Record China 2010年8月18日(水) 19時3分
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北京出張中、お客さんを連れて故宮博物院を案内することになった。しかし入場券売り場は長蛇の列。困り果てていた私に近づいてきたのはダフ屋だったが…。
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2010年8月のある日曜日。曇り。
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お客さんを連れて、故宮博物院を案内することになった。天安門広場を経由して天安門を通り、故宮博物院正門の広場に到着。天安門広場と離れてわずか50mしかないのに、ここはまさに別世界のようにごみが散らかっている。地方や海外から訪れた大勢の観光客のはざまに、冷やした水やアイスキャンディーを販売している人たちがいる。
お客さんには広場の隅で待っていただき、入場券売り場前にできた列に並ぶことにした。闇雲にウロウロしている人が多く、博物院のスタッフが1人もいないため、どこに並べばいいのか分かりにくい。やっと列の最後尾を見つけたが、入場券を購入できるまで40分以上は必要と判断した。お客さんを40分も待たせるわけにはいかないし、そのまま諦めるにもいかない。
事情を一旦お客さんに説明してから結論を出そうと思い、踵を返したところ、1人の中年男性がこっそり私の前に現れ、「すぐでも入りたいなら、60元の入場券を70元で売ってあげよう」と言ってきた。中国の事情を知る人なら誰でもお分かりでしょう、彼は観光地によく出没するダフ屋である。ダフ屋の存在を察した周囲の観光客らが彼のチケットに殺到する気配を感じながら、わたしは「お金で問題を解決できるならそれでいいではないか」と考え、財布を出して「5枚ください」と彼に頼んだ。
その時、周りから急に数人が走ってきて、いきなりこの中年男性を殴った。中年男性はチケットを慌ててポケットにしまい、人の海に逃げてしまった。あまりにも急に起こったできことで、私はただ驚く以外に何もできなかった。もちろん、ショックを受けたのは私だけではなかった。大勢の中国人観光客に外国人観光客。彼らの行動はまさに動物園のサルのようで、エサが投げこまれるたびに争いが起こる。
この状況を1回、整理してみた。博物院が入場券売り場の販売フローを整備していなかったため、入場者の並ぶ時間が長くなった、その混乱を利用してダフ屋が現れる、そしてさらにその環境を悪化させる。故宮博物院はなぜ、その局面を改善しないのだろうか?
同行していたメディア関係の友人はこう言った。中国に故宮博物院は一つしかない。つまり、北京に来たら誰もが紫禁城(故宮博物院)に来るだろう。だから、職員に商売意識はまだ根付いていないだろうと。
ちょうど数日前、日本のある企業から「研修ビジネスを中国に持っていけないか?」と相談されたことがあったが、今回の体験はまさにその答えになると思った。
中国に日本のような研修ビジネスが必要なのは事実だ。例えば東京ディズニーランドのスタッフに故宮博物院に来てもらい、接客テクニックを伝授するのもいいだろう。だが、急成長の渦中にある現在、多くの経営者の意識としては、そのような必要性はまだ切実には感じられていないだろう。なぜなら、市場が大きいため、現時点ではシェア拡大を優先しているからだ。しかし将来、経済発展が安定した暁に勝負できるのはサービスの質しかない、そんな時期が来たら、日本の研修ビジネスはきっと中国で大成功を生むだろう。
●風月同天
日々、最新の情報を中国に向けて発信する日本情報サイト「Record Japan」のマネージャー。来日13年。
http://www.recordjapan.net/
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