人民網日本語版 2017年8月16日(水) 6時0分
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日本では、子育て中の保護者が保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず、施設不足や人手不足が原因で、入所できない状態にある児童(0-6歳)が「待機児童」と呼ばれている。
日本では、子育て中の保護者が保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず、施設不足や人手不足が原因で、入所できない状態にある児童(0-6歳)が「待機児童」と呼ばれている。(文:姚暁丹、謝宗睿。新華思客掲載)
日本政府は最近、「待機児童をゼロにする」時期を、以前の2018年から20年度末に遅らせるプランを発表した。このニュースに、同問題の早期解決を切望している多くの家庭からは強い落胆の声が上がっている。日本の各大手メディアも、「政府の対策の遅れにより、待機児童問題は膨らむばかりで、深刻な社会問題となる」とする記事を次々に掲載している。
▼若い女性の就職に影響
以前、日本の社会には、「男は外で働き女は家を守る」という伝統的な考えがあり、そのような家庭が多かったため、専業主婦が育児をするというのが一般的だった。そのため、「待機児童」という問題は存在しなかった。しかし、近年、経済が長期にわたって低迷し、各世帯の所得が減少し、さらに、高齢化が深刻化し、労働者不足となり、加えて、女性が一層平等を求めるようになっているため、家庭を出て働く女性が増加している。しかし、日本の育児施設の受け入れ能力は全く現状に追いついておらず、待機児童が急速に増え、避けられない社会問題となっている。
日本政府が待機児童問題を重視し、実際に解決に向けて動き始めたのは21世紀初期だ。12年、日本政府は「待機児童ゼロ計画」の実施をスタートさせた。日本の公式統計によると、17年4月の時点で待機児童の数は2万3000人となっている。しかし、「読売新聞」の報道によると、政府の統計には、子供が保育所に入所できないため、親が育児休假を延長しているケースは含まれていない。そのため、そのような「隠れ待機児童」を含めると、実際の待機児童の数は9万人を超えると予想されている。この数字の背後には、仕事と育児の狭間で悩む若い女性の姿がある。
現在、日本の保育所は、保育の必要性の優先順位を点数制で決定している。通常、親が障害者の世帯、ひとり親世帯、同居の親族がいない世帯などの子供が優先的に入所できるようになっている。しかし、実際には、保育所が受け入れることができる児童の人数は限られており、入所できない児童は、今保育所にいる児童が小学校に入学するのを待ち、もう一度申請しなおさなければならないというのが現状だ。多くの待機児童は、小学校に通う年齢になっても、保育所に入所する資格を得ることができない。祖父母が孫の世話をするというのは、日本の社会ではあまり見られないため、保育所に入所できない子供を持つ女性の多くは、子供が小学校に通い始めてから働くしかない。
東京都高等学校教職員組合の委員長を務める藤野正和氏は、「育児は本来、家庭、コミュニティ、政府、社会が共同で負うべき責任。しかし、日本では、育児は女性の仕事と見られているというのが現状。その負担が若い女性の肩に重くのしかかっている」と指摘する。
長年、日本の教育問題を研究している南京工業大学外国語学院の陳世華教授は、「安倍晋三首相は、女性が十分に才能を発揮できる『一億総活躍社会』の構築を目指しているものの、待機児童問題を解決できていないため、逆に、職場で活躍していた多くの女性が、育児のために仕方なく家庭に戻って『専業主婦』にならなければならない状況になっている。女性に社会発展に寄与してもらううえで、最も重要なのは、専業主婦を解放すること。全ての待機児童が保育所に入所できるようにし、女性が働き始めの段階で抱える心配を根本的に解決しなければならない。その他、待機児童問題を代表とする育児問題は、出産適齢期の女性の出産に対する見方にも大きな影響を与える。そのような女性が出産を望まない、またはできない状態では、日本の少子高齢化問題に拍車がかかってしまうことに疑問の余地はない。そうなると、日本政府が期待する好循環どころか、逆に悪循環となってしまう」と指摘する。
▼長い目で見た計画、戦略が不足
藤野氏は、「待機児童問題が日に日に深刻化している根本的な原因は、日本の各行政機関がこの問題を十分に重視していないから。そのため、関連の政策制定を先伸ばしにし、具体的な対策も往々にして、少しの修正を加えるだけにとどまっている。頭が痛いと頭痛薬を飲み、足が痛いと足を治療するという、その場しのぎの対策ばかりで、長い目で見た計画や戦略が乏しい」と指摘する。
保育士不足の問題を例にすると、「3歳以上の児童20人につき一人の保育士」、「2歳以下の児童6人につき一人の保育士」というのが、日本の一般的な保育所の基準だ。しかし、人手不足であるため、この基準を満たすことができている保育所はあまりない。中には、保育士が見つからず、受け入れる児童の数を減らすことを余儀なくされている新しい保育所もある。
実際には、日本には保育士の資格を有していながら保育士として働いていない人が70万人以上いる。つまり、日本では、資格ある保育士が足らないのではなく、保育士に保育所で働きたいと思わせる政策が不十分なのだ。「毎日新聞」の評論によると、長年、日本の政府、自治体が打ち出している保育士の待遇を改善する政策は、絵に描いた餅か焼け石に水。保育士の待遇は他の業界に大きく及ばず、多くの人は保育士の資格を持っていてもこの業界に入りたいという気持ちが起きないのが現状だ。そして、保育士として働いている人は、長期にわたって重圧がかかる状態になっている。そうなると、保育士不足という問題が一層深刻化するばかりだ。
日本の現行の制度では、保育所は児童福祉施設に分類されるため、ほとんどの保育所は、公立で、保育料が安く、大きな財政支援を受けている。しかし、近年、十分な財政を確保できない状況になっているため、日本政府は一般機関に保育所を経営するよう促し、待機児童問題の改善に取り組んでいる。それでも、保育所の立地条件や保育士の人数、保育のクオリティなどを監督・管理する面で、政府の関連当局には人材が不足しており、私立の保育所が建設できない、経営状況が悪い、管理が行き届かないというケースが増えている。そして、待機児童問題の解決にはつながっていないというのが現状だ。
子育て安心プランで、日本政府は18年から、待機児童の解消に必要な約22万人分の予算を2年間で確保し、遅くとも3年間で全国の待機児童を解消するとしている。また、子供がいても働く女性が今後も増加することも見込み、22年までに、その数を10万人追加するとしている。これに対して、陳教授は、「目標を達成できるかは、日本政府が総合的な政策リストと必要な予算を準備することが絶対条件。しかし、各種社会福祉が財政の悪化に拍車をかけており、日本政府が待機児童問題を解決するためにどれだけの予算を算出できるかには、大きな疑問が残る」と指摘している。
また、藤野氏も、「日本の各政党は選挙戦で、『待機児童問題の迅速な解決』を叫び、当選を狙っているが、待機児童や児童の貧困、少子化などの問題を国の将来の運命を握る大きな問題と実際に見なしている政党はほとんどない。そのような状況が根本的に変わらないのであれば、『待機児童ゼロ計画』の達成は、また遅れることになるだろう」と指摘している。(提供/人民網日本語版・編集KN)
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