<インタビュー>相互理解と友好促進により国際平和の発展に貢献したい―霞山会・山田正理事長(1/2)

八牧浩行    2010年10月4日(月) 6時1分

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中国を中心としたアジア諸国との教育文化交流を推進している財団法人霞山会の山田正理事長はインタビューに応じ、「緊密な教育文化交流が相互理解と平和共存を促進する」と強調した。

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中国を中心としたアジア諸国との教育文化交流を推進している財団法人霞山会の山田正理事長はインタビューに応じ、「緊密な教育文化交流が相互理解と平和共存を促進する」と強調した。また、中国経済の先行きについて、内外需要の停滞で成長減速の可能性があるとしながらも「外資の導入に積極的なのでグローバルな技術革新の成果をどんどん取入れることができる」と述べた。(聞き手 Record China社長 八牧浩行

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―霞山会の目的と業務内容についてお聞かせください。

日本とアジア諸国、とくに中国との文化交流を通じて二国間または多国間の相互理解と友好の促進を図り、国際平和の発展に貢献しようというのが、当会の活動理念です。具体的には、留学生および研究者の相互交流、国際情勢に関する調査研究、講演会の開催および出版活動、語学教育事業などを実施しており、アジア域内の関係団体との提携のもとにこれらを行うこともしばしばです。

当財団法人の前身は、1898年、当時の貴族院議長近衞篤麿が中心となって設立した「東亜同文会」です。列強の手が伸びていた当時の中国を同じアジア人の手でサポートしようという使命感のもとに結成され、その趣意書を読むとこんにちでも通用する考えが多々述べられています。

この組織が興した事業のうち最も主要だったのが、 1901年上海における「東亜同文書院」という教育機関の設立で、 1934年には大学に昇格しました。第二次大戦終了に伴う閉校までの間、中国事情と日中関係に関する高い見識を持った人材をここから輩出したのです。第二次大戦敗戦後にこの学校を承継して設立されたのが「愛知大学」です。

―日中間には厳しい時代もありましたね。

互いに隣国でありながら、戦争に及んだ体験が何度もあるし、互いにそれぞれ国内事情というものもあります。現在はお互いに自由にモノを言えるようにはなってはいますが、そうかと言って歴史のことや相手の事情に無頓着であってはいけないと思います。そういう中で、霞山会のスタンスは長期間にわたって「ブレ」はないと思っていますし、また国内外から批判を受けたという経験もありません。

―留学生の中国への派遣および日本への招請などの相互交流に力を入れていますね。 

当財国では、中国政府外郭組織との提携を基に留学生の中国派遣と来日招請、これに伴う奨学金・旅費の給付という形で日中両国の青年に研究・勉学の機会を提供しています。派遣、招請ともに毎年各5名という規模ではありますが、この事業を開始して以来の累計では、派遣128名、招請190名に達しています。若い人を伸ばす、日中相互理解の促進にも寄与するという目的は確実に達成されていると思います。

そして、うれしい「付録」なのですが、当会が招請した留学生OBが「霞山同学会」というグループを北京と上海で結成し、当会活動の協力者になっています。そして、現地から日本に色々な原稿を送ってきますので、これを当会で編集して、中国語による機関紙「交流通信」という形にまとめて霞山同学会の皆さんに送るというようなことをしています。

また、中国人学生に対して日本語教育を行っている日本語学校と、日本人に対して中国語教育を行っている中国語学校を持っています。両部門を「東亜学院」と称しています。日本語学校に来る中国人学生は、日本の大学、大学院または専門学校に進学するのが目的で、90%以上が大学・大学院に進みます。1年から1年半で読み書き話す力を習得した上、皆が親日家になってくれていると思います。

中国語学校は、教室授業のクラスのほかにグループ単位での出張授業もあります。教室組は、中国への転勤予定者とその家族、仕事上の必要に迫られている方、あるいは就職や転職のツールにしようとする方、英語以外の外国語能力取得を目指す方などです。一方、出張授業に対しては、官公庁や金融・商社・メーカー・サービス・不動産等あらゆる業種の企業からの需要がありまして、日本経済が中国との関係を拡大・深化させている様子を実感させられます。

―次の世代の人をサポートするのは大切ですね。若い人を育てる教育交流は世界平和のためにもいいことです。

若い人をいかに伸ばすか、これは科学、技術、産業等の発展、ひいては国力の充実にとって非常に重要な課題です。また、国際間の理解促進のためにも大事なことだと思います。

―中国東北部の大学における日本語学習者に対する奨学金の支給事業に特に力を入れていますね。

中国東北部は、わが国にとって忘れるわけにはいかない地域です。沿海部に比べると、一部の都市を除いて経済的発展がやや後れをとっています。そこで、東北部の中で3校を選び、家庭が経済的に困窮している日本語専攻学生に対して奨学金を支給するという事業を開始しました。毎年1校当たり3名を選んで4年間支給しますから、最大で36名がこの制度を利用するわけです。本人、学校双方から評価してもらっています。

―中国における中国人日本語教師の日本研修旅行についてお聞かせください。

ちょっとユニークな企画なのですが、当会では、中国各地の大学、学校等で日本語教育に従事している教師を8日間の日本研修旅行に招待しています。1年おきに10名ずつ招いています。中国政府の外郭機関である「中国教育国際交流協会」との提携による企画なので、研修旅行団の人選はこの協会がしてくれますが、ほぼ全員が訪日経験のない人です。日本に来ると、大学などの教育機関、語学教育の専門機関等を訪問して見学や意見交換などをしますが、関西への旅行なども日程に加えています。新潟県南魚沼市の協力者にお願いして民家での1泊生活も体験するようにしています。皆さん大喜びです。この旅行経験は、現地での日本語教育にも役立つと思いますが、いままで213名の教師がこのプログラムで来日していますので、日中間の草の根的相互理解に寄与していると思います。

―出版事業や講演会活動なども積極的ですね。

月刊誌『東亜』は、東アジア情勢を論じる月刊誌ですが、多方面から評価されていると思います。また、毎月1回開催している「午餐会」、これは東アジア情勢に関する識者を招いて開く講演会です。講演内容は、『東亜』に必ず掲載されます。『東亜』の購読者をはじめ、学者、研究者、ジャーナリストなどが多いのですが、最近では企業、金融機関等の役職員の参加が増えております。それから、研究誌として年1回『中国研究論叢』を発刊しています。主として近現代中国研究者による研究成果発表の場になっています。

日中または日台間で双方が共通して関心を示している事柄について、双方の識者が意見を交換するのは、相互理解を促進する上で有効な方法だと思います。当会では、中国および台湾の国際交流団体、大学を含む国際問題の研究機関等と協定を結んで、日本、中国、台湾の各地でシンポジウムを開いています。北京での提携先は、「中国国際交流協会」です。上海での提携先は、「上海交通大学」と「上海市日本研究交流協会」ですが、「上海国際問題研究院」も支援してくれています。台湾では、「両岸交流遠景基金会」と提携しています。

シンポジウムは、東京と提携先本拠地とで隔年交互に実施するのを原則としています。双方ともに、検討テーマを論じるに相応しい学者、研究者、ジャーナリスト、実務者などを起用して討論をしております。この9月中旬には、万博の社会・経済効果について論じるシンポジウムを万博開催中の上海で開催しました。国内でもシンポジウムを開いています。わが国にとって重要な国際問題をテーマとしています。今年は11月2日(火)に静岡市で開催する予定です。テーマは正式には決まっていませんが、北朝鮮問題が中心になると思います。

「<インタビュー>中国は積極外資・技術導入でパワーアップも―霞山会・山田正理事長(2/2)」に続く。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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