<在日中国人のブログ>「セミの幼虫を中華料理にする可能性が高い」、川口の公園の看板を見て思うこと

黄 文葦    2018年8月29日(水) 11時40分

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先日、埼玉県川口市の青木町公園にある、食用目的でのセミの幼虫の捕獲を止めるよう呼びかける看板がSNSで話題になった。資料写真。

先日、埼玉県川口市の青木町公園にある、食用目的でのセミの幼虫の捕獲を止めるよう呼びかける看板がSNSで話題になった。

日本語だけではなく、同じような文言を英語と中国語で記した貼り紙もあった。セミの幼虫を食用目的としている可能性が考えられるため、役所が注意喚起をしたというわけだ。これは生態系を保護するための措置だと思う。研究者から「クマゼミが減っている」との連絡が役所にあったらしい。

こうした「食用」としてのセミ捕獲に関する注意書きは、隣接する蕨市の公園にも存在する。どちらの公園も、「チャイナタウン化」が指摘されるJR西川口駅の近くである。

恥ずかしながら、セミの幼虫を中華料理にする可能性が高いと認めざるを得ない。そのような「冒険行為」は自然を冒涜(ぼうとく)することに等しい。そう言えば、ある友人は時々千葉の砂浜で潮干狩りをし、アサリを取ることを楽しんでいるという。もちろん、環境を汚染しないように心掛けている。

「自然に敬意を払いながらさまざまな食材を取り入れる」ことは、私が日本での食生活の心得である。「旬の食材」という言葉が好きである。気候と自然に合わせて、心が体とともに美味しさを覚える。食材から自然を感じられる。孔子の「論語」の中、「不時不食」という句がある。これは「季節はずれの食べ物を食べない」という意味で、古代の先覚者が食生活の中で「旬」に重きを置いたことは明らかである。

日本に来て間もない頃、上野のアメ横に行く機会があり、中華食材が多くそろっていることに驚いた。中華食材店では、売る人も買う人も中国人である。ある店では店主が同郷で、方言も通じたほどだ。不思議なことに、中国や韓国、タイなどの外国の旬の野菜をも売っている。さまざまな国の「旬の食材」がそろっていることがアメ横の魅力である。

黒柳徹子さんの著書「窓ぎわのトットちゃん」を読んで、共鳴したことが多い。食に関するエピソードとして、トットちゃんの学校の校長先生が子どもの弁当について、「海のものと、山のものを持たせてください」と子どもたちの家の人に頼んだ話が印象深い。山はお野菜やお肉、海はお魚とか佃煮とか。「海のものと山のもの」という表現が天才的なものだと感じた。食材を通して、海や山という自然を子どもと繋げた、素晴らしい食の教育である。

私は留学生だった時分に、長野県南佐久郡南相木村に2度ホームステイをしたことがある。20年近く経った今でも、南相木村のレタスやハクサイなどの野菜の美味しさが忘れられない。現地の人たちに広くてきれいな野菜畑を案内してもらった際、「私たちの村の標高は東京タワーの3倍で1000メートル以上。だから野菜がとても美味しい」と誇らしげに語っていた。環境に愛着を持ちながら、大事に野菜を育てる現地の人たちはとても優しかった。私はレタスを食べると、決まって美しい長野県の高原の自然を思い出す。

日本と中国、どちらも食文化を大事にしている。日本と比べると、中国の食文化はより多様であり、異色なものもある。中国の食文化に関して、「飛ぶものは飛行機以外、4つ足の物は机以外何でも食べる」といううわさがある。食を愛するのではなく、我を張り、欲を張る状態は危険である。人間が食に対し精神的に余裕があれば、爆食いはしない。物に対し余裕を持てれば、爆買いもしない。

自然・食材、そして人間は繋がっている。お互いに影響を与える。食べるということは、自然を味わうことができる幸せなことである。セミの幼虫を捕獲して食べることはやめてほしい。自然に敬意を払いながら食文化を楽しんでほしい。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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