中国の不公平・格差は共産党政府にとって致命傷にも、「民主化も胸突き八丁」―宮本前駐中国大使

Record China    2010年10月19日(火) 21時45分

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15日、宮本前駐中国大使は講演し、「中国の社会的不公平と経済的な格差は著しく、国民の不満が高まっているので共産党政府にとって致命傷ともなり得る」と指摘。「民主化(へのプロセス)も突き八丁」と述べた。

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2010年10月15日、宮本雄二前駐中国大使は東京都内の日本記者クラブで講演し、「中国の社会的不公平と経済的な格差は著しく、国民の不満が高まっているので共産党政府にとって致命傷ともなり得る」と指摘、同国政府は国民の不満が過激な政府批判につながることを恐れ、政府は格差是正や低所得者の生活安定に懸命に取り組もうとしている、との見解を明らかにした。

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また、最近の日中間の諸問題に触れ、2008年の「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」は歴史的かつ重要な取り決めであり、これを互いに確認し合うことが大切だと強調した。さらにインターネットや携帯メールの普及で同国内の情報統制が効かなくなりつつあるとし、「民主化(へのプロセス)も突き八丁」と述べた。

宮本氏は外務省プロパーで駐中国大使館勤務が長く、民間出身の丹羽宇一郎現大使と今年7月に交代するまで4年3カ月にわたって駐中国大使を務めた。講演要旨は次の通り。

一、中国は極めて多面的かつ複合的であり、正確に把握するのは並大抵でない。一口に漢民族といってもローマ帝国と同じで、長い間、世界ナンバーワン国家だった時代に多くの周辺民族と混血を繰り返し、背格好や言語も違う。中華文明も多くの民族の文明と共鳴し合い複雑だ。それに清朝初期までの「栄光」とそれ以来100年余りの列強に蹂躙された「屈辱」の歴史が混じっている。「弱い者は痛い目に遭う」「だから強い大国に戻らなければならない」という意識も強い。

一、中国社会では儒教の教え、孫文の国民革命、毛沢東の共産党革命といった価値観が喪失し、情報化時代の進展により、動揺が全国各地で広がっている。トウ小平以来の改革開放路線は思想に手をつけておらず、共産党も明確な価値観を提示できないでいる。伝統的な価値観が衰退する中で欧米物質文明が入り込み、金儲けはいいことだとの拝金主義が蔓延している。これには批判的な意見も多く、(富を享受できない)国民の間に不正や格差に対する不満が急速に高まっている。政府は不満が政府に飛び火することを恐れ、不満を解消するための格差是正や低所得者の生活安定に懸命に取り組もうとしている。

一、日本の26倍の国土、10倍の人口を擁する中国は世界の大国としての道を歩み、世界の要人が頻繁に中国を訪問している。「経済の発展」と「社会の安定」が国家目標のキーワードで、経済成長によりパイが拡大し、その分け前が上がることが大前提となっている。したがって経済成長路線を走り続ける必要があり、経済的な豊かさが社会の安定につながるという考え方が支配的だが、格差拡大という急成長の歪みが生じて社会的な安定が損なわれる事態に陥っている。中国人の多くはこの5−10年の間に「生活空間」が自由になったと感じているが、社会的不公平と経済格差は著しく、(命に別条のない)アキレス腱というより致命傷ともなり得る「心臓病」ともいえる重大な問題だ。

一、民主化(へのプロセス)も胸突き八丁といえる。中国のインターネット人口は4億人にも達しているが情報統制はほとんど効かなくなりつつある。携帯電話使用人口はそれ以上で、しかも携帯メールが日本と違い電話番号だけで通じるので、(当局が)インターネットを遮断するまでの30分程の間に、情報は行き交ってしまう。

一、欧米や日本のスタンダードではなく中国のスタンダードで物事を見ないといけない。浦東開発計画は野心的過ぎて失敗すると(外国人は)皆言っていたが成功した。2007年のリーマンショック時も中国貿易に甚大な打撃を与えると予測されていたが、影響があったのは沿岸部だけで、中西部は全く影響を受けなかった。中国は日本と違い変化のスピードが速く、特に経済で顕著。半年に一回、政策を調整しており、この結果、中国経済は2、3年経つと相当変化する。米国で最先端の経済学を学んだ多くの米国留学経験者が政策に携わっており、日本のバブルも、その轍を踏まないよう入念に研究している。

一、2008年に福田康夫首相と胡錦濤主席が交わした「戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明」は歴史的かつ重要な取り決めであり、これを互いに確認し合うことが大切だ。声明は「日中関係が両国のいずれにとっても最も重要な二国間関係の一つであり、今や日中両国が、アジア太平洋地域及び世界の平和、安定、発展に対し大きな影響力を有し、厳粛な責任を負っている」と世界の中の日中関係をうたっている。さらに「長期にわたる平和及び友好のための協力が日中両国にとって唯一の選択である」とし、「双方は戦略的互恵関係を包括的に推進し、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくこと」で合意している。

一、外交は総合力だが、日本では国論が一致しない。外交官は7割のエネルギーを国内で使い果たし、3割で外に出ていく。国民の合意を背景に外交をさせてもらえれば納得してもらえる外交をやれる。(菅政権は)大いに外交のプロ集団を使ってほしい。(取材・編集/

HY)

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