<映画の中のチャイナ>より面白いのは俳優の著書?〜「ヘブン・アンド・アース(天地英雄)」

Record China    2010年1月30日(土) 15時24分

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2010年1月、テレビ放映時に解説役に登場した女優さんが「映画より俳優の著書が面白い」と紹介した米中合作映画「ヘブン・アンド・アース(天地英雄)」。写真は07年上海影城での日中合作映画「鳳凰 わが愛」の発表記者会見での中井貴一。

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2010年1月、テレビ放映時に解説役に登場した女優さんが「映画より俳優の著書が面白い」と紹介した米中合作映画「ヘブン・アンド・アース(天地英雄)」(2003年、ハー・ピン監督)。

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◆掛け値なしに面白い中井の著書

なかなか言えない台詞だと思ったが、気になり読んでみるとこれが正におっしゃる通り。

映画は唐王朝の時代、唯一の日本人俳優として中井貴一が遣唐使役を演じた。政治、兵法などの学問を学ぶため13歳のときに唐に渡り、皇帝に仕えた。学問を修め、帰国を希望する彼に皇帝は、命に背いた元軍人・李の処刑を求める。李は捕らえた突厥の民間人を殺害する命令に従わなかった「義賊」的な罪人だ。

2001年当時、911同時多発テロが発生したこともよく分からずアフガニスタンにほど近いウイグル自治区で撮影が進行していた。その後ウイグル族をめぐる騒乱が起きたことも重ね合わせると、中井にとっては非常に貴重な経験だ。

中井はそれなりに殺陣や乗馬シーンなどを含め好演していた。別に名作、傑作のたぐいではなかったが、中国のシルクロードおよび仏教に対するイメージを知るのに良さそうな作品だ。「西遊記」がモデルという。

一方、2004年に刊行された中井の著書「日記―『ヘブン・アンド・アース』中国滞在録」(キネマ旬報社)の方は掛け値なしに面白い。

最大のポイントは監督批判。権威はあるのだがスタッフの統率も取れず、多忙な出演者を管理する時間の感覚も甘い。そして出演者の意欲盛り上げには明白に失敗している。

中井は執筆した時点で、日記を書いていた当時の感情は変化しているとしているが、監督に対する謝罪、弁解や作品の出来上がりに対する賛辞は避けている。それくらいひどい製作現場だったんだろうが、ハー監督はその後も活躍し、昨年の中国映画週間にも来日、中井自身も引き続き中国映画に関わっている。

次に、やはり微妙な日中関係に関する記録が貴重だ。

中井の誕生日は何と中国では「国恥記念日」とされる9月18日。準主演俳優にもかかわらず、ケーキを用意してくれただけでだれも祝福してくれない惨めに孤独な記念日となった。でも、たった一人の日本人俳優として誠実に取り組み共演者やスタッフと交流するうちに、反日教育を受けた女優や、トラブルから全員首になった若きスタントたちが中井ファンになってくる。

◆「中国一のアイドル、ついにキレる!」

最後に、映画製作の内側にある役者のプライバシー。劣悪な条件下でイライラし、新婚の妻と引き裂かれて電話で泣かれ、友の死の報まで経験した。911の発生が情報が隔絶された中国で何も分からない様も実にリアルだ。

鮮烈なのは「レッドクリフ」にも出演した当時の「中国No.1アイドル」ヴィッキー・チャオ(趙薇)があまりにだらだらと待たされすぎたストレスからキレた10月26日。これは中井も公開をためらった記述だが、内情を知り、しかも暴露しても周りから許されるくらいの大物でなければ絶対に書けない貴重な場面。中国映画の内幕を知りたい向きにはオススメの本だ。<映画の中のチャイナ10>(文章:kinta)

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