「衛星画像によると、長距離弾道ミサイルや発射装置は発見されていないが、今年初めに開催されたものよりも大きな規模となる可能性がある」としている。

ホン研究委員は「軍事力の展示は、北朝鮮の国政において極めて重要だ」とした一方で、「北朝鮮は、大陸間弾道ミサイル（ICBM）を展示すれば国際社会が非核化の意思を疑うだろうということを知っている。北朝鮮がそのような冒険をする可能性は非常に低い」と述べている。（翻訳・編集/柳川）