中国とアフリカを行き来する交易商人が急増―栗田和明著「アジアで出会ったアフリカ人」が実態解明

Record China    2011年3月2日(水) 6時6分

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最近出版された「アジアで出会ったアフリカ人」(栗田和明著、昭和堂刊)は、アフリカ各地と中国・広州、香港、バンコク間を往来する人とモノの動きを渾身のフィールドワークで追いかけ、もう一つのグローバリゼーションの実態を生き生きと描いている。写真は著者撮影。

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今やグローバル化の時代。地球を舞台に人、モノが行き交っている。先進国間、先進国と開発途上国との間、つまり「北北」「東西」「南北」間については研究者・ジャーナリストの論文記事も多く、広く知られているが、「南南」間に関しては探究の対象になることが少なかった。特に発展著しい中国をはじめとするアジア地域の人々とアフリカ人の具体的な交流についての実証的な研究はほとんど例を見ない。

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こうした中、最近発行された「アジアで出会ったアフリカ人」(栗田和明著、昭和堂刊)は、タンザニアを中心とするアフリカ各地と中国・広州、香港、バンコク間を往来する人とモノの動きを渾身のフィールドワークで追いかけ、もうひとつのグローバリゼーションの実態を生き生きと描いている。

世界銀行など国際機関や各国政府が発表する国際統計は存在するが、単なる数字の羅列からは本当の姿は浮かび上がってこない。統計に表われない真の実態をえぐりだすため、個別の人々に焦点をあて、具体的にこの人たちが何をしているかを、交易の事例やライフヒストリーから描き出す手法が採用されている。

行動派文化人類学者(立教大学教授・理学博士)の著者はタンザニア、中国、タイなどに長短合わせて数十回滞在し、交易商人一人ひとりに長時間、時には数年のレンジで再三にわたりインタビューし、その行動と人生を入念に追った。経歴、収入、経費はもちろん、食事、住居から交友関係、将来の夢まで実に多岐にわたる。こうした実証的手法は単なるアンケート調査と異なり、具体的な事例から異文化の生活や人生観を浮かび上がらせ、全体像を読者に伝えることに成功している。

注目すべきは、日本人にとってはあまりなじみのない東アフリカの人々と中国人、タイ人との交流がグローバル化や規制緩和の恩恵を受けて活発化し急増していることだ。衣料品、鞄、靴から携帯電話、建材、中古自動車まで価格差による利益を求めて移動する交易商人たちの欲求は際限ない。広州、香港で安く仕入れてアフリカ各地で販売するバイタリティ溢れる姿は感動的でさえある。

本書にはおびただしい人々が登場し、悩み喜ぶ様子が写真、図解付きで描かれている。著者の眼差しは暖かく気持ちが通いあう。登場人物の息づかいさえ伝わり、読み物としても面白い。中国はじめアジア各地でアフリカ人コミュニティが形成され「同郷人」として助け合う姿も興味深い。あまり接点がなさそうなアフリカ人と中国人との国際結婚も多く国際交流が着実に進展している点も新鮮だ。

著者は、国という概念がない古い時代、国境はなく人々は広い範囲で移動してきたとし、「移動して異文化の人々と接触すれば衝突・対立することもあるが、異なるものの接触は、多様性を提供し、新たな文化を醸成する可能性もある」と主張する。そこからは「相互交流」「平和」の重要性が導かれ、読了後、国際間紛争の原因になりがちな「国境」という言葉が虚ろに響いた。(取材・編集/SK)

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