安倍首相はなぜTPP11を推進し続けるのか―中国紙

人民網日本語版    2017年11月17日(金) 6時50分

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安倍首相はTPPを「安心立命」のためのお守りと考えているようにみえる。

安倍首相は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を「安心立命」のためのお守りと考えているようにみえる。さきの米大統領選でトランプ氏が当選したことがわかると、外交の慣例を破ってただちにニューヨークのトランプ邸に駆けつけ、TPPを離脱してはならないと「諫言」し、当時任期中だったオバマ大統領を無視した格好になった。だがこの行動は実を結ばず、安倍首相は今度は日本が中心になって米国を除く11カ国でTPP(TPP11)を継続推進しようとしている。北京日報が伝えた。(文:呉正龍、元駐クロアチア中国大使)

米国はTPP加盟国全体の国内総生産(GDP)で60%以上を占める。米国が参加しないTPPは影響力が大幅に色あせることになる。ベトナムで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)と会議で採択された「ダナン宣言」でTPPにもTPP11にも言及されなかったのはもっともだと言える。TPPはすでにトランプ氏に「死刑」を宣告されているのに、安倍首相はなぜあらゆる手を使って起死回生を図ろうとしているのだろうか。主な原因は次の4つだ。

第1の原因は、安倍首相が心の中でTPPを中国の発展を押さえ込む「妙手」と考えていることだ。地縁政治の角度からみると、安倍首相は7年間の交渉の成果を水に流したくないと思い、TPPの「見守り役」を引き受けることを決意し、TPPをできる限り元の形で存続させ、米国がいつでも再加盟できるようにし、ひいてはアジア太平洋の貿易の枠組みの柱にしようとしている。

第2の原因は、安倍首相がTPP交渉を利用してアジア太平洋で「リーダー」の役割を発揮したいと考えていることだ。安倍首相はTPPを一時棚上げにして、米国政府が心変わりするのを静かに待つこともできた。だが実際には反対の道を歩んでいる。安倍首相にとってみれば、地域経済一体化をめぐって、トランプ氏の米国がTPPから離脱した後には大きな可能性が残されているのであり、機会をうかがって介入し、「副警察署長」の役割を果たし、他の10カ国を抱き込んで、大国日本の指導的役割を見せつけようと考えるようになった。

第3の原因は、日本がTPPから大きなメリットを受けるということだ。日米自由貿易協定(FTA)をみると、両国は交渉に数十年の歳月を費やしたが、成果を上げられずにいる。TPPでは日本の「重要5品目」について、米国が大幅に譲歩しており、日本のメリットの方が大きい。日本は目下進行中の二国間FTA交渉は、日本にTPPほどの利益をもたらさないと考えている。

第4の原因は、安倍首相が根っこの所ではトランプ氏を評価していないことだ。安倍首相はトランプ氏に逆らわず恭順の態度を示し、表面的には二人は非常に仲良くみえる。だが安倍首相は全力でTPPを死守しようとしており、ここから腹の中ではトランプ政権を評価していないことがわかる。この時期をなんとかやり過ごせば、TPPは息を吹き返して復活すると考えているのだ。

こうして安倍首相は自らの「呼びかけ力」と「指導力」に自信をもつようになった。今年5月には、日本をはじめとする11カ国が今月のAPEC開催に合わせて合意文書をとりまとめることを決めた。日本はこのほど、TPPは「大筋合意」したと発表したが、カナダはきっぱりと否定した。さまざまな動きからわかることは、TPP11交渉の行く手は茨の道であり、矛盾が積み重なり、重大な飛躍を遂げられる見通しは立たないということだ。

TPP11交渉にはいくつかの争点がある。

第1の争点は、早期決着と時間をかけた決着とのせめぎあいだ。日本は時間がかかるほどマイナス要素が増えることを懸念し、TPP交渉の熱の冷めないうちに、鉄は熱いうちに打てとばかり、半年以内にTPP11交渉をまとめる目標を確定した。だが現実はそううまくいかず、希望は泡のように消えた。カナダは急ぐ必要はなく、「包括的で先進的な」「自国と世界にとって有益な合意」に到達することが重要であると考えた。

第2の争点は、TPPの現状維持と再交渉とのせめぎ合いだ。日本やオーストラリアはTPPをなるべく現在の形のままにして、米国がいつでも再加盟できるようにしておきたいと考える。そこで日本を中心とする11カ国はTPPの難易度の高い条項について、たとえば医薬品の特許の有効期間、知的財産権の保護期間、紛争解決などの条項について、しばらく実施をみあわせることで共通認識に達した。

ベトナムやマレーシアなどの発展途上国がTPPに加盟したのは、米国市場に進出したいがためだった。そこで「高い基準」を受け入れることと引き替えにして米国市場に「深く参入」しようと考えた。だが現在、米国は離脱してしまい、容量も体積も小さい日本市場では米国市場の代わりにはなれず、ベトナムやマレーシアが今後もTPPにとどまる基本的条件はもはや存在しない。そこで原産地、透明性、環境保護、人件費などをめぐる高い基準について再交渉を次々要求するようになったのだ。

第3の争点は、主導権をめぐる綱引きだ。安倍首相は自らを「リーダー」とし、TPP11交渉を主導しようとしたが、11カ国すべてが安倍首相をリーダーと認めたわけではない。カナダは「カナダの痕跡を残す」ことを求めるとし、交渉での発言権を要求した。カナダは、「文化」の重要性は経済貿易に劣らず、「国の特徴を形作る上で極めて重要な役割がある」とし、文化保護の条項を加えるよう求めた。また、カナダの自動車部品製造工程には完成までに米国とカナダの国境を何度か往復するという特徴があるので、原産地ルールの再交渉を求めた。男女平等条項を盛り込もうとする様子などからも、日本への対抗姿勢がはっきりと見て取れる。

TPP交渉は7年にわたって行われており、米国抜きのTPP11交渉に必要な時間はさらに長くなることが予想される。結局、まとまらない可能性もある。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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