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<コラム>中国の危険廃棄物処理は需給のアンバランスが顕著、市場でM&Aが潮流

内藤 康行    2018年3月4日(日) 17時0分

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中国の危険廃棄物処理業界のM&Aは、表面的な「大型企業の軍門に下る」のではなく、小規模企業は大手企業とのM&Aを通じて、市場での生き残りとさらなる企業成長を掛けたサバイバルなのである。資料写真。

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「十九大(中国共産党第十九次全国代表大会)」では、「壮大な省エネ環境保護産業、クリーン生産産業、クリーンエネルギー産業の構築」を決定している。

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環境保護企業から見れば、「壮大な…構築」は自主成長を除く成長戦略は外部企業の買収を示唆する。直近3年の環境保護産業のM&A事案は安定推移し、年間取引額は平均で400億元(約6725億円)に達している。昨年は86件のM&A事案が成立し取引額は385億元(約6473億円)だった。この安定推移の最大特徴は危険物処理市場における大量なM&A事案である。M&A事案件数は20件を超えている。昨年の危険物処理業界のM&A事案を(図1)に示す。

【危険廃棄物処理業界のM&A急増の背景】

昨年は危険廃棄物処理業界で大量のM&A事案が起こり、取引額と事案件数は共に最高となった。以下がその主な原因。

1、高額利潤がM&Aを加速。危険廃棄物処理セクターは環境保護の薄利構造にあって「特異」なセクターである。現在環境保護業界の利益率は10%程度だが危険廃棄物処理分野の利益率は50%を超える高利潤セクターである。

2、需給のアンバランスによるM&Aの加速。厳しい環境保護監督下で、危険廃棄物処理セクターは供給が需要に応じきれていない。処理能力は危険廃棄物発生量を下回っているからだ。この背景から同業界関係者等はプロジェクト収益が高く将来性があると見ている。危険廃棄物処理の主力である軍需産業廃棄物処理を例にとると、『2017年全国大中都市個体廃棄物汚染環境防治年報』に、2016年214箇所の大中型都市の工業危険廃棄物発生量は3344.6万トンと記載があり、全国の危険廃棄物処理事業者の実質事業規模はわずか1629万トンで、需給のアンバランスが顕著である。

3、巨大な市場空間がM&Aを刺激。ある有力環境研究機関の予測では危険廃棄物発生量の年間増加率は10.5%、昨年の4990万トンから2021年には7440万トンに増加し、これからの3年間で中国の危険廃棄物処理市場は2000億元(約3.4兆円)以上の規模に拡大すると指摘している。多くの企業は高利潤市場におけるビジネス機会獲得戦略から続々と危険廃棄物処理市場に参入している。これが市場のM&A化を加速させた3大原因である。

【危険廃棄物処理業界『M&A急増の特徴』】

(図1)の一覧表から以下の3つの業界特徴が見える。

1、業界大手と優秀な後発事業者達。危険廃棄物処理セクターに業種や業態を超えて続々と市場に参入している。激烈な市場シェア獲得競争とM&Aが勃発している。昨年の21件に及ぶ危険廃棄物処理業界M&A事案の中で、東江環保、啓迪桑徳は同領域内では「業界の大手」に位置する。他方東方園林や盛運環保は同領域内では「有力な後発事業者」に位置している。いずれも豊富な資金と優秀な技術で市場に参入して来ている。

2、買収(取引)価格から見ると全体取引価格は低く買収標的企業規模も小粒である。10億元(約168億円)以上のM&Aディール事案はわずか2件、50%のディール事案価格は平均1億元(約16.8億円)である。「小規模で有力な」危険廃棄物処理企業は大手環境保護企業にとって「旨味」のあるディールに写っている。他方現段階において大多数の環境保護企業は小規模で分散している特徴から市場集中度は低い(中国産業情報ネット統計:着権廃棄物処理業界Concentration Ratioはわずか6%)。全業界は目下「重量」級の企業による秩序立ったM&Aを望んでいるようだ。

3、危険廃棄物処理企業はファンド強化することでM&A事案の発掘とディールに傾注している。環境保護産業の「M&A基金」活用は危険廃棄物処理業界のM&Aで重要な手段となっている。昨年6月潤邦公司は「M&A基金」と買収契約を締結し、2.29億元(約38.9億円)で中油優芸の株式21%を取得している。同年7月と8月には雪浪環境が同じく「M&A基金」を通じ、江蘇愛科固体廃棄物処理有限公司の株式65%と連雲港美旗環保科技有限公司の株式20%を取得している。

【まとめ】

危険廃棄物処理業界のM&Aは、表面的な「大型企業の軍門に下る」のではなく、小規模企業は大手企業とのM&Aを通じて、市場での生き残りとさらなる企業成長を掛けたサバイバルなのである。危険廃棄物処理市場はすでに「群雄割拠」の時代に突入している。

■筆者プロフィール:内藤康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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