人民網日本語版 2017年7月12日(水) 21時40分
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日本映画「リトル・フォレスト」は、大都市を離れ、生まれ故郷の大自然に囲まれた小さな集落・小森に住むいち子を主人公とした物語だ。資料写真。
日本映画「リトル・フォレスト」は、大都市を離れ、生まれ故郷の大自然に囲まれた小さな集落・小森に住むいち子を主人公とした物語だ。同作品はほとんどが畑か台所のシーンで、恋愛をめぐる葛藤もなければ、複雑な恩讐や人間関係もない。このような作品が、中国では公開されていないにもかかわれらず、ネット上で大人気になっている。(文:陳沐。文匯報掲載)
「リトル・フォレスト」を中国の人気グルメドキュメンタリー「舌の上で味わう中国(原題:舌尖上的中国)」にかけて、「舌の上で味わう日本」だという声もあり、「いち子が料理を通して、母親との溝を埋めていく」姿に注目している人もいる。筆者が注目したのは、日本の農村の人々が畑や食卓で表す、生態環境に対する敬意だ。
同作品では、入念に耕作する伝統的な農業の仕方が崇められている。作品全体はいち子が作る美食を中心にしているものの、その食材を栽培したり収穫したりする過程は、単なる「料理」の領域を完全に超えている。春に田植えをし、夏には田んぼの世話や畑仕事をし、秋にそれらを収穫して、冬に備えるという過程が詳しく描かれており、農業関連のチャンネルのノンフィクション番組を見ているかのように感じた。
中国と同じで、日本の農村も高齢化や過疎化などの問題に直面している。多くの若者が生まれ故郷を離れて大都市に向かっている。そして、伝統の農家の生活や食習慣などが大きく変化している。そのような変化が、人々が身心のバランスを崩す原因になっていることに気付いている人々もいる。そのような人は、食べ物という観点からその傾向を見つめ直し、「マクロビオティック」という観念を宣伝している。
日本の正食協会の代表取締役の岡田恒周氏は以前中国で「マクロビオティック」に関する講演を行ったことがある。「マクロビオティック」というのは、食育で著名な明治時代の薬剤監であり医者であった石塚左玄の食物に関する陰陽論を基盤にし、その体系に、桜沢如一が陰陽の理論を交えた概念で、大自然と一体になることを目指した食物療法である。「マクロビオティック」は、「健康による長寿」、「偉大な生命」などといった意味で、同概念が欧米に伝わった後、ドイツのクリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラントが「長寿法」という意味合いで使いはじめた言葉だ。大自然の規律の中で、自分らしさを十分に発揮する一種のライフアートだといえる。
現在、人類の食生活は工業化商品に一層頼るようになっており、食品は、「高効率、低コスト」の方向へと向かって発展している。そして、畑や田んぼと食卓の距離はどんどん遠くなり、食卓に並んでいる野菜、ご飯は、誰が作り、いつ収穫したのかなど誰も知らない。私たちは食べ物に対して、なんの思いもなければ、何の疑問もない。食べ物はいつでもスーパーに行けば買うことができる「物」に過ぎないのだ。そのような時代に、心を込めて農産物を栽培する人も少ない。
「リトル・フォレスト」 はそのような時代に生きる私たちに考え方を変え、農業に触れ、もっと素晴らしい食べ物や環境を作り出すよう促すほか、一回り成長するように促す。畑仕事の仕方や商業スタイルなど、同作品はそれら全てを手取り足取り教えてくれているかのようだ。もちろん、同作品は、人を感化させる内容となっているからといって、美しさや深さが犠牲になっているわけではない。同作品は、文芸映画として見ても、十分合格ラインに達している。
いち子の母親が登場するシーンは全て回想と手紙の形で展開され、物語のようで、反省の思いがそこに込められている。そのようなシーンが挟まれることで、同作品全体の雰囲気のバランスが取れ、さまざまな時間軸で描かれた物語になっている。母親と娘について描かれているシーンは、状況によって変わる家族に対する思いを描いているとも言えるし、女性が年齢を重ねるにつれ精神的に成長していく姿を描いているとも言える。また、伝統的なライフスタイルと現代的なライフスタイルの間にある相違点とも融合とも言える。
都市の経済発展がある程度のレベルに達すると、「田舎の生活」へと戻って行く人が必ず出てくる。「リトル・フォレスト」のような物語は、中国でも今増えている。濱斌というある中国の青年は、山地で家を借り、農業に携わりながら、勉強する生活を「山居歳月」という本にまとめている。
濱斌はいち子と同じく、アイガモを放飼する農法を使い、670平方メートルほどの田んぼで、一年で350キロの作物を収穫する。また、偶然にも、濱斌はいち子と同じく、一人暮らしをしている若い農民だ。「リトル・フォレスト」には、農協の倉庫で米袋を運搬するいち子に文句ばかり言う上司にいち子が腹を立て、「炊事も洗濯も掃除も妻に任せっきりのくせに家に帰れば『疲れた』といってごろんと横になって何もしないで寝ているくせに。私には家事を分担する相手はいない。除雪している間に、マキ割りが終わっているなんていい話があるわけない」と怒るシーンがある。濱斌も本の中で、「畑仕事を1日して、家に帰って自分で食事を作らなければならないと思うと、一緒に生活してくれるパートナーが必要だと実感する」と書いている。
日本では、夫婦で田舎へ引っ越すというのが流行しており、田舎暮らし関連の図書が大人気となっている。「種まきノート」、「ベニシアの京都里山暮らし 大原に安住の地を求めて」、「あしたも、こはるびより」などの中国語版は中国でも大人気で、続編が刊行されている作品もある。中国でも、「田舎へ戻る」というライフスタイルが流行し始めているのかもしれない。(提供/人民網日本語版・編集KN)
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