呂 厳 2018年4月7日(土) 21時20分
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時代の流れとともに私たちの生活スタイルにも巨大な変化が生じた。そして同じ時代に生きていても人々は明らかに異なるスタイルで日々過ごしている。
H氏は人生の先輩と呼べる人だ。私が学生の頃、H氏は私に食事をごちそうしてくれたり、音楽会や絵画展のチケットをプレゼントしてくれたりした。ただ、私は彼が開く会合に加わることにあまり乗り気ではない。その最大の理由はH氏がまだ「ファクス時代」に生きているからだ。毎回、会合のたびに私のオフィスには7、8枚のファクスが送られてきて、最後は確認のための電話が入る。私が会場への行き方を調べるにはH氏から送られた住所をアプリに入力することが必要だ。参加する前から疲れを感じた私は最終的に出席をお断りするようになったが、今回は電話からH氏の不機嫌な様子が伝わってきたため、会合に行くことにしたのだった。
H氏が私を会合に誘ったのは、日本庭園の設計を手掛けるある人物を紹介するためだ。名刺交換した後にこっそりグーグル検索してみた私は、彼が著名なデザイナーであること、彼の事務所が中国向けに日本の枯山水をイメージした温泉ホテルを設計しそれが好評を得たことを知った。ただ、私の「SNSを使っていらっしゃいますか?」との質問に彼が示したのは首を横に振る仕草。私は「SNSだったらもっと頻繁に深い内容のやり取りができるのに」と失望してしまった。
一方、私の会社では動画関連業務のアシスタントを必要としており、私の頭には大学4年生のS君の名前が浮かんだ。少し前に知人から紹介されたS君は中国北京に2年間留学した経験を持つ人物だ。私の誘いに快く応じてくれたS君だが、勤務初日の彼の仕事のやり方は私を大いに驚かせた。写真にあるように、S君はパソコンを前にしながらそのキーボードには手を触れず、自身のスマホを滑らかに操作して文字を入力、それをSNS経由でパソコンに送り、マウスを使ってコピー&ペースト作業を行っていたのだ。キーボードを使わない理由を尋ねてみたところ、彼は「これまでキーボードを使う機会が少なくて入力が遅いからです。自分にとってはスマホ入力の方がはるかに効率が上です」と答えてくれた。
よく考えてみると確かにS君の言う通りだ。彼のように1995年以降に生まれた人にとって、スマホやタブレットは子どもの頃、すでに出現していたもので、キーボードは「時代遅れ」的な存在なのだ。彼の変わった仕事スタイルを見て、私は「遠くない将来、机の上にキーボードという殺風景な光景は消え、人は上を見ながら仕事をするようになるかもしれない。そうなると人類を長く困らせてきた頸椎(けいつい)の病気も自然に治るのだろうか」とよく分からない興奮と待ち遠しさを感じたのだった。
■筆者プロフィール:呂厳
4人家族の長男として文化大革命終了直前の中国江蘇省に生まれる。大学卒業まで日本と全く縁のない生活を過ごす。23歳の時に急な事情で来日し、日本の大学院を出たあと、そのまま日本企業に就職。メインはコンサルティング業だが、さまざまな業者の中国事業展開のコーディネートも行っている。1年のうち半分は中国に滞在するほど、日本と中国を行き来している。興味は映画鑑賞。好きな日本映画は小津安二郎監督の『晩春』、今村昌平監督の『楢山節考』など。
■筆者プロフィール:呂 厳
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