Record China 2008年12月6日(土) 15時0分
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出張先の中国で腰の激痛に襲われたわたし。保険会社に紹介された全国有数の有名病院へ駆け込んだが……
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月1回ペースの中国出張をこなすわたしは、金融危機の渦中、中国南部で数多くの玩具工場が倒産した実態を調べるため、現地調査に赴いた。
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出発前、わたしと同行の同僚はいつものように、会社に海外保険を購入してもらった。
出張3日目の夕方、仕事先から戻ったホテルで異変は起こった。荷物を車から降ろそうとしたわたしの腰に突然、耐えがたい激痛が走ったのである。応急処置として、近くの薬局で鎮痛剤と湿布を購入してみたが、翌朝、痛みはさらにひどくなって、すでに立つことすらままならなかった。痛みを押して1日仕事に励んだあと、わたしは保険会社の現地事務所が案内してくれた病院を目指し、広東省の中心都市・広州へ向かった。
病院は元軍隊付属の医院で、広州で最高レベル、全国でも有数の大病院だった。星をつけるならまさしく、5つ星クラス。わたしたちは予約していたホテルにはチェックインせず、病院へ直行した。何故なら、海外保険加入者の外来受付窓口は夕方5時半に閉まってしまうからである。わたしたちが到着したのはからくも、5時15分前だった。
痛みは最高潮に達し、歩くことすら針のむしろのようであったが、医者の顔を見ればやはりほっと安心するわたし。その時、事態が思わぬ方向に展開するとは、知る由もなかった。
担当医は開口一番、「で、手続きは?」と聞いてきた。わたしは何のことやら?と思いつつ「まだですが…何の手続きですか?」と尋ねると、「入院手続きですよ」と言う。「まず、手続きが先ですね。」はて、診察もしていないのに何故、「入院」なのか?その“手続き”とやらのために外来受付窓口に引っ張り戻されたわたしに、窓口担当者は信じられない言葉を口にした。「今日はもう時間なので、診察は明日にします。だから、今晩はここへ入院してください」。この時点で、時計はまだ5時を指していた。診察時間終了はまではあと30分ある。しかし、担当者いわく「腰のCT検査は時間がかかるんです。今日はもう間に合わないし、入院すれば明日朝イチで検査できますよ」と……わたしは一刻も早く診てほしいのだが。
わたしは“今すぐ”診察してもらうために、同僚をダシに使うことにした。「日本人の同僚が同行しているので、わたしが入院してしまうと彼が身動きとれないのですが…」すると担当者は、「ツインの病室もありますよ」と、ケロリとして言う。
「いえ、もうホテルは予約してしまったんです。」
「当病院の病室は、ホテル並みに豪華ですよ。」
「いえ、仕事のメールをやり取りしないとならないので…病院はモバイル機器は使用禁止ですもんね。」
「病室外の廊下でLANを貸し出してますよ。有料ですが。」
「同僚と同室するなんて、ちょっと居心地悪いなあ…。」
「2ベッドルーム備えたスイートもありますよ。広東省の省長も入院したことあるんですから、豪華ですよ!」
わたしは、ついに、キレた。
「俺は診察に来ているんだよ!泊まりに来たんじゃないよ!ブツブツ言ってる時間があったら、先に診察させろよ!」
フロア中が静まり返り、あわてふためいた同僚が事態の説明をわたしに求めた。しかし、事情を呑みこんだ同僚はいともあっさり、「じゃ、今晩はここに泊まるか」と冷静に言った。しかし病室はなんと一晩1200元(約1万6800円)とトンデモナイ値段であることが判明し、わたしたちは、診察も入院も諦めてホテルへ戻った。
戻る道すがら、同僚がふと、「あれ?君、普通に歩いているじゃない!」と言った。
言われてみれば先ほどの激痛はどこへやら、気がつかぬうちに腰はうんと軽くなっていた。同僚は、「激怒のあまり、血流がよくなったんだ。きっと、それで……」次の瞬間、わたしたちは爆笑の渦に落ちた。
そう、病院のわたしが浮かべていたのは苦痛に耐える“患者”の表情ではなかった。その顔は、煮えたぎらんばかりの憤怒に震えていたのである。(33歳男性/在日10年/会社員)
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